カルチャー

ドS男子の域を超えた「悪魔」と、完璧超人に“見えた”ヒロインの依存と自立『こどものおもちゃ』

【この記事のキーワード】
こどものおもちゃ

りぼんマスコットコミックス『こどものおもちゃ』1巻表紙(集英社)

 90年代半ば、小学生だった私は『りぼん』が大好きだった。毎月発売日が待ち遠しく、1か月待ちわびた新刊を読んではまた来月号が気になる…。その繰り返しの6年間だった。当時、私の周りにいる大人はあんまりわかってくれなかったけど、いま振り返っても『りぼん』は、小学生だった私に多少なりとも「世間」なるものを教えてくれた指南書のような存在だったと思う。ボキャブラリーの足しにもなった。「離婚」「再婚」「血のつながり」「異母兄弟」「流産」という言葉、女性は離婚後半年間再婚できないということは『ママレード・ボーイ』で教わったし、「中絶」「マスコミ」は『こどちゃ』で覚えた。

 低学年の頃は、その手の気配を感じる言葉(大人の事情がありそうな言葉)を目にするたび、どういう意味か薄々感づいている場合でも、わざわざ大人に聞き答えてもらわなければ気が済まなかったことも思い出す。そういう時、親や祖父母、姉の対応は、若干イラッとしたり、適当にあしらってごまかそうとしたり、苦笑いしたり、なぜか熱心にレクチャーを始めたり……。セックスのことはまだ知らなかったけど「父親が存在しなければ、子どもも産まれないことになる」のを、『ときめきトゥナイト』での死神の台詞で知った時は、「ねえこれどういうこと?子どもを産むのは母親なんじゃないの」と、当時高校生だった姉に聞いた。「そうだけど、父親がいないと子どもはできないんだよ」と漫画の台詞とほぼ同じことを言われる。「だからなんで!?」しつこく聞いてくる私に姉は半ば切れ気味で、結局「父親がいないと子どもはできない」と繰り返されて終わり。すっきりしない。『こどちゃ』で知った「中絶」については、たまたまその場にいた、よりによって昭和ひとケタ世代の祖父に聞いて、かなりイラッとした顔で「中絶っていうのは、途中でやめてしまうこと!」と、怒鳴るように答えられた。にもかかわらず私は、いやいま聞いているのはそれじゃなくてさぁ…と口をとがらせていた。つくづく面倒くさい子どもだったと思うけど、考えたり知りたくなったり想像したりの意欲が湧いてしまう。それが私にとっての『りぼん』だった。

 中学生になると『りぼん』は買わなくなって、たま~~に立ち読みしていたのも、やがてしなくなった。『りぼん』出身の漫画家・矢沢あいが他誌で『パラダイス・キス』や『NANA』を描きはじめたのでこちらはずっと読み続けていたものの、『りぼん』からは遠ざかっていたのだが、ここ数年、90年代『りぼん』の名作が、何かしらの形で復活することが多々あり、再注目していた。りぼんと同じ集英社の『cookie』『Cocohana』にて、大人になった主人公が登場する続編読み切りスペシャル( 『Deep Clear「Honey Bitter」×「こどものおもちゃ」特別番外編』)、弟妹を主人公にした新たな作品の連載開始など(『ママレード・ボーイ little』)。

 そんなこともあって、かつて大好きだった『りぼん』の名作を愛蔵版で購入するなどして再び読み返すようになった。小学生の頃は、特定のキャラクターに思い入れを抱きがちで、ハッピーエンドになってほしいあまり「こうすればよかったのに」とイライラしたりしていたが、大人になった現在はかつてよりも客観的に作品を読むことができ、かつてとは違う感想を抱いたりもする。そこで、いま一度90年代『りぼん』の名作を読み返し、小学生当時に抱いた印象を振り返りつつも、大人になったいまだからこそ見えてくるものをまとめていきたい。

 第1回目は、芸能人をやっている紗南の明るいキャラクターと、羽山のドSっぷりが凄まじい『こどものおもちゃ』。重いテーマを扱った少女漫画としても有名な『こどちゃ』を振り返りたい。

1 2 3 4 5

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

[PR]
[PR]

messy新着記事一覧へ

こどものおもちゃ 文庫版 コミック 全7巻完結セット (集英社文庫―コミック版)