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病気を理解せず、通院を妨害する母から浴びせられる暴言に、心が砕け散る

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大和彩

病気なりに、健康に暮らす。

 婦人科でエコーとMRIを受けて「子宮内膜症疑い」と診断がついた夢子だったけど、悩みでいっぱいだったの。

 まず地元の病院がすんなり1相性のピルを処方してくれなかったでしょう? たかだか1相性のピルを手に入れるためだけに、受診のたびにあれほど時間をかけて押し問答をくり返すのはごめんだと夢子は思ったの。

(手に入れられたのは1シートのみ……。この手持ちのピルが尽きる前に、他の病院に転院するしかないかなぁ)

 夢子は憂鬱だったわ。転院のための紹介状をもらうことを考えると、いくらツラの皮が厚い夢子であっても気が重かったし、近場にはそもそもほかに病院が存在しなかったのよね。二番目に近い総合病院は隣の県にあったし。

 夢子にはもうひとつ悩みの種があったの。お母さまのことよ。夢子がMRIを受ける少し前のことよ。お母さまは夢子に尋ねられたの。

「アンタ最近よく出かけるけど、どこに行ってんの?」

 これまで夢子はお母さまには何も知らせずに受診していたの。むしろ誰に知られようとも、お母さまにだけは一部始終を伏せておきたかったの。婦人科を受診するなんて伝えたらどうなるか、夢子には予想がついたんだもの。お母さまは、こういうに決まってる。

「アンタッ!! 中絶しに行くんだねッ!?

 夢子にそんなことにつき合っている余裕はなかったの。健康保険料も病院の受診料も自分で払っていたし、これまでお母さまには何も知られずに済んでいたわ。だけどその日は、MRIの件くらいならお母さまに伝えても大丈夫だろうと、答えちゃったのよね。

「あー、病院でMRIとかやるようにいわれた」

検査料を払っているのは私なのに

 夢子は答えたことを即座に後悔したわ。お母さまがいきなり金切り声を上げたからよ。

「MRIですって? なんでMRIなんか受けるのよ! MRIは医者にいわれれば受けてもいいけど、自分で受けようとするとものすごく高いのよ!」

「へ? いや、自分で受けようとしてるんじゃなくて、センセイにMRIやりなさいっていわれたからやるだけだよ

……そこ? 気になるのはそこなの? 検査料払ってるのは私なのに?)

 夢子にはとんちんかんなお母さまの言葉がなんだか薄気味悪かったわ。夢子が説明してもお母さまはますます興奮するばかりだったの。

「MRIは自分で受けようとするとものすごく高いのよ! なんでMRIなんか受けようとするの!」

 お母さまは壊れたプレーヤーのように、先ほどとまったく同じ言葉をくり返したわ。これは日本語が通じていない。ならば、と夢子はこういってみたの。

“The doctor told me to get an MRI.”

 だけど返ってきたのは同じ言葉のくり返し。「MRIなんか受けるんじゃないのッ! 自分で受けようとするとものすごく高いのよ!」ーー何語で話そうと、変わらない。とにかく言葉が届かない。夢子は絶望的な気持ちになったの。

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