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蓮舫氏に対する「二重国籍」「経歴詐称」批判は、マイクロアグレッションという差別の一形態

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蓮舫公式サイトより

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今週は蓮舫氏の二重国籍問題が芸能スキャンダルのごとく報道されていました。特に問題視しているのは、産経新聞や池田信夫氏など、日頃から中韓に対する差別的言論や公平性を欠いた民進党批判などを繰り広げているメディア・論客たちです。

こうした「保守系」の論客が問題視しているのが「台湾と日本が戦争になったらどうするんだ」「嘘をついているから経歴詐称だ、公職選挙法違反だ」という点です。しかしこうした主張は「二重国籍であっても日本国籍を持っていれば日本人であることに変わりない」という重要な点を見過ごしています。たとえ蓮舫氏が過去に「中華民国籍(台湾国籍)を持っている」とどこかで言っていたとしても、選挙において「二重国籍ではない」と明言していない以上、経歴詐称にはあたりません。何より、彼女のアイデンティティや二重国籍などは選挙の争点でさえなかったのだから、彼女が経歴詐称する必要性もありません。二重国籍であっても日本国籍を有している以上日本人であり、「私は日本人である」という主張に何の問題も無いのです。

アイデンティティの問題と国籍の問題を混同した議論

そもそも、ある個人が日本人なのかどうか、というのは国籍の問題とは別にアイデンティティの側面もあり、それらを混同すると話がややこしくなります。外国籍の両親から生まれ、外国籍を所持していても、日本で生まれ育ち、日本語を使い、日本食を好み、自身を「X国系日本人」だと認識しているケースもあるはずです。そうした人が「あなたは何人ですか?」と問われたときに、自分の食生活や言語、考え方は日本人だなと考えて「私は日本人」と答えることもあるでしょう。一方、日本国籍を持っていても配偶者が外国人であったり、国外での生活が長くなれば「私はX国人である」というアイデンティティを持つようになっても不思議ではありません。

たとえば私が住むアメリカには日系アメリカ人、中国系アメリカ人、台湾系アメリカ人、インド系アメリカ人など様々な移民がいます。彼らのアイデンティティは移民何世代目かによっても違いますが、基本的には「アメリカ人」であり、場合によっては自身のルーツ(日系アメリカ人であれば日本人)のアイデンティティを持つこともあります。

母親が日本人であり日本で生まれ育った蓮舫氏が「生まれたときから日本人である」というアイデンティティとともに、中華民国出身の父親の出自を誇りに思い「生まれたときから台湾人である」というアイデンティティを持っていても何ら問題はありません。彼女は台湾人としてのアイデンティティも持ちながら、日本人としてのアイデンティティも持っていてもおかしくない人物です。つまり彼女は台湾人でもあれば、台湾系日本人でもある、日本人でもあれば、ミックスの日本人でもあるわけです。そうしたアイデンティティが状況に応じて変化するのは、国籍の有無とは全く別問題です。日本国籍を有する蓮舫氏が、日本の国会議員として、日本のために働きたいと思い選挙に臨み「私は日本人だ」と主張することには、何ら矛盾も問題もありませんし、経歴上も確かに日本人なのですから詐称にはあたりません。

それでもあえて国籍の問題に触れるなら、そもそも、台湾国籍というのは日本の植民地支配や、国際結婚で生まれた子の国籍付与における男尊女卑問題(母親が日本人でも子は日本国籍を取得できなかった)などがあり、蓮舫氏のように父親が台湾人、母親が日本人、日本で生まれ育ったようなケースを「二重国籍だ。日本人じゃないじゃないか。嘘つきじゃないか」と断罪することは現状を正しく認識できていません。

二重国籍であっても、日本国内にいる限り日本国籍保持者としての権利のみを行使し、日本国内で中華民国国籍保持者としての権利を行使しないのであれば、二重国籍であることが問題となることはありません。

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古谷有希子

ジョージメイソン大学社会学研究科 博士課程。東京大学社会科学研究所 客員研究員。大学院修了後、ビジネスコーチとして日本でマネジメントコンサルティングに従事したのち、渡米。公共政策大学院、シンクタンクでのインターンなどを経て、現在は日本・アメリカで高校生・若者の就職問題の研究に従事する傍ら、NPOへのアドバイザリーも行う。社会政策、教育政策、教育のグローバリゼーションを専門とする。

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