日本では伝統的に狐には超能力があると信じられていて、神さまとして祀っていたから、人に憑く力もあると信じられていたんだうつね。人に影響されやすくて、信じやすくて、暗示にかかりやすくて、恐怖感の強い人で、さらに狐に霊力があると信じている人だけが罹った病気だうつ。暗示とはいえ狐の不思議な力を信じる者が多い地域では、『狐憑き』は伝染もしたそううつよ」※
たった半世紀ちょっと前のお話
夢子「いまでも狐憑きになる人っているの?」
うつりん「いないうつ。義務教育が広まって、狐が人を化かすなんて迷信だと広まると、この病気は日本から消えてしまったうつよ。※けど、1950年代の終わりまで存在していたんだから、ほんの60年前のことうつ。つまり日本ではほんの最近まで、狐やいろんなものにまつわる迷信が人を病気にすると信じられるまでに一般的な考え方だったわけうつ。そのころから続く迷信に基づいてものを考えるクセは、現代の日本人から完全に消えてないんだうつね」
夢子「私は狐に化かされるなんて信じてないよ! そんなの迷信だもん……たぶん」
うつりん「けど、お祓いの効果は信じているうつ」
夢子「いやあ、それはほら、そっちのほうが世間体もいいことだし」
うつりん「迷信に凝り固まっているほうが世間体がいいって、日本って不思議な国うつよね」
※『こころの底に見えたもの』(なだいなだ・ちくまプリマ―新書)より
(大和彩)
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