白砂糖に食品添加物、遺伝子組換え食品、グルテン糖質脂質etc……。巷では、さまざまな食品や栄養素が激しくディスられていますが、そのひとつに〈牛乳有害説(別名アンチミルク)〉というものが存在します。
特定の食品の健康への影響を過大評価する〈フードファディズム〉は、その食品に含まれる某成分により体がこんなふうになりますよ、と語られるのが一般的ですが、そのポイントにおける牛乳有害説は異質な印象です。それは「牛乳は仔牛ための飲み物であり、人が飲むのは自然の摂理に反する」という主張があるからです。動物愛護と有害化学物質の話が入り交ざり、ただでさえ極論詭弁という印象の食品叩きが、ますます理解しがたいものに……。
現在発売されている牛乳関連の書籍をざっと見渡すと、牛乳叩きが大好きなのは、自称キチガイ医の内海聡氏や、自然派小児科医の真弓定夫氏が筆頭。そのほか、〈健康ジャーナリスト〉などによって、牛乳はアレルギー、骨粗しょう症、乳がんの原因であったり、不自然な成長促進剤である! と謳われています。
これらの元ネタはアメリカの医師、フランク・オスキーの書いた『なぜ「牛乳」は体に悪いのか』(東洋経済新報社 ※翻訳版)。しかしどのお説も極端な事例やデータを恣意的に扱っているだけで、「科学的根拠がある」と言えるようなものはないことは、すでに数多く指摘されているよう。
ところがそれでも「学校給食から牛乳をなくせ!」という要望が今や珍しくないほど、牛乳ヘイトは根強い印象です。この背景にある心理をひもとくため、酪農・乳業&販売業者の業界団体である〈Jミルク〉にお話を伺ってみましょう。陰謀論がお好きな方々にとっては悪のど真ん中(笑)だけど!
アンチミルクは19世紀にスタート
ーーまずは〈牛乳有害説〉が生まれたきっかけなどはあるのでしょうか?
Jミルク:牛乳批判のベースにあるのは、西洋医学や近代栄養学に対する、思想的な反発です。牛乳は1800年代前半くらいから急に飲まれるようになった食品で、その時期というのは栄養学や医学が発展した時期でもあり、「食べ物を通して体をコントロールしよう」という科学的な思想が現れたのです。そのタイミングで、新しい食品である牛乳が手軽に栄養がとれるものとしてすごく評価されたことから、新しい考え方の象徴=牛乳となりました。そのような流れから、近代栄養学や西洋医学を否定する気持ちが、牛乳批判へとストレートに結びつく傾向があります。これは日本だけでなく、世界共通の現象でしょう。
ーー牛乳有害説を支持する人は、〈自然派〉にも多いという印象です。精製された砂糖を嫌いメープルシロップやデーツを愛用し、化学繊維よりはコットンやウールなどの天然素材、それがオーガニックならなおよし! そして牛乳は〈不自然〉だからNGである、という。