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「今が一番面白い」。40代の自己肯定、自分の本音を自分に尋ねてやる大切な作業を続けていく

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ナガコ再始動

ナガコ再始動

 日本の女性の平均寿命は83.7歳。現在42歳の当方はちょうど折り返し地点に達したところである。孔子の言行録『論語』によると、「吾十有五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知る」とのことで、40代を「不惑の年」と解釈する言説をよく耳にする。が、孔子の学問人生にとっての40代が不惑だっただけで、時代も国も平均寿命も異なる現在の日本人の40代の中には、「実際のところ、まだまだ、惑う」と捉える方々が多いとお見受けする。

 特に女性の年齢を未だ市場原理で語りがちな日本では、アンチエイジングの流行や加齢蔑視のエイジズム、女性自らによる加齢悲観等、「若さ信仰」と「加齢への怯え」が蔓延していると感じる。女性のみならず、男性も、体力低下や体調不良等、若い頃同様に活動できない「衰え」に直面し、戸惑う方もいるだろう。更年期障害や自律神経失調によるメンタル不調も誘発される中年期ゆえ、悩みを抱えやすいお年頃であることは事実である。

 当方も心身不調に陥る機会が圧倒的に増えた。が、仕事の充実という意味では、40代の今が最もエキサイティングかつチャレンジングで「面白い」。10代の頃より大好きだった音楽・映像文化の現場に飛び込んだ20代。フリーランスの映像ライターとして独立した以降は、執筆やイベント等の活動を通じて最愛の文化を支援し続けた。その積み重ねが功を奏し、ある程度の社会的実行力を発揮できるようになった。30代後半からは、映像とは異なる女事・自分事コラムの執筆を開始し、新しい挑戦やステップアップの機会も格段に増えた。

 現在の自分が立つ場所は、ささやかながらも揺るぎない実績のうえに成り立つ。過去のトライアルの数々は、現在の自分になるために先だって用意されていた布石だったのではないかとさえ思う。布石を打つ瞬間は、それが布石であると考える間もなく、今の自分がクリアしなければならない課題を懸命に、後先を考えずに打破するばかりだった。そんな過去の「今」が、現在の私を形成してくれている。よくがんばってくれた、ありがとうと、過去の私に謝辞を述べたい。

 もっとも、キャリアを積むと同時に責任も増す。乗り越えなければならないハードルが高くなる分だけ、プレッシャーに負けそうになる。迷いも生じる。しかし「惑い」の要素が、挑戦しているからこそ生じる摩擦であるならば、大歓迎してやれと、ポジティブに受容できる今の自分が「面白い」。

肉体は絶不調

 ただし、「惑い」の種が病気やメンタル不調である場合、歓迎するわけにはいかない。いくら仕事に意欲を燃やしても、全力を出し切れないうえに、関係者に迷惑や負担をかけてしまう懸念もある。

 当方は入院を必要とするような病気には罹っていないが、このところ不調が続いている。もとより体力が壊滅的になく、20代後半より過換気症候群を患った以降は、過度なストレスを受けると呼吸が乱れる。これまで発作の頻度は、1年に1度くらいだったが、今夏は3度も倒れてしまった。原因は、猛暑による夏バテやPMS(月経前症候群)、年々重くなる生理痛、運動不足、生活習慣、そして加齢による代謝の低下等、複合的だ。

 あまりにも暑い日。寒い日。天気や気温がダイレクトに心身の調子を左右する状況を前に、年齢を感じる。昔はお年を召した方々が「暑い、寒いが体に堪える」と仰る意味がまるで分からなかったが、当方もついにその域に達したようだ。

 この迷惑な症状に対し、当方は基本姿勢として「だからどうした」と鷹揚に構えるよう心がけている。人間はナマモノなので、傷みもすれば衰えもする。そのような当たり前の初期設定に対し、惑ったところで前提は覆らない。発作が起きたら、とっとと点滴してもらう。つらければ、寝たいだけ寝る。不調を隠さず、治るまで休む。

 こうした対処ができるのは、私が独身のフリーランスだからであり、家族がいる方や会社勤めの方々はそうゆっくり寝てもいられないとは思う。が、元々、自分の体力や気力を過信して仕事に打ち込んだ結果、発生した症状が過換気だったため、関係者に迷惑をかけないためにも自分のペースを守るワークスタイルを選択している。

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林永子

1974年、東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業後、映像制作会社に勤務。日本のMV監督の上映展プロデュースを経て、MVライターとして独立。以降、サロンイベント『スナック永子』主宰、映像作品の上映展、執筆、ストリーミングサイトの設立等を手がける。現在はコラムニストとしても活動中。初エッセイ集『女の解体 Nagako’s self contradiction』(サイゾー)を2016年3月に上梓。

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女の解体 nagako's self contradiction 愛と欲望の雑談 (コーヒーと一冊)