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「見知らぬ人に襲われる」「加害者は家庭環境に問題がある」セカンドレイプを横行させる「レイプ神話」のでたらめ

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Photo by ka cheng ho from Flickr

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8月23日、有名女優の子で自身も俳優である男性が、強姦致傷容疑で逮捕されました。

事件が報道されるや否や、さまざまな憶測が飛びかいました。「もしかして、美人局じゃない?」「指をケガするだけで済んだのは怪しい」。あるいは、容疑者の母親に対し、「お母さんの育て方が悪かったのでは?」と。さらには、女性の年齢や容姿が報道され、ネット上では被害者の写真と称した別人の顔写真が拡散。被害者女性を心理的・社会的に傷つけるセカンドレイプが横行しました。

これらのセカンドレイプの背景には、「レイプ神話」と呼ばれる根拠なき思い込みが存在します。神奈川県のホームページでは、レイプ神話をこのように説明しています。

「強姦(レイプ)にまつわる話として、その真偽に関わりなく、広く一般に信じられていることがあります。この神話は、知らず知らずのうちに意識の中に刷り込まれ、その結果、被害者が自分自身を責めてしまうこともありますが、被害者には何の落ち度もありません。被害の責任は加害者にあります。」
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/p787148.html

レイプ神話は、具体的にどのようなものなのでしょうか? 代表的なレイプ神話として、下の4つがあげられます。

(1)レイプの多くは暗い公園や道で見知らぬ人によってなされる
(2)挑発的な服装をしている人、魅力的なので若い人が狙われやすい
(3)レイプされるとき被害者は強く抵抗するものだ
(4)加害者は異常性格者が多く、家庭環境に問題のある人が多い

本記事では、4つのレイプ神話に関する統計を紹介します。インターネットや国会図書館から誰でもアクセスできるデータをみても、レイプ神話はでたらめであると断言できます。

(1)レイプの多くは暗い公園や道で見知らぬ人によってなされる

ここでは、日本における「強姦」と「強制わいせつ」を「レイプ」と定義したいと思います。なお、「強姦」は「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫」することであり、「強制わいせつ」は「13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為」をすることです。13歳未満の者に対しては、合意があっても罪に問われます。

「夜道を歩いていたら見知らぬ人に襲われる」というのが強姦のイメージでしょう。まずは、犯罪者処遇の実情を報告した「平成27年 犯罪白書」のデータをみてみましょう。

統計1 レイプが行われる場所 (「平成27年版 犯罪白書」http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/mokuji.html より抜粋)

統計1 レイプが行われる場所
(「平成27年版 犯罪白書」http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/mokuji.html より抜粋)※クリックで拡大

強姦の場合、70%近くが住宅・ホテル飲食店といった室内で行われていることがわかります。強制わいせつの場合は室外が多いですが、34%が室内です。

統計2 被害者と被疑者の関係 (「平成27年版 犯罪白書」http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/mokuji.htmlより抜粋)

統計2 被害者と被疑者の関係
(「平成27年版 犯罪白書」http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/mokuji.htmlより抜粋)※クリックで拡大

被害者が加害者と「面識あり」のケースが年々増えています。27年度の調査によると、強姦の場合、被害者と加害者の関係性は「面識あり」と「面識なし」で、半々であることがわかります。

一方で、異なる結果が出たアンケートもあります。女性1811人に「これまでに異性から無理やりに性交されたことがあるか」を聞いた「男女間における暴力に関する調査」(平成26年度調査)では、加害者が「まったく知らない人」と答えた割合は11.3です。

統計3 加害者との関係 (「男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査)」http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/h26_boryoku_cyousa.html」より抜粋)

統計3 加害者との関係
(「男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査)」http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/h26_boryoku_cyousa.html」より抜粋)※クリックで拡大

異なる統計データですので、簡単には比較できませんが、なぜ加害者と被害者の面識の有無に差があるのでしょうか。

「犯罪白書」は検挙された人数をもとに作成しています。性犯罪は被害者側からの告訴がない限り、犯人を逮捕し処罰できない「親告罪」で、実数に比べ相談件数が少ないことがわかっています。

「男女間における暴力に関する調査」では「異性から無理やりに性交された経験」のある人は6.5%。そのうち、「相談した」が31.6%で、「相談しなかった」が67.5%となっており、7割弱の人が相談していないことがわかります。さらに、「相談した」中でも、警察に連絡・相談した人は4.3%です。

加害者と面識がある場合、より被害を口にするのをためらってしまう可能性は高いでしょう。ですから、「犯罪白書」には面識のある加害者からの被害が相当数カウントされていないことが予想されます。

「レイプは見知らぬ人によって行われる」のではなく、「見知らぬ人の方が、知り合いよりもレイプ被害を報告しやすい」ということなのかもしれません。

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