さまざまな芸能人からも絶賛されて盛り上がっていた水素水も、いよいよその怪しさが広く知られるようになってきました。今年3月には国民生活センターより「水素水生成器による活性酸素の制御機能は、必ずしも健康効果を示すものではありませんよ」と指摘されたり、各方面の専門家から「ヒトへの健康効果についての具体的な研究成果はまだない」とツッコまれたり。これだけメジャーになってくると、おかしな物件も大豊作で、ネット上を軽く検索しただけでも次のようなものに遭遇できます。
・発達障害は水素水で治る
・男の妊活には水素風呂! ついでに卵子の若返りも水素水で叶う!
・水素水を飲むとハゲや薄毛が治る
・活性水素水で癌が治った人がいる
水素水がまるで、魔法の万能薬状態! 普通のミネラルウオーターと比べると割高であるので、なんとか水素水をリーズナブルに自作できないかと考える人も少なくないようで、〈米のとぎ汁で自家製水素水が作れる〉という謎すぎるブログも発見しました。ちなみにそれが水素水なのか否かを判断するには、掃除に使い〈汚れがよく落ちるかどうか〉で分かるんだそうです。さらに、水を使うときには祈りと感謝をこめて使うのがポイントなんだとか……って、これは完全にスピ物件と化しております。
このように、巷でなんでもかんでも水素水で解決! と強気に謳われるのは、水素水研究の第一人者である太田成夫氏の「水素水で老化や生活習慣病の原因とされる〈活性酸素〉を制御することができる」というお説がベースになっています。
氏の著書である『水素水とサビない身体』(小学館)には、水素水にはこんな効果効能あると紹介されていました。
・アンチエイジングに絶大な効果(アトピー、くすみ、毛穴、シワ、ニキビ、シミが軽減される)
・糖尿病やメタボリック症候群の改善
・ダイエットに効果的! 運動選手が水素水を飲むと糖代謝よりも脂肪代謝が盛んになり、疲れにくくなる。
・放射線被害も軽減できるはず。がんなどの放射線治療の副作用にも有効! 被爆が緩和できる! etc……
さらに〈猫はあまり水を飲まない動物だが水素水なら喜んで飲むという話しを聞いたことがある〉とか、〈水素のある容器の細胞は活性酸素に対しても平気でニコニコしているような表情をしていた〉など、どう解釈したらいいのかよくわからない情報も、なかなかのインパクト。(後者は細胞の擬人化なのようですが、菌がおしゃべりする『もやしもん』みたいなニュアンスか!?)
医師にとっては「理解できない」
いずれにしても現段階では、市販の水素水からこれらのような健康効果を得ることはほぼ難しいとされています。ところが、冒頭のような悩みを抱える人たちは、濃度が高いものだったり医療用であれば、それなりに効くのでは……! なんて望みを抱いてしまいそう。そこで、いまだよく分からない水素水の疑問を、五本木クリニックの桑満おさむ先生に解説していただきました。
桑満おさむ先生(以下、桑満)「水素が活性酸素を除去するのは、研究レベルでは間違いないと言えるでしょう。しかしまだその成果はマウスの段階であったり、どれくらいの濃度なら有効なのかは研究段階だったりして、どう使えばいいのかは確立されていません。ですから水素水を販売するメーカーが『いかに自社製品の水素濃度が高いか』をアピールする意味も分かりませんし、それ以前に水素の濃度をどうやって測っているのかが、私にはよく分からないんですよね。
水素は大気中に拡散しやすい分子ですから、仮に水に含ませることができていたとしても、フタを開ければ空中に拡散してしまいます。私も水素入り入浴剤を使ってみたことがありますが、本当に水素が入っているならお湯に入れた瞬間に火をつけたら引火するはずなんで。ライターで試してみましたが、残念ながら何も起こりませんでしたけど(笑)」
水素水の効果効能の源である〈活性酸素の除去〉は、そもそもそんなにパーフェクトに健康効果を生むものなのでしょうか。
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