インタビュー

性犯罪はなぜ起こる? 加害者性・攻撃性は男性全般に共通するパーソナリティだ/「性犯罪は男性の問題である」対談・前篇

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性犯罪を深く考えるふたり。

性犯罪を深く考えるふたり。

 8月に発生した元・俳優の高畑裕太による強姦致傷事件は、今月9日、高畑裕太は不起訴処分で釈放という形でひとまず終結した。過熱報道はまだしばらく続くだろうが、示談となったことで事件に関する新しい情報が出てきにくくなるため、やがては沈静化する。そして、人々の記憶から消えていく……。

 その状態に「事件を風化させてはならない」と、待ったをかける男たちがいる。ひとりは、映画監督の小澤雅人氏。最新作『月光』は、性犯罪における被害の残酷さを描いた映画として注目を集め、現在、全国で順次公開中である。

 もうひとりは、東京・榎本クリニックの精神保健福祉士・社会福祉士である斉藤章佳氏。性犯罪は常習化しやすく再犯率が比較的高いといわれているが、一度その罪を犯した人に二度と同じ過ちをくり返させないために、10年前から日本で初めての社会内処遇の枠組みにおける加害者更生プログラムを実践している。

 加害者と同じ男性が何を話すのか、と思われるかもしれない。けれど両氏は口をそろえてこう言う、「性犯罪は、男性の問題である」と。いうまでもなく、加害者のほとんどは「男性」だからだ。

加害者はモンスターではなく普通の人間である

斉藤章佳さん(以下、斉藤)「『月光』では強姦、性虐待を通して、“被害”と“加害”の両方が真正面から描かれていますね。観る人はどちらかに注目することになりますが、多くの女性は被害者に目が行き、感情移入するでしょう。私は普段から性犯罪加害者と多く接しているので、加害側の男性に注目していました。加害者が事件を引き起こした心理的要因やその社会的背景などが非常に気になりました」

 その加害者の名は、トシオ。写真館を営み、妻と娘がいる。一見、人がよさそうに見える彼が、家庭では幼い娘のユウを性虐待し、娘のピアノ教師であるカオリを強姦した。

小澤雅人さん(以下、小澤)「生まれたときからの悪人って、いませんよね。だから僕は、トシオのことも単なる悪者として描きたくはなかった。彼の家族、人間関係、生育歴、家庭内の立場、生きがい……そうやって細部まで設定して迫っていくと、どうしても“人間”になります。性的なモンスターではなく、いいところも悪いところもあるひとりの男として、彼を造形しました」

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トシオという、ひとりの男。©2016『月光』製作委員会

斉藤「性犯罪者のなかには軽度な知的・発達障がいが背景にあり『こういうことをすると女性が傷つく』と理解できず、短絡的に欲求を満たそうとして常同的に性的逸脱行動がやめられない人たちがいます。でも、それはほんとうに少数派。大多数の性犯罪者は、監督が言われたように普通の男性です。普通の家庭に育ち、大学を出て、社会人になって、家庭もある人たち。一部メディアでは、高畑裕太氏がまるでモンスターのように描かれていますね。あれには相当な違和感がありました」

 以前から性的に逸脱していた、背景に発達障がいがあるのではないか、ふだんから酒癖が悪かった、または、母親の育て方が悪かった……高畑裕太の「人と違う点」を強調する報道を見聞きした人は少なくないだろう。

斉藤「大多数の視聴者側、つまり社会にとって、そのほうが都合いいのでしょう。性犯罪加害者を『どうしようもない人間だ』『閉じ込めておけ!』と結論づけるのは簡単です。でも、彼らのような一見普通に見えながら性犯罪を犯す男性が、適切な治療プログラムを受けることで再犯が防止できるとなると、どうでしょう。私たちはそうすることで再犯を防ぎ、結果的に性犯罪の発生そのものを減らすことを目指しています。これは広い意味で、被害者支援にもつながると考えています」

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