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「日本で女性の大学院生の数は男性の半分以下しかいない」という事実が示唆すること

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 前回の記事では、日本は短大へ進学する女性が依然として多く、大学まで進学する女性が少ないことを紹介しました。大学就学率の男女比で見ると日本の女性は先進国で最も学歴が低いのです。今回はさらに踏み込んで、大学院の状況を見ていきたいと思います。

 一般的に、経済が発展するにつれ、高度な知識やスキルを持つ人材への需要が高まると考えられています。例を挙げると、現在筆者が住んでいるマラウイ共和国は世界最貧国の一つで、多くの国民が第一次産業(農業・林業・漁業など)に従事しています。中等教育以降への教育需要はそれほど大きくないですし(小学校に入学した女の子の5人に1人しか中学校へ進学できず、退学理由の過半数は妊娠・結婚という状況です)、小学校の教員も大学すら出ていない人がほとんどです。反対に、先進国では多くの国民が第三次産業に従事し、科学技術や金融工学などの大学院レベルの高度な知識を活かした経済活動が営まれ、小学校の教員も修士号を取得している人が多くなります。

 これを反映して多くの先進国では大学院教育の重要性が高まっています。このことは教育大学院・経営大学院(MBA)・法科大学院・メディカルスクール・公共政策大学院といった専門職大学院の勃興に見て取ることもできますし、実際にアメリカでは修士号取得者の平均生涯所得は、学士号取得者よりも4000万円程度高くなっています。失業率についても大学院修了者は大卒者よりも低い値になっています。このように重要性が高まる大学院教育ですが、日本の女性の就学状況はどのようになっているのでしょうか。

日本の女性は男性の半分しか大学院へ行っていない

 日本の女性の修士課程就学率は、OECD諸国の中でも国民一人当たり所得が低いトルコやメキシコに次ぐ低さで、5.7%しかないということはご存知でしょうか? さらに、前回の記事で「日本は女性の学士課程の就学率が先進国で唯一、男性のそれよりも顕著に低い国」と書きましたが、修士課程においても同様のことが言えます。大学では、女子学生の数は男子学生の約86%しかいませんでしたが、修士課程ではそれが大幅に悪化して約51%、つまり女性の修士課程の学生数は男性の半分程度しかいないという計算になります。これらを勘案すると、大学院レベルの高度な教育を受けているか否かについて、日本の女性は先進諸国の中で実質最下位だと言っても過言ではないでしょう。

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 また、少し話はそれますが、日本の男女を併せた修士課程の就学率は8.4%で、OECD諸国の中でも下位に位置します。日本は企業内教育が充実しているので、それが修士課程相当の知識やスキルを提供しているという側面があるのかもしれません。しかし、OECD諸国の中でも国民一人当たり所得が低い方に位置すること、大学の就学率もOECD諸国の平均よりもやや低い位置にあることを考えると、国民の教育水準が低いことが経済発展の足枷になっているか、産業構造が他の先進諸国と比べて未発達であるために、高い教育水準を持った労働力が必要とされていないことが示唆されます。いずれにせよ政策的に色々と考えなければならない状況にあることは間違いありません。

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畠山勝太

NPO法人サルタック理事・国連児童基金(ユニセフ)マラウイ事務所Education Specialist (Education Management Information System)。東京大学教育学部卒業後、神戸大学国際協力研究科へ進学(経済学修士)。イエメン教育省などでインターンをした後、在学中にワシントンDCへ渡り世界銀行本部で教育統計やジェンダー制度政策分析等の業務に従事する。4年間の勤務後ユニセフへ移り、ジンバブエ事務所、本部(NY)を経て現職。また、NPO法人サルタックの共同創設者・理事として、ネパールの姉妹団体の子供たちの学習サポートと貧困層の母親を対象とした識字・職業訓練プログラムの支援を行っている。ミシガン州立大学教育政策・教育経済学コース博士課程へ進学予定(2017.9-)。1985年岐阜県生まれ。

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