かつて視聴率の帝王の異名を取った木村拓哉(40)の主演ドラマ『安堂ロイド A.I.knows LOVE?』(TBS系)が苦戦している。初回放送が19.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、第二話は15.2%、そして27日放送の第三話は13.2%と、早くも一桁目前の下げ幅を見せているのである。
視聴率がドラマのすべてではないが、木村拓哉にはそれを取ることが使命として課されているといっても過言ではない。なにしろ、過去の主演ドラマは平均視聴率30%に到達することも珍しくなく、00年放送の常盤貴子とのラブストーリー『ビューティフルライフ』(TBS系)は平均視聴率32.3%(最終回は41%超え)、01年の検事モノ『HERO』(フジテレビ系)は全話30%以上で平均34.3%。その後、徐々にキムタク神話に陰りが見え始めたと言われるようになっていったが、07年の『華麗なる一族』(TBS系)でも最終回は関西地区で39.3%の高視聴率を獲得していた。
そうした実績があるだけに、制作側も木村を主演に起用する際には、高視聴率を期待してきた。ここ数年はドラマ全体の低視聴率が目立ち、15%が合格ラインと言われるようになっていたが、今年は『半沢直樹』(TBS系)の大ヒットにより、『安堂ロイド』にも期待がかけられたのだ。しかし蓋を開けてみれば、思った以上に伸びないどころか、毎週、数ポイントずつ下がっていくばかり……。
一体、『安堂ロイド』の何がいけないのか? 木村拓哉だけが戦犯なのか? まずはネット上の意見をまとめ分析していこう。
●ストーリーが微妙?
脚本の西荻弓絵氏は、『ダブルキッチン』『スウィートホーム』(共にTBS系)といったホームコメディを大ヒットさせた経歴を持ちつつ、『ケイゾク』『SPEC』(同)も手掛けた幅広い才能の持ち主。『安堂ロイド』はどちらかと言えば後者寄りのような気もするが……。
「今さらターミネーターやられても、みんな知ってるし」
「シリアスなシーンもギャグっぽい」
「アニメでやれよ」
「どの層を狙って作ってんだ」
庵野秀明らを設定協力・絵コンテに迎えているが、実写ドラマということでかえってアダになったか。『半沢直樹』に夢中になった中高齢者がいまいちのめり込めない複雑なストーリーに、今後の展開では、アンドロイド(キムタク)と柴咲コウのラブストーリー要素が濃くなっていくようだが、勧善懲悪の“水戸黄門”形式が何よりウケるということは『半沢』が証明済み。バトル&ロマンスはむしろ超大作映画として制作した方が良かったかもしれない。
●キムタクがかっこよくない?
誰もが憧れる美青年として、化粧品のCMにも出演していた(懐かしのカネボウテスティモ!)20代の頃から、脂の乗った30代を経て、なぜかイイ感じの中年に進化できなかったキムタク。私生活では二児の父であるが、事務所の方針なのか、そうした“深み”を俳優業で見せる機会はなかなかなく、この数年はハッキリ言って「変なオジサン」キャラばかりをあてがわれている。
「40でこのキャラは痛い」
「若手にやらせればいいのに」
劇中でかけている丸眼鏡がバカ売れしたという報道もあったが、街であれをかけている人にはなかなか遭遇しない。
●いやいや、キムタクは悪くない。他の配役がひどい?
一方で、キムタクは相変わらずキムタクで、だがそこがいい、という声もある。
「正直これはキムタクのせいじゃないと思うわ」
「キムタクのアンドロイド役はけっこうかっこいい」
どちらかと言えば、キムタクよりもその他の配役に違和感を感じている視聴者が少なからずいるようだ。たとえば、初回で主役(キムタク2役)の科学者・沫嶋黎士(まつしま・れいじ)を殺害する「敵アンドロイド」は、福田彩乃。ローラや長澤まさみのモノマネで大ブレイクした、福田彩乃だ。滝川クリステルのモノマネで一稼ぎできるこのタイミングで姿を見ないと思ったら、女優業に邁進していたとは。
また、早々に死んだ沫嶋黎士の妹役に配されたのは、AKB48の大島優子。天才的頭脳を持ち、大学の准教授という役柄だが、彼女をどう料理すればその役に見えると考えたのか、キャスティング担当者を問い詰めたいレベルである。福田にしろ大島にしろ、キムタク閣下の“オキニ”という点だけで配置されたのではないか。それで本当に「良い作品をお届けします!」という気があるのか疑問である。
●ブログが上地
最後に、『安堂ロイド』の公式サイト内で地味に更新されている、沫嶋黎士のブログに触れておきたい。要するに、キムタクが書いているレアブログという扱いなのだが、これが「ガチで」40歳のおじさま・キムタクが書いているとしたら、あまりに軽すぎてズッコけてしまう内容(というほどそもそも内容がない)。IQ245の天才科学者が書いている設定なのに、「!!」いっぱいのハイテンションで、ぶりっこおじさんこと上地雄輔を彷彿させる。
~10月26日の更新から抜粋~
でも、やったりますよ!!
護ったります!!
何故なら、諦める事も俯く事も逃げ出す事も禁じられてるから!!
お互いに、今日一日をいったりましょう!!
~10月27日の更新から抜粋~
今日もチームロイドは、前に進みます!!
それぞれの力を、一瞬一瞬に合わせて一歩一歩前進します!!
そして、撮影の合間には「繋がってる空に向かって」大きく深呼吸して、また進みます!!
……上地降臨? 「いったります!」の頻出や、「力にさせて頂きやす!!」などの言葉のチョイス、唐突に「ヨシッ!!」と気合いを入れるところなど、どうしても上地の「深呼吸してからの~…よっしゃ!!」にリンクしてしまう。素のキムタク=上地、という嫌な公式に気付かされてしまった。
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27日の放送では、裏番組で日本シリーズが盛り上がっており、こちらの注目度が高かったことも『安堂ロイド』低迷のひとつの要因という見方もあるが、試合が来週の日曜までもつれ込んだ場合、さらに日本列島が野球で盛り上がってしまうことは必至。そうなれば、こちらはあわや一桁突入という事態にも陥りかねない。かといって、ヘタにキャンペーンを打ったり、話題を流そうとしても、そんな小手先の広告宣伝で視聴者が食いつく時代でもない。キムタク初の一桁となってしまうのか、気になるところだ。
(hin-nu)