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「男は浮気するしょーもない生き物、女性は寛大に」という、放送作家のあまりに勝手な言い分

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 さすがに文章がオモシロイ。著者のすずきB氏は、引く手あまたの放送作家。『ヒルナンデス』『秘密のケンミンSHOW』(いずれも日テレ)など、彼の手がける番組を見たことがある人は少なくないだろう。

 まずタイトルからして意味深だ。『浮気とは「午前4時の赤信号」である。ー幸せな結婚と恋愛のリアル法則ー』(ワニブックス)。これは、妻から「なんで浮気するの?」と訊かれたときの彼の弁で、要約すると、交通量の少ない、未明の道路を車で走っていて、赤信号にさしかかる。いくらほかに車がいなくても、信号無視は交通違反だ。理性的に考えれば、答えは出ている。「でも、イケるんじゃないか」「バレないんだし」と思ってしまうオトコの心理……「魔が差すんだ」の一言で済む話を、こうもウマく喩えられると、つい「なるほど」と納得してしまいそうだ。

 同書は、男の男による男のための「浮気本」であり、しかしその読者対象は女性である。婚活で苦戦するアラサー&アラフォー女性や、夫の浮気をなんとかしたいと思っている既婚女性、妻子ある男性と不倫中の女性に対して「男という生き物」を伝授してくれる。

 売れっ子作家らしく、ベッキーを筆頭とした昨今の不倫ゴシップネタや、芸能人と個人的交流があるがゆえに知っている結婚秘話(松本伊代&ヒロミ夫妻や、故・川島なお美&鎧塚俊彦夫妻など)をたびたびさし挟み、華やかかつエンタメ度の高い読み物となっている。

 が、読み物としてのオモシロさと、その内容にうなずけるかどうかは別の問題である。著者は冒頭で、同書を「飼い方マニュアル」と言い表す。男という、いくら痛い目にあっても浮気をしてしまうしょーもない犬のような生き物の飼い方を女性に教えましょう、というわけである。

 全篇にわたって巧みな比喩表現を駆使する著者だが、この男のしょーもなさもいろいろなものに喩えられる。あるときは犬で、またあるときは「新種の動物」「マヌケな長男」。浮気を「男の永遠のテーマ」だといい、別の下りでは「病気」という。表現こそバラエティに富んでいるが、言いたいことは「男ってバカでどうしようもないんです、スミマセーン、だから女性は夫や彼氏の浮気を許してちょ」「浮気相手になる女性たちも目くじら立てず、こんな浮気おじさんと遊んでちょ」に尽きる。

強固な結婚至上主義

 男をサゲて見せながらその行為(浮気)を正当化し、女性の寛容を促すために238ページが費やされるといっても過言ではない。浮気しない男性に対しても、「男は浮気する生き物。でも浮気せずにいてくれてありがとう」と思うべし、とされるのだから、その勝手な言い分に筆者はしばし開いた口がふさがらなかった。

 先ほど「~ちょ」という、昭和チックな言い回しをしてしまったが、それがしっくりくるくらい著者の感覚は古臭く、「理想の結婚は、離婚しない結婚」と言い切る。自身でも「古臭い人間である」といい、その背景に母親の影響があることを明言しているが、先にそう宣言しておけば何をいってもいいわけではない。婚姻関係を円満に継続できるカップルはすてきだが、「離婚は、理想の結婚からはずれる」とするのは、3組に1組が離婚する日本の現状にそぐわない。

 著者も「離婚したほうが幸せになるケースもある」とエクスキューズを入れるが、この「離婚よくない」という考えは強固なようで、別項ではたいへんな経済力のある男性と離婚した女性を、「(夫の浮気を許せれば)大富豪の妻のままでいられたのに」と評する。その女性は、夫の浮気を未然に防ぐべく敏感になりすぎたために、窮屈に感じた夫がかえって浮気に走ってしまった……それが離婚の原因なのだという。つまり、夫が浮気をしたのは妻の不寛容ゆえであり、浮気を許せず裕福な暮らしを捨てた妻は賢明ではないという論だ。その女性に「裕福な妻であること」以上に大事なものがあるとは考えられないのだろうか。

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