インタビュー

性犯罪者が犯行時に目の前の現実をどう捉え、何を考えていたかを知る/「性犯罪は男性の問題である」対談・後篇

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映画『月光』 ©2016『月光』製作委員会

 映画『月光』はレイプシーンの生々しさ以上に、心から血を流し、声にならない声で叫びつづける被害者の姿と、そこからの回復が印象に残る映画だった。監督の小澤雅人氏は、高畑裕太による強姦致傷事件に関する一連の報道をみて、被害者に対する想像力があまりに欠如していると指摘する。

 精神保健福祉士・社会福祉士である斉藤章佳氏は、東京・榎本クリニックで性犯罪加害者の更生プログラムに10年前から従事し、それによって再犯率が比較的高いといわれる性犯罪を1件でも減らすことを目指している。

 両氏の対談、後篇は9日報じられた高畑裕太の不起訴処分から話がはじまった。

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映画監督の小澤雅人さん(左)と、性犯罪加害者更生プログラムに取り組む斉藤章佳さん(右)

▼対談前篇は、こちらから。「性犯罪はなぜ起こる? 加害者性・攻撃性は男性全般に共通するパーソナリティだ」

斉藤章佳さん(以下、斉藤)「強姦致傷では起訴されるのは、全体の約3~4割と言われていて、そのほとんどが示談で終わります。つまり、被害者の多くが泣き寝入りしている可能性があると想像できます」

小澤雅人さん(以下、小澤)「それ以前に、性犯罪は被害を受けた女性が訴え出ないことがほとんどですよね」

斉藤「はい、被害届を出すのは全体の15~20%と言われています。だから裁判までいくのは、ほんのひと握りではないでしょうか。そうなってしまう原因のひとつに、被害者にとって裁判員裁判のハードルが高すぎることがあげられます。“強姦致傷”は裁判員裁判で争われますから、国民から選ばれる6名の裁判員に、事件の内容を詳細に知られることになります。場合によっては、生い立ちなどまで明らかにされます。それが被害者にとって、どれだけ苦痛か。おまけに、裁判員裁判は長期間に及びます。これが“強姦”だと職業裁判官による裁判になるので、致傷の部分だけ取り下げ、強姦だけで争うケースもあります。でも、一般的に強姦致傷より刑が軽くなると予想されます」

 どちらにしても、被害者はジレンマにさいなまれる。

斉藤「被害者は自分が受けた被害や痛みを、裁判のなかで正当に評価されないのが現状です。そもそも示談金の額が多くても、被害者の受けた傷は報われません。その女性はこれからずっとその性被害というトラウマの苦しみを背負っていくからです。かたや加害者は示談などで不起訴になった場合、罪を背負って生きていくとはいえ、履歴書上に傷はつかないので、普通に働くことができます。人によっては普通に結婚して、普通の家庭を作れるかもしれない。理不尽ですよね。もし起訴されて実刑になっていたら、刑務所内で再犯防止プログラムを受けることになる場合もあります。そういうケースだと、専門的なプログラムのなかでなぜ自分は性犯罪に至ったのかについて振り返る機会を得ます」

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