――その後、就職されていますが、見た目は男の子じゃないですか? 職場ではFTMをカミングアウトしていましたか?
MiZUKI:19歳くらいから3年間会社に勤めていたんですが、仕事を紹介してくれた知人と人事と社長には言っていました。
――お知り合いがいたのは心強いですね。周りで就職しているFTMの方もカミングアウトして働かれている方はいますか?
MiZUKI:今は制度が変わったので、戸籍を変えた人は何も言わなくても大丈夫ですし、変えてない人は直属の上司にだけ言っているなんて人もいます。でも自分の場合は、テレビ番組などに顔出ししてFTMについて話していたら会社の人にばれちゃって……そりゃバレますよね(笑)。
――その頃はFTM同士の交流はありましたか?
MiZUKI:あまりなかったですね。男であろうとする意識がすごく高かったので、男友達とかと遊んでるほうが多かったです。
――では、今のようにFTMとして情報を発信し始めたきっかけは何だったのでしょう?
MiZUKI:23歳で女性学・ジェンダー論の西山千恵子先生と出会ったことが大きいですね。先生に出会ってジェンダー論や社会学を学び始めて興味を持ったことで、「どうして自分は性別の枠にはまってたり、FTMであることをコンプレックスとして捉えていたんだろう?」と、周りの目やそれまで抱えていた葛藤が全然気にならなくなったんです。「同じ人なんてひとりもいないんだ」「好きに生きてもいいんだ!」って。
今考えるとしょうもないんですけど、以前の僕は「男とは〜、女とは〜、こうあるべきだ!」という性別の枠に強くとらわれていて、将来的に戸籍も絶対に変えたかったし、ペニスだって完璧に作ろうと思っていたんです。小さい頃は「女らしさ」って枠に苦しめられてたはずなのに、「男らしさ」って枠に自分をはめようとしていて。本当につまんない奴だったと思います。それに気付いてからはすごく楽になって、結局戸籍もそのままだし手術もしていません。
ホルモン注射が普及しているのは東京だけ
――先ほど「17歳から打っている」とおっしゃっていましたが、ホルモン注射って結構しんどいとも聞きます。実際はどうですか?
MiZUKI:僕の場合しんどさはまったくなくて、むしろ体に合ってる気がします。ホルモンバランスってメンタルにも影響するので、打つと心身ともに整うと言いますか。最近ちょっとサボってますけど。
――普段はどのくらいのペースで打つんですか?
MiZUKI:本当は週1とか2週間に1回ですね。打たない期間が長くなると、閉経してなければ女性ホルモンが出てきます。でも声とか骨格が元に戻ったことは今のところないですね。人によるかと思います。やっぱり打つたびに体調が悪くなる子もいるので。
――相場はいくらくらいなのでしょう?
MiZUKI:月に5千円~1万円ですかね。値段は本当にピンキリで、美容目的だったりすると2万円に跳ね上がったり。その上、取り扱っているクリニックがあるのは主に関東だけ! というか、北関東にさえないし、もはや東京だけですよ! 関西も大阪の中心にいくつかそういう病院があるんですけど、本当に少ないんです。施術している病院の情報自体、頑張って調べれば出てくるけど、目に止まりにくいのが現状です。
――『GRAMMY TOKYO オフィシャルブック』には、手術費用や部位などの詳細がまとめられていましたよね。今後FTMとして男性になりたい子の手元に届いたらいいなって本当に思いました。
ニューハーフの彼女との結婚・出産
――MiZUKIさんが今お付き合いされているのはニューハーフさんだそうですが、周りの人に驚かれませんでしたか?
MiZUKI:驚かれましたよ。普通に女の子を好きになるのと、何ら変わらない感情なんですけどね。
――ウェディングの写真を写真家のレスリーキーさんに撮ってもらっていましたが、実際に結婚のご予定はありますか?
MiZUKI:昔はアンチ結婚だったんですけど、今はありかな? って思っています。もう28歳ですしね。でも僕らの場合、戸籍上だと僕が“妻”になるんですよ(笑)。