元夫のことは今でも信用してる
――上のお嬢さんはどうですか?
神田 もう1年半くらい前から大阪でパートナーの男性と同棲してますね。今の同棲相手は別れた夫にも会わせていて、夏に元夫の還暦祝いがあったんですけど、彼の今の奥さんと私と長女と長女の彼氏と次女という6人でお祝いしました。きっともう長女はその人と結婚するんだろうなとは思うんですけど。
――元夫との関係、途絶えてないんですね! しかもあちらは再婚なさっていて。もしかして『ゲスママ』も渡していたり?
神田 私は読ませないつもりだったんですけど、次女が「読め!」って言ったらしくて、元夫からLINEがきました。彼は読書家で格好つけなんですが、ローレンス・ブロックの『八百万の死にざま』というミステリ小説のハードボイルド探偵のセリフを引用して、<今、最高にくだらないことが起こった。俺は泣いていた>って書いてあったんですね。「え、なに?」って返したら、<今すごい本を読んで泣いてるんだ>って、『ゲスママ』を読んだと。私が「ごめんなさい、あんなこと書いてごめんなさい」と謝ったら、<いや、頑張りなさい。次はSMじゃなくてSFの本を書くように>って返事がありましたね。そのとき、許してくれたんだっていう思いでいっぱいでしたね。うれしかったですね。一番うれしかったなぁ。
――こういう形になったのに、元夫婦としても親子としても交流が途切れてない。
神田 そこだけしか私たちは夫婦として頑張れたことがなかった気がする。他はもう、わがままをぶつけちゃったんで。
――あちら側のわがままは何だったんですか?
神田 彼の中でのわがままは、一番はお母さん(姑)と対峙したくない、闘いたくない、だから君が我慢して、っていう。妻と母親(姑)に挟まれて、逃げちゃった。私とお母さんを常に戦わせて、自分は後ろのほうからホイミだけかけるって感じだったから、たまには戦闘してよ! みたいな。それが彼のわがままじゃないかな。あとのことは別に……お金を入れないわけじゃないし、酒癖は、ちょっとお酒にだらしないんですけど、そんなのはお互い様なんで、どうでもいいことで。お母さんに対して、「俺の嫁の言うことだから、そこは聞いてください」みたいなことは彼は言えなかったの。それが彼のわがまま、唯一のね。
――お姑さんは、つばきさんが嫁いでから、実の娘のように可愛がってくれたんじゃないんですか。
神田 お義母さんは、お義父さんと息子をいかに管理するかってことしか頭になかったんじゃないかな……私のことはその家を守るための「女兵士」みたいに見ていたと思います。私自身も最初、それに従って兵士やってたから、どんどん色気のない家庭になっていくのね。夫が帰宅するや、「今日の連絡!今からお母さんに聞いたことを伝えます!イチ~!えー、服のホコリを払ってからコタツに入ってください!よろしくお願いします!」みたいな。あと、同じ家に住んでるわけじゃないんですけど、うちの合鍵をお義母さんが持っていて、連絡なしにガチャッて入ってくるのもちょっと……いやでしたね。
――それは誰でもいやですよね。実親でもいやだと思います。
神田 でも義母もすごい人ですよ。男たちに稼がせた収入を全部没収して、うまく分配して、旦那に外に出して恥ずかしくないパリッとした格好をさせて、へそくりもキッチリする。いざという時はドーンとお金を出して、それでどんどん利権を勝ち得ていくっていう……もう、立派。立派のひとことしかない。
――お子さんたちにとってはおばあちゃんですけど、離婚後もそこの交流は?
神田 私を含め、しばらくは交流してましたね。子供たちは今も老人ホームに会いに行ってます。私は自分で会社を立ち上げると決めた時から会いにいかなくなりました。やっぱりお義母さんの頭の中では、それはダメなことなのね。女が会社をやるっていうのは。ちょっと自分が今、くじけたくないので、お母さんに会うと、またあの頃の洗脳が蘇るかもしれないから、会わないって決めました。そういえば、元夫が再婚した女性は同じ職場の人だったそうで、お義母さんから後で「あなたと別居したとき、もう二人の関係は始まってたと思うわ。あなたは腹が立たないの?」と言われたんですよね。私は全然そのことに腹が立ったこと一回もなくて、自分が自由に仕事したり恋愛したりしていいって言ってくれるんであれば、何でもよかったの。だからその通り「腹は立たないです」って言ったらお義母さんビックリしてましたけど。それは私のわがままですよね。「仕事したい」っていうのと、「恋愛も自由にしたい」っていう2つのわがままを通したので、私が一番頑張んなきゃいけないのはしょうがないなぁって思いました。
私、元夫のことを好きかって言ったら、喧嘩してる時はやぱり嫌いだったと思うんですけど、今でも信用してますね。男性で一番信用できる人は誰かって言ったら、現在のパートナーはもちろんですけども、同じくらい元夫のことも信用してます。愛してはいないですよ。全く別物。