インタビュー

殴れないプリキュア、女のケア役割。/『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美×柴田英里【2】

【この記事のキーワード】
女の子は本当にピンクが好きなのか

堀越英美『女の子は本当にピンクが好きなのか』 Pヴァイン

 現代女性を取り巻く“ピンク”という色について、欧米の女児カルチャーや女児向け玩具、国内の女児向けアニメなどを通して深く考察した一冊『女の子は本当にピンクが好きなのか』(Pヴァイン)。著者の堀越英美さんは日本で子育てをする二女の母だ。

 今回messyでは、バービーやプリキュアなど同書でも取り上げられたカルチャーに詳しく、しかし堀越さんとはまた異なる見解を持つ柴田英里さんと、堀越さんの対談を企画。女の子として、女として、私たちはピンクとどう付き合い生きていくのか。全5回にわけて掲載します。

(聞き手:下戸山うさこ)

「お母さん」よりも楽しそうな仕事に就きたかった/『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美×柴田英里【1】

<同書の書評はこちら>
ピンク解放運動を追う 「女らしさ」に閉じ込められたピンクの歴史

クリエイター男性のルサンチマン

下戸山 柴田さんは、「弱い女の子の方が得じゃないか」と実感したことあるんですか?

柴田 それで得している女の子を見たとしても、「じゃあ自分も弱くなろう」とは思わないですけど、ああ、弱い方が得だな、って思ったことはありますね。

下戸山 どういうとき?

柴田 あの、自分がか弱くないことで、バッシングされるとき。

下戸山 あ、それ、最近の話?

柴田 最近じゃなくて(笑)。私、大学で彫刻科だったので、超男性社会だったんですよ。芸術系ってピンクワークに分類されますが、彫刻はその中でも男性原理のものすごく強い保守的な界隈なんですね。もう、ファルスの王国みたいなところ。私の学年は、生徒数24人のうち、5人が女子でした。

堀越 そうなんですか、へぇぇ。

柴田 そこで「男根信仰バカじゃね」とか言って、お酌しなかったり女性的な振る舞いをせずにいたら、すごいいじめられて。

堀越 それ、彫刻科の中でですか? え、怖い。いや、美大という世界に対して私は夢を抱いちゃってたんですけど、『ハチミツとクローバー』で。いじめって、どんなことされるんですか?

柴田 「窯を使わせないようにする」とか、「アトリエの予約をとらせたくない」とか、「同じ科の、同じ大学の学生であって欲しくない、校門に入れないようにしたい」とか、本当に施設を使用させないところまではいかないのですが、要するに威圧ですね。悪い噂を立てられたりもして、これが本当に酷かった。

下戸山 制作妨害! 女生徒は味方してくれないんですか。女子の少ない科ですよね。

柴田 女子のいじめはまたちょっと違って。

下戸山 その5人の中で!?

堀越 ちょ、ちょっと今びっくり。今ライトに言われましたけど、え、たった5人しかいないのに女子のいじめもあるのか、って(笑)。そこで女子が団結して身を守る方向にはいかない?

柴田 固まらない。だって、固まったって、人数で負けるから。男子の中に入った方がいいんですよ。女性的な振る舞いをすればマッチョな男性の世界に入れますから、女生徒はほんの一部を除いて男の味方でした。献身するか、セックスによって男のチンコを取り込むことで男になる、っていうタイプもいて。

下戸山 セックスすると男の人が優しくしてくれる、って感覚を持つ女性もいますからね。

柴田 だから私みたいに反発をすると、いじめ対象になって排除されますね。もちろん、マッチョじゃない男子や学年を超えて味方になってくれる女子はいましたよ。だけど、マッチョな構造が頭にある限り、状況は変わりようがありません。まぁこれ、彫刻科固有の問題かなとも思いますけれど。っていうのは、日本の彫刻文化は明治時代から殊更に女性を廃してきた世界なんですよ。東京芸大自体も元々は男子校ですし。だからフェミニズムやジェンダーやクィアスタディ−ズとの食い合わせがそもそも悪すぎます。白樺派がロダンとかを全部訳しているんですが、「女性彫刻家」は存在しなかったことにされています。

堀越 実際には存在したのに?

柴田 ロダンの愛人だったカミーユ・クローデルのことを、白樺派は訳さず、いなかったことにしてましたね。クローデルも確固とした作家のポジションがあったにも関わらず、「ロダンの愛人で発狂して制作出来なくなった女」って文脈でしか訳されていない。実際に留学してクローデルと会ったこともあると目される荻原守衛(男性彫刻家)でさえ、言わないんですよ。実際のクローデルが活躍してるところを見ているのに。彫刻の世界の女性は、日本の彫刻界では意図的に消されていた歴史がある。

下戸山 その男尊女卑の流れが、現代にもきっちり受け継がれていると。

柴田 私、「お前は女の癖に酌も出来んのか」って、自分の担当じゃない教授に怒られたことがあって。飲み会で女性がトイレに行くことすら「下品」と嫌がる教授でしたからね。男根至上主義かつ強制異性愛で、女は生理現象すら否定される。クィアとか言えるような環境ではなかったですね。

堀越 え、教授!? 教授が言うんですか? 信じられない。ほんの数年前の話ですよね。10年も経ってない。しかも東京藝術大学ですよね? 芸大でそんなことがあるなんて。

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