仲の良いサークル仲間からストーカー扱い
ある社会人の文化系サークル(仮に映画サークルということにしておく)にA子(女、20代後半)が現れたのは、一昨年の春。飲み会に参加したことがきっかけで、サークルの会合に顔を出すようになった。小柄で、綺麗というよりは可愛らしい童顔。映画にはちっとも詳しくなかったが、人懐っこい性格もあって、すぐに打ち解けるようになったという。
B(男、20代後半)が、A子と仲良くなったのは、彼女がサークルに入った直後のことだ。帰宅する方向が一緒だったため、電車の中であれこれ話すようになり、LINEを交換してからは、オススメの映画をA子に教えるなど、頻繁に連絡を取り合う仲に発展していった。
「A子は勧めた映画を観たら、すぐに感想を送ってくれるし、僕が『仕事疲れたー』とツイートしたのを見て、『大丈夫? 仕事お疲れ様!』とLINEをくれたりもした。映画を一緒に観にいったことも2度あり、いつ告白しようかと真剣に考えていました」とBは振り返る。
しかし、事態が急変したのはA子がサークルに現れて半年ほど経ったころ。Bの元に同じサークルのC(男、30代前半)から連絡があり、「A子が迷惑しているから、もう連絡しないでくれ」と言われたのだ。訳が分からず理由を聞いてみると、「Bから何度断ってもデートの誘いがあって困っている。このままでは、サークルに行きづらくなるからどうにかしてほしい」と相談されたという。彼女は「サークルの帰りに付きまとわれている」とも訴えているのだとか。
突然のストーカー扱いにBは納得いかずにA子を問いただしてみると、ストーカーなのはむしろCであり、一度だけ一緒に映画を観にいっただけで彼氏のように振舞われてしまい困っている、とのことだった。ちなみに、Cにはサークル内で付き合っている彼女がいた。
Bは、すぐさまCと仲が良いD(男、30代前半)に相談することにした。このままでは、A子がサークル内のトラブルに巻き込まれてしまうと危惧したのである。しかし、Dから返ってきた答えは、「A子とは、2カ月前から付き合っている」という衝撃的なものだった。
不信感を募らせたBは、A子ともサークルとも距離を取るようになった。後から聞いた話では、A子はCやDを含むサークルの男たちと色恋沙汰を起こしていた。そのうちの何人かとは、肉体関係があった。その後、サークルの活動は低調となってしまったという。
深入りする前に気がついてよかった、とBは思う。しかし、なぜか消去できずにいるA子とのLINEを見て、つくづく思うのだった。「あのA子が、本当にそんなことをしたのだろうか」と。出会ったばかりのころ、A子から送られてきたLINEにはこう書かれている。
「会社に友達が少ないから楽しい。映画のこと勉強して、もっとみんなと仲良くなりたい!」
彼女の真意を確かめる勇気は、Bにはない。