インタビュー

月経血は「きれい」なのか? 透明化した生理と、女性の生きづらさの関係/『生理用品の社会史』田中ひかる氏インタビュー後篇

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血を神秘化する危険。Photo by riccardo f.m. from Flickr

>前篇:女性の生理は、女性のものではなかった。それによって私たちが失ったもの

生理用品の社会史:タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房)は、1961年に誕生した国内初の使い捨てナプキンが、いかに女性を生理のわずらわしさから解放し、社会進出するのを後押ししたかをつぶさに追った痛快な1冊である。生理用品の歴史をひも解くと、社会が生理をどう捉えていたか=生理観が見えてくる。それはすなわち、女性観でもある。

 しかし近年、経血をナプキンに出さずに尿のようにトイレでまとめて排泄する「経血コントロール」を推奨する、あるいは市販の使い捨てナプキンを「身体に害がある」と批判し布ナプキンの使用にこだわる……そんな子宮系女子の存在が確認されている。まるで時代を逆行するかのような流れを、同書の著者、田中ひかるさんはどう見ているのか?

田中ひかるさん(以下、田中)「布ナプキンを過剰に推奨する人たちには経血を神秘化する傾向があり、布についた経血を見て、愛しみながら洗いましょうと勧められています。トイレにある使用済み生理用品入れを汚物入れと呼ぶことにも強い嫌悪感を示します。が、そもそも経血はきれいなものなのでしょうか?」

 田中さんは著書で、男性社会が女性の生理に意味づけをする以前に、原始の時代から生理に対する畏怖はあったと指摘している。それは、血液に対する本能的な恐れからのものだった。

田中「結論からいうと、私は経血=汚物と捉えています。なぜなら、血液だからです。原始の人たちは血液が感染症の媒介となることを知っていて、だから恐れていたんです。経血も排泄物にほかなりません。いま商業施設などのトイレは掃除が行き届いているし、自動でフタが開閉するボックスも増えているので、汚物入れの周りもきれいです。けれど、公園の公衆トイレあたりではいまだ使用済みナプキンが散らかっていますよね。子どもが知らずにそれに手を伸ばして、経血に触れるのは非常に危険なので、はっきり汚物入れとアナウンスしたほうがいいと思います。布ナプキンのユーザーは外出先で使用済みナプキンを密封袋に入れて持ち歩きますが、よほど慎重に扱わないと公衆衛生的にアウトです」

メーカーは安全性を発信すべき

 ただし、布ナプキンそのものに問題があるわけではない。

田中「市販の使い捨てナプキンでは皮膚がかぶれるからとか、肌触りが好きで休日だけ使っていますとか、上手につき合っている方もいますし、販売する側にも良心的な方がいらっしゃることも知っています。そういう方たちは、『女性の身体に悪い影響を及ぼしている』という理由で使い捨てナプキンを攻撃し、布ナプキンを販売する業者は迷惑な存在だとおっしゃっています」

 たとえば、一部の布ナプキン業者は「生理痛は、使い捨てナプキンのせい」とする。それがなかった時代は生理だからといって薬を飲むような女性たちはいなかった、という主張だ。

田中100年ぐらい前は、有効な薬が市販されていませんでしたからね。また、布ナプキンには保温効果があるので、使い捨てよりは生理痛が軽減するということはあるかもしれません。でも、鎮痛薬に頼らざるをえないほどの重い生理痛もあります。そういう人たちに『身体の鍛え方が足りないせい』とし、経血コントロールをする力をつければナプキンもいらないし、PMSや生理痛も改善できるという考え方を押し付けるのは、酷というものです」

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三浦ゆえ

フリー編集&ライター。富山県出身。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに取材、執筆活動を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズをはじめ、『失職女子。~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで~』『私、いつまで産めますか?~卵子のプロと考えるウミドキと凍結保存~』(WAVE出版)などの編集協力を担当。著書に『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。

twitter:@MiuraYue

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