カルチャー

「男の人は一握りの人しか浮気しないと。自分が夫婦ゲンカするようになるとは思ってもなかった」/紫原明子×枡野浩一【6】

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連続対談シリーズ「心から愛を信じていたなんて」

『愛のことはもう仕方ない』/『家族無計画』

『愛のことはもう仕方ない』/『家族無計画』

紫原明子×枡野浩一対談
「無計画」で「仕方ない」夫婦と男女~離婚と自立とセックスレスと~

自殺未遂から一転、お笑いに目覚めた枡野さん。44歳にして売れない若手芸人として舞台デビューし、ギャラも出ないまま、毎月20本超のお笑いライブへの出演を続けます。そしてその先に見えたものは、芥川賞作品・又吉直樹『火花』よりリアルな結末……? さらに話題は新宿2丁目のゲイ社会へと移り、性的強者とはいったい誰なのかという話に広がっていきます……。

 <バックナンバー>
【1】セックスした相手を特別扱いしないことは「嫌われる」一因になる
【2】「優しさに浸る楽園」キャバクラが、地獄に思えるのはなぜか
【3】樹木希林にならなかった私、内田裕也になれなかった僕
【4】「僕だって才能はあるけど妻のために仕事を我慢している」夫婦間のパワーバランスと嫉妬
【5】「夫婦でずっとセックスするのは難しい」「性的興奮は優しさや守ってあげようって気持ちの正反対」

「テレビで芸人活動の話してもぜ~んぶカットされるんです」(枡野)

紫原 枡野さんのお笑いの話に戻りますけど、お笑いがそんなに「生きてる!」って感じるほど楽しかったのに、なぜやめちゃったんですか?

枡野 それはいろいろ事情があるんですよ! この本には書けなかったんですけど。まぁ体力的な問題が一番大きかったんだけど、それ以前に僕、歌人であることを利用したネタをやってたんですね。「有名な歌人で、教科書にも短歌が載っています」という僕が叩かれたりしてるっていうのでずっと笑いをとってたんだけど、僕はそういう意味では、歌人である枡野っていうのを保ちたかったんですね。でもやっぱり(漫才トリオを組んでいた)芸人の先輩は、芸人だからちょっと話を盛ったりするんですよ。それが苦手で。書いてる自分の書いてることと、ステージ上の自分を一致させようと頑張ってたんだけど、そのへんの理解はたぶんちょっとアレでしたね。それ以外のことでは、ものすごく私のわがままに寄り添ってくださってたし、今も感謝の気持ちでいっぱいなんですけど。

紫原 ああ、はい。

枡野 あと、小田嶋隆さん[注]っていう僕が大好きなコラニムストの方がいて。僕にとってはダウンタウンの松っちゃんよりすごい人で。僕にとってはね。でもその小田嶋隆さんとのトークイベントがあるから(テレビ番組の)オーディションに行きたくないって言って(先輩芸人に)怒られたりとか。僕にとって小田嶋隆さんとのトークなんて、もう、松ちゃんとの共演だから、休めるはずないんですよ!

会場 (笑)

枡野 (小田嶋さんとのトークイベントの)チラシももう刷っちゃってるし、休むなんてこと思いつきもしないし、でも先輩芸人は「でもテレビのオーディションのほうが大事じゃないか!」っていうの。でも僕は、テレビなんかいっぱい出てるんですよ、物書きとして。だからその温度差がひどくって、僕が芸人として歌人であることを利用してネタをやる以上は――

紫原 歌人であり続けないといけない……。

枡野 そう。だからうまくいかないと思うようになっていったし、本来の物書きの仕事をもっとちゃんとしないと、元も子もないと考えるに至った。単に収入が全然なくて、体調もぼろぼろで、とか、ほかにも事情は色々あったけど。だって実際にテレビに出て、芸人としてじゃないテレビによく……『アウト×デラックス』とか『ゴロウ・デラックス』とかに出て、いくら芸人活動の話してもぜ~んぶカットされるんですよ、きれいに。関西の番組なんて、「枡野さん、芸人活動してること、言っちゃダメですよ」と。ステージ上に芸人さんいっぱいいるから、どんなに恐ろしいことになってしまうかと。「関西人は笑いに厳しいんです!」って言われて……。そういうことが続いて、自分が良かれと思ってやってたことが逆効果であるって気がしてきて挫折したってうのが……。でも僕、けっこうね、『ガキの使いやあらへんで!』のオーディションとかすごく最後までいって、二回呼んでもらって単独ライブくらいの数のネタ見せして、本当に受かったとしか思えないような対応だったのに、受かったのはアキラ100%さんっていう、股間をお盆で隠して事件を解決する……。

紫原 ああ~はいはい、見たことあります(笑)。

枡野 その芸人さんが受かって。でも僕の二人組のときのネタね、いま評判の「アンタッチャブル」柴田さん司会のDVDに出てますので、みなさん、『アンタッチャブル柴田の「ワロタwwww」』というDVDがTSUTAYAにあったら――(相方の)詩人とふたりのコンビ時代のネタが入ってるんで。同棲してるボーイズラブの設定でね、傷つけあえば傷つけあうほど美しいポエムと短歌が生まれてしまうっていう(笑)。

紫原 あはは……、ハイコンテクストな感じですね。

枡野 そう。それをすごく面白がってくれたのが、いまをときめく「メイプル超合金」のカズレーザーさんですよ。もっと仲良くなってればよかったなぁ。すごく褒めてくれたんですよ、そのネタを。

紫原 そうなんだ。

枡野 とっても話したかったのに、あまり親しくできないまま、僕が芸人活動やめちゃいましたね。しみじみ。

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枡野浩一

歌人。1968年東京生まれ。小説『ショートソング』(集英社文庫)ほか著書多数。短歌代表作が高校の国語教科書(明治書院)に掲載中。阿佐ヶ谷「枡野書店」店主。二村ヒトシさんとのニコニコ動画番組『男らしくナイト』(第1回は9/24夜)、中村うさぎさんとのトーク企画『ゆさぶりおしゃべり』(第1回は10/7夜)など、最新情報はツイッター【@toiimasunomo 】で。

@toiimasunomo

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