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読書会に理屈っぽい男は邪魔? 女性の連帯を強める読書会の歴史を探る

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『ジェイン・オースティンの読書会』(ちくま文庫)

『ジェイン・オースティンの読書会』(ちくま文庫)

 今回のテーマは読書会です。皆さんは読書会に参加されたことはおありですか? 私は研究者なので本を読む会合にはよく行きますが、全く出たことがないという方もいらっしゃると思います。3月にmessyに掲載された福島淳による記事「エマ・ワトソンのフェミニスト・ブッククラブへようこそ! 広がりを見せるフェミニズムを語る熱い波」では、スターのエマ・ワトソンが読書サイト「Goodreads」でフェミニズム関係の本を推薦し、皆で意見交換するオンラインブッククラブが紹介されていました。今、英語圏ではこのように女性が女性向けに本をすすめたり、特定の本を皆で読んで議論したりする読書会が人気です。読書会と女性について、アメリカを中心に少し歴史を絡めながら紹介をしていきたいと思います。

女だけのクラブ

「男性は読書会なんてしないわ」

 上の文句はカレン・ジョイ・ファウラー『ジェイン・オースティンの読書会』で、登場人物のひとりバーナデットが言う台詞です(p. 10)。この小説は19世紀初めの英国の小説家、ジェイン・オースティンの全作品6編を読破する読書会の様子に、参加者の人生模様を絡めた物語です。2007年には映画化もされています。小説では、最初に読書会メンバーを女性だけにするかどうかでモメるところがあります。バーナデットの上の発言はずいぶん大げさで、読書会をやっている男性も実はたくさんいるのですが、北米では伝統的に読書会は女性が盛んにやるものという認識があるようです。

 バーナデットは読書会に男性を入れたくないと主張しており、以下のようにずいぶん手厳しい発言もします。

「男性が入ると、力関係がくずれてしまうわ。男性って、みんなで楽しく議論しないうえ、偉そうに一方的にしゃべるんですもの。自分の持ち時間なんか無視して、平気でいつまでもしゃべってるわ」(p. 10)

 この小説ではバーナデットの反対にもかかわらず、読書会には男性であるグリッグが参加することになり、メンバーであるジョスリンとの恋が始まるという展開になります。

 バーナデット同様、読書会その他のクラブ活動で、男性が決まった持ち時間を守らなかったり、偉そうな態度をとったりすることに不満を持っている女性は多いようです。アメリカ文学研究者の尾崎俊介はアメリカ人とペーパーバックを扱った著書『ホールデンの肖像』で、人気テレビタレントで長きにわたりお昼の女性向けトーク番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』のホストをつとめていたオプラ・ウィンフリーが自分のお気に入りの本を紹介するコーナー「オプラズ・ブッククラブ」を詳しく解説しています。尾崎はここで「こけおどしの教養をちらつかせ、小うるさい理屈をこねるような男性知識人がほとんど登場しないので(中略)心置きなく女性的な目線で自由に本のことを語り合える」(p. 237)ことがこのコーナーの人気の原因のひとつだと分析しています。もちろん理屈っぽい批評をする人は女性にもいますし(私ですね)、また理屈っぽい批評が嫌いな男性読者も山ほどいるはずです。しかしながら女性の前でやたら威張りたがる男性に対して経験から警戒心を持っている女性は多いので、女性だけで本を読みたいという人もいるのでしょう。

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北村紗衣

北海道士別市出身。東京大学で学士号・修士号取得後、キングズ・カレッジ・ロンドンでPhDを取得。武蔵大学人文学部英語英米文化学科専任講師。専門はシェイクスピア・舞台芸術史・フェミニスト批評。

twitter:@Cristoforou

ブログ:Commentarius Saevus

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