下戸山:自然毒もたくさんあるのに、自然のものが安心安全って思い込み、強すぎですよね。
桑満:例えば〈遺伝子組換え〉。あれって、ほとんどが農薬を減らすために虫がつきにくいよう改良されたもの。ですから、遺伝子組み換えのほうが農薬リスクはかえって低いんですけどね。
下戸山:なんで豆腐は必ず遺伝子組換え表示があるんですか?
O:そのほうが売れるらしいんですよ。そもそも、大豆だってなんだって、とっくの昔から品種改良を繰り返しているのに。だけど〈自然じゃないと危ない〉って思っているから、そうなっちゃう。
桑満:これも一種のつけこみ商法なでしょうね。アメリカは宗教的な問題もあり、ガッチガチのカトリックの人たちあたりは、生命に手を加える行為はやっちゃいかんという価値観を持ってるわけです。そういう人たちは、多分マクロビとかが好き。そして、その価値観がサンフランシスコやLAを経由して日本に入ってくる。古いけど、フラワーチルドレンに感化されて自然派になったり。
三浦:海外セレブがやっている、自然派ビューティ!って、本当に皆好きですよね。ミランダ・カーとか、一体何種類のダイエットをやってるんだという。
週刊誌や書籍のトンデモ垂れ流し
三浦:今年は子宮系女子の本も何冊か出ましたが、そういうトンデモ本を出す出版社って魂を売っているというか、モラルがないと思ってしまいます。
ノジル:商売として成り立つからといってやっていいのかという話ですよね。でも、子宮系とかはもう編集者も信者なんじゃないですか? と思いたい。
下戸山:わりとどこの出版社でも自費出版って可能ですから、それもあるかも。文藝春秋とか小学館とかだって、やろうと思えばできちゃいますよ。
桑満:(新聞の書籍広告欄をさし)例えばここの欄って、〈自分持ち広告〉ですよ。著者自がお金を払って、広告を出しているんです。だから、トンデモの宝庫になっていて、見るの大好き(笑)。
三浦:週刊誌系の医療トンデモ記事は、今年後半になって「週刊現代」が急に始めた印象です。
O:週刊誌の記者さんとお話ししたときに何度か聞いたことあります、「いろいろな考え方があるよね!」って。
一同:出た出た。
O:その人に限っては、悪気があるわけじゃないんですよ。でも「医学だって万能じゃないし、いろいろな考えが!」って、科学的なことだけがどうしても伝わらないというか。
桑満:〈いろいろな考え方〉の話をするならば、例えば産経新聞と毎日新聞って書いてあることは逆だよね。でもどちらの話も嘘ではない。そこで重要なのは〈再現性があるかどうか〉です。Aさんに効いて、自分にも効いた。そういうレベルの話なのか、100万人でに試して、90万人に効果が認められたかとでは、全く違う。それをジャッジするのはやはりエビデンスなんですよ。その点、内海聡医師の話は、まるっきり嘘と言えます、エビデンス=裏がまったくとれませんから。
O:「週刊現代」の医療批判記事はどうなんでしょう?
桑満:新潟大学名誉教授の岡田正彦氏が同誌で発言しているけど、あれはちょっとキテますよ。ご自身の論文では全然違う意見を書いていますもん。記者が話の一部を曲解しているのかもしれないけど。最近、医師には3種類あると思いますよ。トンデモか、普通か、ヤブ。あまりにも、いろいろな病院を点々と渡り歩いている人は怪しいですね。