インタビュー

離婚して子供の親権を得るために「家事育児」に取り組んだ夫/イクメン・杉山さんインタビュー【1】

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 2年前に発売された、コミックエッセイ『新ニッポンの父ちゃん~兼業主夫ですがなにか?~』(主婦の友インフォス情報社)は、タイトル通り、家事も育児も仕事も頑張る“ジョージくん”を主人公にした実録マンガだった。作者は、放送作家・主夫・バーの経営者として多忙な毎日を送る、杉山錠士さん(39歳)。アパレルに勤務しデザイナーとしてフルタイムで働く4歳年下の妻・アヤコさんと、中学1年生の長女(なっちゃん)、保育園に通う次女(たまちゃん)の4人で東京に暮らしています。すっかり社会に浸透したように見える「イクメン」というワード、しかし一方で、長時間労働の横行する会社はまだまだ多く、「育児はやっぱりお母さんが」という社会意識もあり……今、私たちは時代の大きな転換点を迎えているといえるでしょう。

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『コミックエッセイ 新ニッポンの父ちゃん ~兼業主夫ですが、なにか?~』(主婦の友インフォス情報社)

 8年ほど前から「兼業主夫」を名乗り、仕事も家事育児も飲み会も家族とのコミュニケーションも、うまく回しているように(傍からは)映る杉山さんですが、実際のところはどうなのでしょうか。ご自身も週に1回はマスターを務めている、品川区旗の台にあるバー「旗の台BAL cero」でイクメンをテーマにしたインタビューを敢行したところ、結果的に、奥様との結婚、離婚危機など夫婦関係に焦点の当たる内容になりました。全3回に分けてお送りします。

「ありがとう、ごめんね」を言うのが苦手な人と結婚して

――まず、定着してきている「イクメン」という言葉に対して、杉山さんはどう感じていますか?

杉山 僕はNPO法人「イクメンクラブ」にも所属しているのですが、この言葉は2010年頃から広まっていったように思います。当初は、「家事をする夫」っていう意味じゃなくて「育児を楽しむ」ってニュアンスの言葉だったと思うんですが、でも今って、ちょっと使われ方が変わってきているような。

――といいますと?

杉山 世の中の「イクメン」のイメージが、家事出来て、育児出来て、仕事も出来て……みたいな感じで、ハードルが高い気がします。それは、サラリーマンに求めるのは、ちょっと可哀想かなぁって思いますよ。

――奥様のアヤコさんは、「イクメン」という言葉をどう捉えているんでしょうか。

杉山 「イクメン」より、僕が「主夫」って名乗り出した時に、「私が何もやっていないように見えるじゃない」。って、すごく嫌がってました。

――0対10じゃないってことですよね。家事の分担について教えてください。

杉山 食事づくりや掃除は主に僕がやっています。妻は次女のお迎えと、朝食づくり、長女のお弁当づくりを最近やるようになりました。ただ、結婚してからずっと、洗濯は妻の担当ですね。洋服はあまり触らせてもらえないんですよ。妻は洋服が大好きでデザイナーになり、アパレルで働いている人なので、服の扱いにはこだわりを持っている。それはドライ、これはこういう洗い方した方がいい、とか。僕のTシャツも「そんな洗い方したらすぐ傷むじゃん」って怒られるし、たまに僕が洗濯物を干したりすると、「どうしてこういう干し方しちゃうの?」って責められたりしますね(苦笑)。そこは洋服のプロには適わない。でも、「せっかく(干す作業を)やったんだから、そう言わないでよ」って言うと「頼んでないじゃん」って喧嘩になっちゃう。

――いわゆる「カジハラ」みたいな……そうした喧嘩も積み重なると深刻な不満にはならないんですか?

杉山 それは不満ですよね。でも、途中で「出来ないものを、出来るように」しようとは思わなくなりました。妻はそういう人なんだ、って理解する。

――「出来ないもの」というのは?

杉山 15年一緒にいてわかったのですが、妻は「ありがとう、ごめんなさい、お願いします」この3つの言葉を伝えるのが苦手な人で、それも親しい相手に対して特に苦手なんですね。ホームとアウェイがはっきり分かれていて、アウェイ(職場など)では一般的な常識がすごくあるんだけど、ホーム(家庭や友人)になっちゃうと、ものすごく意識しないと出来ない人だから……「家に帰ってきてまで、何で気を遣わなきゃいけないの?」って……昭和のお父さんみたいな人かなって。

――「こういう人だから仕方ないのよ」と思うようになられたんですね。そんな杉山さんは、「昭和のお母さん」みたいでは。おいくつの時に結婚されたんですか?

杉山 結婚したのは、彼女が21歳で、僕が4歳年上だから25歳の時ですね。妻はまだ学生でした。デキ婚ではないですね。

――よろしければいきさつを教えてください。

杉山 出会ってすぐ付き合い始めて、彼女が実家から、1Kで1人暮らししていた僕の所に転がり込んできて、同棲して1年くらいで結婚しました。当時は若くてまだ結婚も考えていなかったし、彼女も結婚は30歳を過ぎてから、みたいなことを言っていたのですが……。ある日、自分の母親と結婚についての話をしたんだ、みたいなことを彼女に話していたら「それってプロポーズ?」みたいな流れになって。まあそれもアリかなって(笑)多分、1年くらい一緒に住んで、僕と一緒に暮らすイメージができていただと思います。僕自身、学生の頃から放送作家として仕事はしているけど、会社員みたく安定しているわけじゃないし、何より、彼女と価値観がだいぶ違うのはわかっていたし、葛藤がありつつ、結婚しようかどうか悩んでいるところもありました。でも決心した理由のひとつとしては、僕の親父の体調があんまり良くなくて。彼女は親父に会ったこともあったし、親父が知らない女性と結婚するのは嫌だなと思いました。出来れば親父が生きているうちに、子供を見せたいって気持ちも多少あって、結婚しようかな、って。彼女の就職が決まってから籍を入れて、入社する頃には結婚して彼女の姓が変わりました。

離婚を考えた引き金

――若くしてご結婚、間もなく第一子となる長女さんが誕生して。でも、『新ニッポンの父ちゃん~兼業主夫ですがなにか?~』には、杉山さんは“離婚”を常に考えていたとあります。

杉山 結婚して15年になりますけど、大きい不満は、6~7年前がピークでした。長女が5歳の時、僕が仕事量を減らしてほとんどの家事をするように切り替え、「主夫」を名乗り初めた頃です。当時は、自分がやった家事の記録をメモっていましたね。

――なぜですか?

杉山 離婚したい気持ちは強いけど、調べてみると、父親が親権を取るのは難しい。友達に相談した時に、とりあえず記録はつけておいて損はないと思うよって言われて。“○月○日に何をして”って、走り書きでばーっと書いていたんですよ。

――当時は、奥様からすれば、夫がまさかそんなことを考えてるなんて。って感じなんでしょうか。

杉山 いやいや、離婚の話は何回も出してますからね。僕が離婚準備をしていることを、うすうす気付いていたかもしれません。本には書いてないけど、本気で離婚の引き金になった事件があって。

――どんな事件があったんですか?

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