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「日本で女性の大学院生の数は男性の半分以下しかいない」という事実が示唆すること

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日本の女性の博士課程での教育水準は絶対的にも相対的にも先進国で最低である

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 上の図2はOECD諸国の男女別の博士課程就学率のグラフです。日本の女性の博士課程就学率は0.7%と、ここでもOECD諸国の中でも国民一人当たり所得が低い国々に次ぐ低さを記録しています。学部や修士課程では先進諸国の大半で女性の就学率が高い状況でしたが、博士課程になると、先進諸国でも多くの国がジェンダー均衡点付近へと落ち着きます。しかし、日本では均衡点から大きく離れ、女性の博士課程在籍者数は男性の約41%となっており、データの存在する先進諸国の中では最下位となっています。

先進国で最低水準の大学院教育の状況が女子教育の拡充を阻害する

 日本の大学・大学院における女子教育の状況は、もはや先進国と呼べるものではありません

前回、女子教育改善のための代表的な政策介入方法をいくつか紹介しましたが、その一つに「女性教員を増やして、女子が就学しやすい環境を整備する」というものがありました。

 一般的に、博士号の取得は大学教員となるための必須条件です。つまり、博士課程に女性の学生が少ないということは、大学教員になり得る女性が少ないということであり、高等教育における女子教育拡充の阻害要因となります。博士課程に進む女性が少ない日本の現状では、女性の大学教員が自然と増加するとは考えにくく、政策介入なしに女性教員が増えることで女子教育の環境が改善し、高等教育での女子教育が拡充していくということは望めないでしょう。

 さらに、前回女子教育改善のために重要だと言及した、「政治・行政がイニシアティブを取って女子教育の費用対効果を上げる」ことも期待するのが難しい状況です。

 現在先進国だけでなく途上国でも、大学院を修了していることが行政職での指導的立場に就くためのパスポートになりつつあります。例えば、国際機関で専門職として働くためには修士号を取得していることが必要ですし、博士号を持っていることが幹部クラスのポジションを狙う上で有利に働きます。さらに、筆者が働いてきたジンバブエ・ネパール・マラウイのような最貧国の国々であっても、省庁の局長級では博士号保持者がゴロゴロといます。日本では依然として学部卒のキャリア官僚採用が行われており、結果としてデータとエビデンスに情報づけられた政策ではなく、直感や経験による政策形成が行われている現状があります。いずれは日本も諸外国にキャッチアップして、エビデンスに基づいた政策決定が行われるようになるとは思いますが、大学院に進学する女性が少ない現状を鑑みると、将来行政機関で女子教育拡充の旗手となるべき女性リーダーの育成に失敗しているとも考えられます。

 つまり、これだけ大学院に女性が少ない状況では、女子教育の環境改善や女性リーダーの存在によって女子教育が自ずから改善していくことがそれほど期待できないため、意図的に何らかの対策を講じないと日本の女子教育の拡充は進んでいかないことが示唆されます。

 ただし読者の中には「日本の女性の学力が低いから大学院に進学しないだけなのでは」という疑問をもつ方もいるでしょう。PISAやTIMSSのような国際学力調査の結果をみると、そのような事実は認められないのですが、次回・次々回とその点について詳しく触れていきたいと思います。

まとめにかえて―女子教育の拡充無くして、ジェンダー平等はあり得ない

 私はかつてハイパーインフレーション後の立て直しのためにジンバブエという南部アフリカの国で働いていました。かつてアフリカの中では比較的豊かだったこの国が、ハイパーインフレーションを経験し貧しくなっていったのには複合的な要因があります。その一つが、貧しい黒人たちを救済するために、白人の農場や企業を没収して黒人に分け与えたものの、黒人に農場・企業経営の知識が無かったために国の生産力が激減したというものです。

 日本でも女性活躍推進法が成立し、労働参加におけるジェンダー平等を目指す機運がでてきました。しかし現在の先進国最低レベルの女子教育の惨状を考えると、ジンバブエで平等な社会を目指した施策が、前提条件が満たされていなかったためにハイパーインフレーションという悲劇を引き起こしたように、日本もまた、ジェンダー平等を実現するための前提条件が崩壊しており、悲惨な結果をもたらす可能性が十分にあります。

 日本は既に先進国の中でも豊かな国であると言える状況ではなくなりつつあります。人口減少による生産力の低下を女子教育の拡充による生産性向上で補えないようであれば、社会が衰退していくのをただ指をくわえて眺めていることになるでしょう。

まとめ

・日本の女性の修士課程就学率は低く、男性の半分しか大学院へ進学していない
・博士課程就学率はさらに低く、先進国でも最低レベルとなっている
・大学院での女性就学率が低いため、今後自然と女子教育が拡充されていくことが考えづらく、意図的に女子教育拡充の手を打つ必要がある
・男女間で教育水準に顕著に差が存在する現状では、ジェンダー平等な社会の実現は難しい

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畠山勝太

NPO法人サルタック理事・国連児童基金(ユニセフ)マラウイ事務所Education Specialist (Education Management Information System)。東京大学教育学部卒業後、神戸大学国際協力研究科へ進学(経済学修士)。イエメン教育省などでインターンをした後、在学中にワシントンDCへ渡り世界銀行本部で教育統計やジェンダー制度政策分析等の業務に従事する。4年間の勤務後ユニセフへ移り、ジンバブエ事務所、本部(NY)を経て現職。また、NPO法人サルタックの共同創設者・理事として、ネパールの姉妹団体の子供たちの学習サポートと貧困層の母親を対象とした識字・職業訓練プログラムの支援を行っている。ミシガン州立大学教育政策・教育経済学コース博士課程へ進学予定(2017.9-)。1985年岐阜県生まれ。

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