【前回までのあらすじ】
実家を出てひとり暮らしを始めた夢子。MRIフィルムを買い取り、近所の開業医を訪れるも、セクハラ医師に遭遇した!
* * *
(やっぱりこんな田舎の開業医じゃダメだ。あの髭野郎はMRIの見方だってわからないみたいだったし、子宮内膜症がどんな病気かも知らないんだ、きっと)
そう考えた夢子は、今度は片道1時間ほどのところにある大学病院の、田舎の分院に行くことにしたの。
その病院の婦人科の待合室は薄暗くて、50~60代とおぼしきご婦人でいっぱいだったわ。そこね、雰囲気が暗いってもんじゃないのよ。ご婦人たちはみん心配そうな表情を浮かべて、うつむいて座っているのだけどね。漫画の「ドヨ~ン」という効果音が薄汚れた壁に書かれているのが見えるような、「陰惨」としかいいようのない雰囲気だったの。
「子宮内膜症疑いで卵巣が腫れてるそうなんですが」
そこでも夢子はゆさゆさするMRIを医師に渡してクリニックでいったのと同じ言葉をくり返したわ。そこの医師はMRIをちらっと見て軽いノリ、でこういったの。
「おっ、ほんとうだ! 卵巣腫れてるねぇ!」
その治療は、受け入れられない…。
髭野郎が見ようともしなかったMRIだから、せめて見てもらえただけでもありがたく思えたけれど、よく考えたら診察ではそんなの最低限のことよね。
夢子は医師のいいかげんっぽいノリに少し警戒心を抱きながらこう聞いたの。
「ピルは処方してもらえますか?」
「うちでは、リュープリンなんだよねぇ」
医師のその言葉に(げえっ)と夢子は心の中でうめいたわ。
「あのぅ、リュープリンは嫌でして。ピルを希望してるのですが」
「リュープリンじゃなきゃ、治らないよ?」
あとで詳しく書くけど、夢子はリュープリンだけは使いたくなかったのよ。
「わっかりましたぁ~、検討しま~っす」
MRIを返してもらってから夢子は、その大学病院の田舎の分院もそそくさと後にしたの。
求める医療のため行動あるのみ!
夢子が求める通院先の条件は,
①ピルを処方してくれること
②子宮内膜症の治療に詳しいこと
だったわ。先にかかった2軒はいずれも該当しなかったの。
(うむ。やはり、近いからとか同じ県にあるからという理由で婦人科を決めるのでは、私の求める条件の医療には永遠にたどり着けないようだ)
夢子はそう痛感したの。
(他県であろうが遠かろうが、みずから積極的かつ能動的に病院を探し出すしか、求める医療を受ける術はない!)
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