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自然分娩・母乳育児礼賛も一刀両断な『ママ・マリア』における蜷川実花の芸能記者っぷり

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MAMA MARIA

訴訟はどうなりました?『MAMA MARIA』(光文社)

 フォトグラファーであり映画監督としても活躍する蜷川実花責任編集のムック本『ママ・マリア(MAMA MARIA)』(光文社)が9月末に発売された。アマゾンの商品紹介には『働くママへ! こんなママMOOKが読みたかった! 写真家・映画監督である蜷川実花が責任編集・全部撮影を果たした、今までにない、全く新しいママMOOKが誕生しました。』とある。

 表紙に名前のある有名人は、土屋アンナ、吉川ひなの、紗栄子、益若つばさ……働きながら子育てもしているママタレがずらり。他のママ雑誌ではあまり見ない顔ぶれである。子育てのノウハウに完全特化した『ひよこクラブ』(ベネッセコーポレーション)とも、お洒落なママを目指しすぎてかえって痛々しい『nina’s』(祥伝社)とも違うようだ。早速チェックしてみた。

ママ達のネガティブ感情もうまく聞き出す蜷川実花

 ママタレの顔ぶれから、“子育てもやりながら仕事もバリバリこなすスーパーワーキングマザーの生き様が溢れ出ている強気なムック”を想像していた。育児と仕事の両立のために必死こいているような、読んでいるだけで疲れて尿酸値も上がってしまう、そんなものを……と。ところが、冒頭にある蜷川のメッセージは「はっきり言って、どんなキラキラして見える人も悩んでます。素敵ママ代表のあの人もこの人もみんな悩んでます、みんな大変です、みんなボロボロです、もちろん私も」といきなりの“子育て大変宣言”。続く有名人たちのファッションフォト&インタビューも、子育て中に発生したネガティブな感情について隠す事なく語られている。

 土屋アンナのインタビューでは、最初の夫であるジョシュアが結婚2年目で亡くなった時期のことも「正直、辛かったよ。だから友達を呼んだり、いつも大所帯でいたかった。居酒屋とかでみんなでワイワイしていたほうが、気持ちもまぎれて私も泣かないでいられる。寂しく2人きりの食卓よりよっぽどいい」と語られている。土屋はかつて『夕食は毎晩子連れで居酒屋』など子育てぶりが破天荒だとして報じられた事もあるが、そのときの心境はこんな重いものだったのか。また、「男3人だけだと食べたいラーメンやカレーのみで終わっちゃうでしょ。そこにサラダも添えたいって部分はこっちもケアしないとね」など、馴染みの定食屋の女将のような、基本ガサツだけどたまに黙って一品多くしてくれてたりする、みたいな、サラッと健康を気遣うママとしての顔が覗いて、普段の勝ち気で男前なイメージとのギャップに思わずキュン。スナップに写る次男のふくらはぎに絆創膏が貼ってあるのもワンパクぶりが出ていて良い。女性が出産後も仕事を続ける事については「サポートしてくれる環境があるなら続けた方がいい」という姿勢を示した上で「旦那に頼るしか生きるすべがないっていう状態だと、もしもの時に困るじゃない?」と語っていたが、この言葉は夫を亡くした経験をしている土屋が語るとすさまじい説得力を持つ。

 続く吉川ひなののインタビューでは、「初めて仕事のない生活を経験してこれはマズイって思った」と子育て中の母親が抱きがちな焦りを彼女も感じていたことを告白。SHIHOは、「もう、全然恋人じゃない。どうしたらいい?(笑)」と、子育てによって夫が“恋人”から“家族”になってしまう、これまた子供を産んだ夫婦にありがちな悩みを蜷川に吐露している。蜷川は友達感覚、かつ先輩感覚でこういったネガティブな話題も聞き出しており、益若つばさには、最近のツイッターでの度重となる炎上騒動にまで水を向けている。そこらの芸能記者より良い仕事してる! しかも益若も「私、そういうところで何か言われても、基本スルーしてます。(略)いちいち、つっこんでくれてありがとう、もしかして私の事好きなのかな、って(笑)」と笑いで返しており、意外にもメンタルが強いことが判明。

 佐田真由美は「他人が羨ましくて。『いいね、みんな働けて』って卑屈になった自分が怖かった。もうその状態には戻りたくない!って思ったよ」と、これまた育休時代の鬱々とした気持ちをサラッと語っていたが、筆者も育休中まったく同じことを思っていたので大いに共感。

 最近再婚を発表した漫画家・東村アキコによる『がむしゃらーズ・ハイ日記』と題された子育て漫画も掲載。あれっ……「ママはテンパリスト」(集英社)最終巻で、ごっちゃん(息子)が小学生になるタイミングでもう育児漫画はやめる、って言ってたような……? そんな疑問もよぎるが、赤ちゃん時代の子育てと仕事の両立の大変さを取り上げ、「あの頃は本当に大変だった。毎日毎日次から次へとトラブル続きでこの私もノイローゼ寸前…」と、スーパーワーママである東村さえも精神的にいっぱいいっぱいだったことも分かってなんだか嬉しくなる。

 “銭ゲバ”イメージ定着中の紗栄子は、キメ顔なのか、どの写真でもアヒル口をしていたのが気になったが、対談ページで肌のケアについて蜷川に聞かれ「それはもう、必死ですから(笑)」と、たゆまぬ努力をしていることを隠さずに告白。学生時代、テストの日に「全然勉強してきてない〜」となぜか無駄な牽制をする女子たちにウンザリしていた筆者は、努力をしているのにしていないフリをする発言が大嫌いだが、この発言で紗栄子がうっかり好きになってしまいそうになった。

 作家・川上未映子との対談もなかなかの読み応え。端から見ると子供を産んでも活躍し続けている川上が「子育てをすることで、これまでその時間にできていたことは永遠に出来ないわけです。本当の意味での『両立』はありえない」と、もはや悟りの境地に? と思わせるほどの達観した発言を繰り出し、蜷川は「例えば川上さんを見ていると、子供を産んで、小説も書いて、雑誌に出てくればきれいにして、なにも捨ててないし、あきらめていないように見える」と、これまた読者が抱く疑問をストレートにぶつける。

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ブログウォッチャー京子

1970年代生まれのライター。2年前に男児を出産。日課はインスタウォッチ。子供を寝かしつけながらうっかり自分も寝落ちしてしまうため、いつも明け方に目覚めて原稿を書いています。

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