ならば、いっそ新規のファンのために月9らしからぬ話を続ければ良かったのだが、ここにきて恋愛展開が加速。我慢して見続けていた月9ファンには“朗報”となっているようだがこれは、恋愛いらない派の新規ファンにはもちろん“悲報”。コンセプトブレブレのストーリーがここにきてモロに影響を及ぼし始めているといえるだろう。
つまり『カインとアベル』は完全にターゲット不在のドラマとなってしまっている。強いて言うなら山田ファンだけがターゲットといったところだろう。元々『カインとアベル』は、企画の段階からストーリーや配役決定で二転三転あり、この迷走ぶりはそれを裏付ける結果ともなっている。そしてこの迷走を許した原因は、全体として低視聴率に苦しむフジテレビの体質にあるだろう。
亀山千広社長は定例会見を開くたびに視聴率について苦言を呈してきた。前クールの月9『好きな人がいること』には「多少は無茶な演出があってもいいと思う」と注文までつけたが、その結果なのか、「水族館侵入」「高速愛媛湘南移動」「副音声にドラマキャストが出演」など、無茶な演出はあったが、それが視聴率に繋がったどうかというと……。ただ、『好きこと』ではティーン向け恋愛ドラマの方向性が定まったかのように思えただけに、あさっての方向に舵を切った『カイン~』は残念でならない。
10月28日の定例会見では低迷する月9ドラマに対して「(撤退は)微塵も考えていない」と強気姿勢でいた亀山社長。視聴率視聴率と追い立てられるドラマ班はたまったものじゃないだろう。落ち着いてじっくり制作に取り組める環境なしに、目先の視聴率だけを見て「無茶」な演出を求められる現場は、どれだけ疲弊していることだろうか。撤退しないまでも、余裕を持って制作可能な環境を整えるため、一クール休止くらいは検討しても良さそうなものかもしれない。スタッフも、役者にとっても、現状は地獄でしかないのではないだろうか。
(ゼップ)
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