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「キムタクだから…」と敬遠してはもったいない。技術を重んじるアウトローと権力との対立を描くドラマ『A LIFE~愛しき人~』

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『A LIFE~愛する人~』公式サイトより

『A LIFE~愛する人~』公式サイトより

 木村拓哉がSMAP解散後に出演するというだけで、どこか粗探しをしてやろうという目線で見られてしまいそうな日曜劇場『A LIFE〜愛しき人〜』(TBS系)がスタートしました。現在、第二話まで放送されています。

 このドラマは、壇上記念病院の院長・壇上虎之助(柄本明)の心臓手術のために、医師・沖田(木村拓哉)が、アメリカから戻ってくるところから始まります。沖田の提案する手術方法は日本では前例のないものだからと、第一外科部長の羽村(及川光博)などに反対されるものの、院長の一存で手術をすることに……という第一話の序盤から、それぞれのキャラクターがはっきりと見えるようになっています。

 沖田は、かつての恋人で院長の娘の檀上深冬(竹内結子)とは結婚せず、手術の経験を積むためにアメリカへ。その深冬と結婚した檀上壮大(浅野忠信)は、沖田の親友で、幼馴染。幼い頃は、同じ野球部のエースだった壮大に対して、補欠の沖田はコンプレックスも感じていたようです。壇上病院に新しくやってきたばかりの井川颯太(松山ケンイチ)は、父親が関東外科医学会会長で、いずれは満天橋大学病院を継ぐことになる御曹司です。また、この井川に病院のあれこれを教える羽村は、病院に忠誠を誓う、ことなかれ主義者に映ります。

恋愛はないが、シンパシーはある

 女性たちはどんなキャラクターかというと、第二話放送時点では、深冬はかつての沖田の恋人であり、脳に腫瘍が見つかった(本人はまだ知らない)という以上のものはあまり見えてきません。オペ専門の看護師である柴田由紀(木村文乃)はサバサバした性格で、全方位に気遣いのできそうな羽村から有名なスイーツをもらっても、特段盛り上がりませんし、井川からの好意のありそうなアプローチにもそっけない態度を取ります。

 そんな柴田ですが、オペの最中、沖田が考えていることの先を読んで、手術道具の準備ができる有能な人物でもあります。手術後、沖田が「動き最高ですね」というとすかさず柴田が「先生も」と返すやりとりがあります。その他にも柴田は、サポート役ではあるけれど、沖田が一目を置く人物としてたびたび描かれています。

 ノワールものでは、男同士が良い仕事や技術でビビビッとシンパシーを感じて信頼関係を築くという描写があります。最近では男同士に限らず、『マッドマックス 怒りのデスロード』のマックスとフュリオサの間で、こうしたシンパシーが描かれていました。『A LIFE』でも、この手法が使われていたわけです。

 『A LIFE』と同じ枠の日曜劇場で放送されていた『下町ロケット』では、物語の中の善人は、小さな部品にも魂が宿るということを知っている人、逆に悪者は、小さな部品を「単なる部品」としか見ない人として描かれていました。

 『A LIFE』では、技術を重んじる人が善人と描かれます。沖田はいつも糸を結ぶ練習をしていますし、子供のころ野球では負けていた壮大にガンプラの巧さでは勝っていたと言い、また父親は寿司職人でもあります。第二話に登場する和菓子職人の患者が、職業人としての命ともいえる右手を沖田が守ろうとしていたところでも、沖田が技術を重んじていることがわかります。沖田にとって技術を重んじるということは、人の尊厳を守るということなのです。だからこそ、技術のある柴田に対して、沖田はシンパシーを覚えたのでしょう。

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西森路代

ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクショ ン、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、 TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

twitter:@mijiyooon

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