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若さが光る新生『CUTiE』と90年代の亡霊に憑りつかれた高齢女子の影

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困り顔ガーリー。(『CUTiE 2013年11月号』宝島社)

 前回はギャル雑誌だったはずの『Popteen』(角川春樹事務所)がいつの間にか清楚系ガーリーなファッションを推していて驚いたゼ……というお話でしたが、ガーリーと言えば『CUTiE』(宝島社)の変革も、長くこの雑誌を読まれていた方にとっては驚きだったようです。

 「日常のお洋服感ゼロ」、仮装パーティーにでも出られるのですか? と問いたくなるワンピースを着用したAKB48小嶋陽菜さんがじっとカメラを見つめている今月(11月号)の表紙には「ちょっぴり大人にリニューアル」と書かれています。元々はストリート色の強い原宿・裏原系のファッションを推していた『CUTiE』のこの転身は「ちょっぴり大人にリニューアル」どころか、まるで別の雑誌のよう。

 『CUTiE』による強いガーリー推しは、9月号から3号連続で続いているのですが、ここには同じ宝島社発行で「モテ♥ボーイッシュ」を標榜するファッション雑誌『mini』との差別化をより明確化するという意図も感じられるところでしょう(『mini』もまた、ストリート色の強い雑誌でした。なお、『mini』11月号の表紙は、長澤まさみ。Vネックのニットからのぞかせるデコルテが健康的で素敵……!)。

 しかしながら、今回『CUTiE』を参照して、単なるブランディング戦略の変更以上に私が驚いたことは、その漲る若さでした。誌面に登場するモデル、女優、タレントさんたちはほぼ全員が90年代生誕。みなさん当然のように平成生まれであり、昭和末期に生まれたアラサー男子としても、昭和は遠くになりにけり……と急速に老け込んだ感覚に陥ってしまいました。

カワイイは正義だね

 誌面を見ていきましょう。地下アイドルシーンから近年目覚ましい勢いでメジャー化しつつあるアイドルグループ・でんぱ組.incのメンバーと、『CUTiE』読モが語る「女子が可愛いと思う女の子ランキング」は、小嶋陽菜、北川景子、ローラ……というラインナップ。これでは単なる「テレビで人気の女性芸能人ランキング」に見えてしまうものの、その次のページに掲載された「勝手に推します!! ネクスト可愛い女子はこの子!!」特集は、可愛い女子のドラフト会議のような素晴らしい記事です。なかでも佐野ひなこさん(1994年生)という方を私は初めて知ったのですが、マジで天使かと思いました。

 こうして90年代生まれの女子たちがキラッキラにガーリーな可愛さをスパークさせているのを眺めていると、「恋より楽しいことがある」のコンセプトがダダ滑りな印象のある雑誌『ROLa』(新潮社)が、2号目となる11月号で「『90年代』って女子カルチャー♡」特集を組んで90年代を懐古している様子とつい比較したくなりました。「文化系女子」という言葉で括られる女性たちの高齢化がそこに示されていることを、感じずにはいられなかったのです。

 今回、ようやくこの雑誌のターゲットである「ローラ世代」が、70年代末から80年代、つまり昭和末期生まれ(私と同世代)の女性であることがわかりましたが、90年代の少女マンガや、ドラマ、音楽をただひたすら「あ~、あんなものあったよね」、「懐かしいわ~」と並べるだけの特集内容は「で、なんで今『90年代』なんですか?」と問うても答えが返ってこない感じであり、私と同世代の女性が集って卒業アルバムを眺めて、キャッキャッしているのを遠巻きに眺めているかのようなお寒い読後感しかありません。

 誌面では安達祐実と中山エミリが子役時代のドラマ撮影秘話を語っている記事(安達祐実が伝説の拳法の伝承者を演じたアクションドラマ『聖龍伝説』撮影時、肋骨を折ったまま撮影していたとか……)や、小室哲哉による「90年代と僕」(98年にTKがR&Bやブラック・ミュージックに挑戦しようとして挫折していたことを誰が覚えているだろうか……)など、面白く読んでしまった記事もありましたが、これが面白く読めてしまうことで、私も過去を懐かしんでしまう立派なオジサン/オバサンなのか、と意識させられます。

 「『90年代』って女子カルチャー♡」と若ぶれば若ぶるほど、どんどん年寄りじみていく物悲しさ……というか。「ローラ世代」が懐古する90年代に生まれたリアル女子たちのガーリーなカルチャーには、どこにも90年代と通ずるものがないのに、必死で「女子」ぶっているところも痛々しい……。

 そもそも、過去に目を向けて今を生きてないのではないか、と思わせる後ろ向き加減も気になるところです。まだ、若作りやアンチエイジングに取り組んでいる「オトナ女子」、あるいはアラサーだから婚活しなければ、いや、ワタシたちには時間がない、授かり婚だ! と喚いている女性たちのほうが元気に見えます。「ローラ世代」の文化系女子たちが「恋より楽しいことがある」と言いながら、昔を懐かしんでいるだけというのは、つまりは現実逃避であり、ちょっと元気がなさすぎて心配です。リアル女子たちのフレッシュな陽光を避け、肉食系オトナ女子たちにも交われず、日陰で暮らすしかない文化系女子たちの生態は、なにか新たな女子界のカーストを覗いてしまうようでした。

 ■カエターノ・武野・コインブラ /80年代生まれ。福島県出身。日本のインターネット黎明期より日記サイト・ブログを運営し、とくに有名になることなく、現職(営業系)。本業では、自社商品の販売促進や販売データ分析に従事している。

カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra

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