インタビュー

「優しさに浸る楽園」キャバクラが、地獄に思えるのはなぜか/紫原明子×枡野浩一【2】

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連続対談シリーズ「心から愛を信じていたなんて」

『愛のことはもう仕方ない』/『家族無計画』

『愛のことはもう仕方ない』/『家族無計画』

紫原明子×枡野浩一対談
「無計画」で「仕方ない」夫婦と男女~離婚と自立とセックスレスと~

「破天荒なお父さん」が大好きな紫原さんの息子さん。その話を聞いて枡野さんは離婚後、調停の約束を元奥さんに破られて、ずっと会えていない息子さんへの想いを切々と語り始めます。キャバ嬢が嫌いだし、自分のことが好きな女性が嫌いだという枡野さんに対し、紫原さんは思わずこう聞きます。「枡野さん、“だめんず”みたいな嗜好ですか?」

<バックナンバー>
【1】セックスした相手を特別扱いしないことは「嫌われる」一因になる

「破天荒なお父さんを息子はとても誇りに思っていて」(紫原)

紫原 私はわが家が離婚していることについて、なにもおかしいことではないと思ってます。だから自分の子どもたちも、「うち、離婚してるけど、それがなに?」みたいなことはどんどん周りに言っていいと思っているんです。でも私がそう思っていても、離婚した家庭について周りから(いろんな声や意見が)聞こえてくるのはしょうがないと思うし、「人の言うことなんか気にしないで」とも教えていなくて。気にしてしまうものはしょうがないじゃないですか。

枡野 この本(『家族無計画』)で、「パパの力を借りないでママに何ができるの?」って息子さんが(紫原さんに)言うシーンがあるじゃないですか。それってやっぱりお父さんの家入(一真)さんの存在感があるっていうことですか? 子どもさんに対して?

紫原 そうですね。なんか“破天荒なお父さん”っていうのを息子はとても誇りに思っているみたいで。(元旦那さんが2014年に立候補した)東京都知事選のときも、私は子どもがどう思うのかとても気にしていたんですけど、(子どもの友人たちは)「おまえの父ちゃんカッコいいな」じゃないですけど……。

枡野 ああ……。

紫原 酔っぱらってお酒の匂いをぷんぷんさせながら運動会に来ちゃうお父さんだったんですけど。「おまえの父ちゃん、酒くさいな」って子ども同士で言われて。うちの息子は「いつもだよ」って返したんですよ(笑)。息子はそういう特異な環境を強みにするのがうまいっていうか。そんなお父さんをカッコいいと思ってたみたいです。

枡野 はい。

紫原 「お父さんはROCKでカッコいい人。お母さんはそれを支える地味な人」っていうか、「お母さんは普通の人。お父さんは変な人」ってずっと思っていたようで。だから、「お父さんの力がなくて、ママに何ができるの?」って思っていたんじゃないかと思います。

枡野 う~~ん……。それは(元旦那さんが)お金持ちだったからですかね?

紫原 お金……確かにそれもあるけど……。でも、都知事選立候補は大きかったと思います。

枡野 確かにお父さんがねえ、突然、都知事選に出るってそりゃあびっくりするでしょう。

紫原 うちの近所にもポスターが貼られたんですよね。「あれ、おまえの父ちゃんだろ?」みたいな。

枡野 名前も珍しいからすぐわかりますしね。それで、メルマガの話に戻ると、自分は毎日(有料)メルマガを出してるんですね。5年間くらい。だけどすっごく稼げてないんですよ。それに比べて家入さんは全然メルマガ出さなくても大金持ちだから、とにかくそれだけで立派なお父さんだと思いましたよ。

紫原 でもいまはそんなにお金持ってないと思いますよ。

枡野 でもかつてキャバクラで月に2000万円豪遊って……なかなかできないですよね。

紫原 ほんとに当時は信じられないことがたくさん起こったっていうか。

枡野 (『家族無計画』に書かれていた紫原さんがキャバクラに潜入したときのキャバ嬢に)“元旦那さんって一晩2000万使ったんですか!?”って聞かれて、“いや、1カ月で2000万円です”っていうのもおかしな会話ですよね。

紫原 あははは。そのあたりのことはHさんもよくご存じだと思いますよ。

枡野 Hくんってキャバクラ経営もしていて、僕、おごってもらったことあるんですキャバクラ。(紫原さんは)本に“キャバクラ楽しかった”って書いてあるじゃないですか?

紫原 めっちゃ楽しかった!

「キャバクラ、あんな地獄味わったことがない」(枡野)

枡野 キャバクラのなにが楽しかったんですか?

紫原 それは逆に私が知りたい。どうしてキャバクラを楽しくないと思うのかを。

枡野 おごってもらったから、あまり言えなかったんですけど、Twitterとかにも書けなかったけど、本当いうとすごくツラくて。あんな地獄、味わったことがない……。

紫原 あはははは! どこが地獄だったんですか?

枡野 まず女性たちがとにかく「すごーい」しか言わないんですよ!

紫原 ああ……。

枡野 絶対心にも思ってないことなんですよ。当時ちょうど(枡野が書いた青春小説)『ショートソング』[注]が売れ出して。いま10万部弱くらい、そのころ7万部くらい……。僕の本にしては売れた本なんですけど、「本、どのくらい売れてるんですか?」って聞かれたから、「いま7万部くらいだよ」っていったら、「すごーい」って言うんだけど、絶対あなた、7万部って知らないだろって! 7万部がどれくらいすごいかわかってないでしょって! その自動的に「すごーい」っていうのが、大嫌いで……。僕、心にもないことを言われるのが一番傷つくんです。

紫原 あ~なるほど。でもキャバクラって、すべすべしている人がそばに来てくれて、無条件に「うわ~! キモチいい~!」ってのはないですか?

枡野 むしろ、すべすべした自分の息子がいてくれたら可愛いけど。

紫原 女性にすべすべさ求めないんですか?

枡野 はい。そういうのがダメだったのかも。別れた奥さんも男顔で。男だったらハンサムっていう顔なんですよ。あんまり女性顔じゃないんですね。

紫原 男性的な顔立ちの女性に魅かれるんですか?

枡野 いや……そんなことないんですよ。こんなこと言うと、もっとどんどん世の中を敵にまわしてしまうんですけど、見た目は好みじゃなかったと思います、僕。

紫原 あ~……。

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枡野浩一

歌人。1968年東京生まれ。小説『ショートソング』(集英社文庫)ほか著書多数。短歌代表作が高校の国語教科書(明治書院)に掲載中。阿佐ヶ谷「枡野書店」店主。二村ヒトシさんとのニコニコ動画番組『男らしくナイト』(第1回は9/24夜)、中村うさぎさんとのトーク企画『ゆさぶりおしゃべり』(第1回は10/7夜)など、最新情報はツイッター【@toiimasunomo 】で。

@toiimasunomo

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