連載

「脱毛しないと男子に嫌われちゃう!」と女子を脅すPRに告ぐ。「人間を馬鹿するのもいい加減にしろ」

【この記事のキーワード】

 1月5日、Twitterアカウント『ミュゼプラチナム【公式】』は、以下のお知らせとともにアニメーション動画を掲載した。

\お知らせ/ 突然ですがミュゼからショートムービーをお届けしますミ[゚ー゚]ミ 絶賛恋愛中の毛ガニちゃんと、ちょっと美意識高めなタラバガニ君の恋を描いた3部作! #カニ恋それゆけ!毛ガニちゃん 第1話『別れは突然にhttps://youtu.be/4PoVLdS-vOM (本文引用)

 毛深い毛ガニちゃんが、恋人のタラバガニ君に毛深いと指摘された挙げ句、毛のないスベスベマンジュウガニちゃんに惚れていると告げられるという悲惨な内容である。「毛深い」の一言を言い淀んだタラバガニ君の「け」の一言より、結婚の「結」を想像した毛ガニちゃん。予想が外れてショックを受け、「冷めないで」と懇願する様子がチープかつコミカルに描かれているが、PRの目的が、「女性は体毛を処理しなければ男性に愛されない」と女性を脅すことによる商売繁盛の販売促進である以上、まったく笑えない。

男性による承認を女性に促す商売

 自立と少子化対策の矛盾した矢面に立たされている現代女性に対し、いつまで男性主導による価値観への女性の追随を推奨するつもりか。なかなか厳しい現状だからこそ男性に従って生きていく方が幸福だと感じる女性が一定数いるとして、幸福の価値観は人それぞれ。女性がどう生きるかを決めるのは、当の女性である。脱毛もダイエットも、行う主体はあくまでも女性であり、男性による承認を女性に促す商売に煽動される謂れはない。

 そもそも当方は、若い頃より男性に愛されるためのモテメソッド“人間個人を理想の女性像の型にはめる言説”の類いが大嫌いだった。思春期には、男性に肯定されるための方法論に女性が従い、自己を埋没させる行為の順序に対し、女性の自己、ひいては人間そのものを馬鹿にしていると感じたものだ。モテメソッドや理想の女性像の喧伝は、個々の自由意志と生きる尊厳を馬鹿にする“人でなし”の推奨と認識した

 企業収益のために利用する“男の都合に従う女像”とは、つまり“男性優位社会が求める女性の理想像”2017年にもなって、女性自身の人間性や主体性、等身大の個性の輝きを重視せず、古の理想型への追随を促す作為自体、時代錯誤なうえに人間を馬鹿にしていると私は捉える。

 『ミュゼプラチナム』は「全ての女性の毎日を輝かせたい」とのスローガンを掲げているが、似たようなスローガンをもつ安倍内閣の男女共同参画局同様、綺麗事と上から目線の混在する「輝かせたい」というメッセージの根底には、女性は政治や商売にとって利用し甲斐がある、よって女性を応援しようという手前勝手な意図がある。

 企業の理念や推奨したい現代女性観といった大義名分など存在しない。存在していれば、“男性のために存在する女性の身体の是”を、今、この世に喧伝する言説は誕生しない。それがまかり通るのは、「つられてクリックする人間が多勢いるのでPV数があがる。購買者数も増える」から。ただそれだけだ。

 女性が輝くためのサービス提供や商売を非難するつもりはない。お為ごかしをやめろと言いたいのだ。商品やサービスに自信があるならば、堂々と「うちのサービス、最高だから、どんどん使って!」と、自分を主語にアピールすればいい。「女性の脱毛の自己処理は、時間も労力もかかって大変だから、うちのサロンで手伝いますよ!」と、利用者の主体性を尊重したうえで、利用するか否かの選択を本人に委ねればいい。

 その際、「使わないと、彼氏に嫌われちゃうぞ!」と、サービス提供者と利用者以外の第三者を持ち出し、不安要素を与える宣伝文句を気軽に担ぎ出すから、胡散臭くなるのだ。「男性に嫌われたくないでしょう、さあ、うちのサービスを利用してください。我々はすべての女性を輝かせたいのです」と説く商法と、「肩に霊が憑いている。あなたの幸福のためにこの壷を特別に30万でご提供します」でおなじみ霊感商法と、一体何が違うのか。

 理想像も霊も、実態があるのかないのか分からない点、不安を餌に購買を促す点が共通しているが、すでに胡散臭いと認知されている霊感商法とは違い、若い女性が特に気にする「好きな人に嫌われちゃうかもしれない」可能性を公然と突いてくるあたり、悪い意味で無邪気である。

1 2 3

林永子

1974年、東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業後、映像制作会社に勤務。日本のMV監督の上映展プロデュースを経て、MVライターとして独立。以降、サロンイベント『スナック永子』主宰、映像作品の上映展、執筆、ストリーミングサイトの設立等を手がける。現在はコラムニストとしても活動中。初エッセイ集『女の解体 Nagako’s self contradiction』(サイゾー)を2016年3月に上梓。

[PR]
[PR]
(ラセンザ)La Senza Tバック ソングパンティー ショーツ OBSESSION Thong Panty (XS (日本サイズS~M), ブラック(Black with Blueberry)) 並行輸入品