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「あくせくとした女子は公害だよ」。激務の広告業界を舞台に働く女性の希望あるいは絶望を描いた『サプリ』

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おかざき真里

おかざき真里「サプリ」1巻

 電通の社員だった高橋まつりさん(当時24)の自死が、先月30日、労災と認定された。去年4月に新入社員として電通に入社した高橋さんは、去年12月に亡くなった。自殺原因は長時間労働による過労であるとして、東京都の三田労働基準監督署が労災と認定した。遺族と代理人弁護士が7日、記者会見して明らかにしたものである。

 このことが報じられるや、亡くなった高橋さんのTwitterアカウントに残された投稿が拡散され、広く話題になった。22時退社を「早い」と感じ、朝の4時、5時まで勤務することが常態化しているほどの長時間労働や、社内での「女子力査定」に削られる様子など、正常な判断力を失うほど疲弊する残酷な経緯が見える。

 確かに異常な働き方といえる。広告業界での事件ときいて、おかざき真里さんのマンガ『サプリ』(祥伝社/全10巻)を思い出した。

 大手広告代理店を舞台に、制作部で働く27歳の独身女性(主人公。作品中では29歳までが描かれる)、一般職採用の女性、フリーのコピーライターで同社に出入りする女性、営業部のやり手女性(既婚)、そして彼女たちを取り巻く男性社員やクリエイターなど多彩な登場人物の群像劇。ジャンル分けするならば、お仕事マンガであり恋愛マンガでもある(2006年にはフジテレビ月9枠でドラマ化もされたが、原作とはかなり異なるストーリーに仕上がっていた)。

 あくまでもマンガ作品であるが、おかざき真里さんは博報堂の制作局でCMプランナーをしていた経歴を持つ漫画家である。それゆえ『サプリ』の舞台である大手広告代理店の社員たちの働き方、業務の流れなど、まったく畑違いの仕事をする読者にも非常にわかりやすく描かれている。だから「お仕事マンガ」でもあるのだ。

 主人公である藤井ミナミは、仕事にやりがいを感じて楽しんでいる。責任ある業務を担当することも増えてきた。現場は深夜(というか朝)まで続くことも、土日に会議をすることも、当たり前に行われている。椅子を3つ並べてそのうえに横たわり仮眠をとるシーンも多い。朝まで社内で会議をしてから引き続きプレゼン準備、別件打ち合わせに出るなど、一日の境目が曖昧。夜8時頃にいったん会社から出てスパで汗を流し夕食をとってから、会社に戻って朝まで仕事。朝5時に撮影を終えて合間に企画準備をして午前10時から次の打ち合わせ。金曜開催のプレゼンでクライアントに微妙な顔をされ再提出を求められたら、チームは「んじゃーとりあえず土曜集まるかー」「とりあえずとりあえず」。常にオーバーワーク気味である。

 代理店制作部の彼女の仕事は、クライアントとクリエイターをつなぐ仲介者であり、クライアントのワガママをすべて通せば現場が混乱するし、クリエイターがつくりたいモノをつくればクライアントは激怒するし、という中で機転をきかせて乗り切ることが最大の難関であり成長ポイント。「あちらの意見とこちらの意志を汲みつつたてつつ」「言葉をえらびつつ」調整する。クライアントから理不尽に怒鳴られ、怯みながらも、誠実かつ狡猾に場をとりなしていくミナミの姿は、読んでいてつらくなることさえある。当然、誰でもできる働き方ではないし、心身とも相当タフでなければ居られない場所だと思う。美しくて既婚者で人望もあり余裕で仕事をこなしているように見える30代の営業部社員・田中ミズホも、最初から完璧だったわけではないだろう。

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ヒポポ照子

東京で働くお母さんのひとり。大きなカバを見るのが好きです。

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