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日本の「普通の恋愛・結婚」を教えてくれる鈴木奈々カップル

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『an・an 2013年 11/6号』マガジンハウス

『an・an 2013年 11/6号』マガジンハウス

 いつの間にか連載20回を超えていた当コラム「恋愛コンサル男子」ですが「『an・an』(マガジンハウス)のような女性誌で書かれているむちゃくちゃな主張を分析し、女性の幸福についてコンサルする」という当初のコンセプトは度々忘れられ、可愛いと思う女の子について思う存分語りまくるなど好き勝手にやらせていただいております(前回は長澤まさみさん讃歌になってしまいましたし……)。今回はひとつ初心に返りまして、『an・an』を取り上げましょう(実はこの雑誌はまだ1回しか取り上げていないのです)。

平成の適当男たちにイラッとくるキュウ~!

 10月30日発売号からリニューアルした『an・an』は、表紙の材質がPPコート(なんかテカテカしてちょっと高級に見えるヤツね)に変更されたほか、連載コラムの刷新が目立ちます。モノクロの連載コラムコーナーには、少年アヤちゃんや犬山紙子さん、妄撮Pこと小林司さん、はあちゅうさんなど、サブカルというか、インターネット大好き人間のなかでそこそこ人気の書き手が多く名を連ねるなか、子宮の妖精ことしQちゃんが猛烈にdisっていた作家、朝井リョウさんと若手社会学者の古市憲寿さんによるタッグ連載も登場。この対談が醸し出している気持ち悪さに、私は軽い苛立ちを隠せず、今後とも二人が何を調子に乗って話すのか注目してしまいそうです。

 古市×朝井の対談形式で綴られたそのコラムは、「『an・an』が朝井さんと僕でなにか連載をやりたいと言ってきてくれているんだけど」という一言から始まり(冒頭からして、マイルドな上から目線を感じてしまう)、自分たちが「浅い」とか「中身がないくせに売れててムカつく」などと言われ何をしても叩かれる、というパブリック・イメージについてアピールすることに終始している印象を受けました。朝井さん自身、「でも、なんで『an・an』が、僕たちが微妙に仲いいってことを知ってるんだろう」と発言していますが、この「読んでてイラつく男性の書き手×2」を組ませた編集部の人選は、ちょっとスゴいな、と思いました。「イラつく男業界」においては、ハンバーグ・カレーみたいなスター級の組み合わせですよ。

 古市さんにおかれましては、テレビやラジオ、Twitterなどでなにか鋭いっぽいことを発言するたびに「いや、お前それ、間違っているよ」と猛烈に批判され、まとめサイトで晒されることが恒例行事となっており、「叩かれる仕事ばっかり」というよりも「叩かれることを仕事としている」風に見えてしまうところがある。ある意味、天才的な炎上マーケッターです。そのうえ、この連載のプロフィールには「大人たちから若者に詳しい人と思われる」とありますが、この人、1985年生まれ、アラサーですよ(私と同い歳)。お前も大人だろう、なんで自分は大人じゃないみたいな立ち位置やねん、と関西出身でもないのにエセ関西弁で突っ込みたくなります。おまけにそうした突っ込みをあらかじめ想定してそうだから、イラッとくるんだキュウ~!!  私もテレビで適当なことを言うだけで金をもらいたいキュウ~!!

 思わず、しQちゃんが憑依してしまいました。disるのはこれくらいにして、『an・an』の特集に触れていきましょう。

ネット上での議論は本当に「世間」か

 特集は「Tokimeki Power キュンキュンときめく恋してる?」というタイトルで、著名人の恋愛観(長澤まさみさんもインタビューに答えている! 今回も可愛いぞ……!!)や、一般人を含めた幸せカップルの恋愛事情などがまとめられています。リニューアル前の『an・an』では独身アラサー女性に「授かり婚」をオススメするなど「アラサー必死だな」感を煽るものが目立っていましたけれど、リニューアル後の一発目にはなんというかギアを一段落とした印象を持ちました。「結婚しなきゃ、ヤバい!」じゃなくなっているのです。

 はっきり言って、著名人の恋愛観などどうでも良いですし、表紙を飾る水原希子さんのインタビュー記事においては「モデル・女優として活躍してる水原さんも、普通の女の子みたいな恋愛感を持っている! 意外! 可愛い!!」という内容になっていて、一体これを読んで誰が得するんだ、と疑問に思う、よくある女性誌の記事そのままです。むしろリニューアル前の方がエグいほど人を煽ってる感じが良かったのでは、と思わなくもありません。

 ただ個人的には、カップルの恋愛事情記事など結構面白く読めてしまったのですよね。「女のドキドキ、男のワクワク。恋するふたりの気持ちを教えて!」と題された記事では、そこそこヴィジュアル的にグッドな感じのカップル8組がそれぞれの馴れ初めや、相手のどこが好きか、とか語っております。これも別にどうでも良い記事と言えばどうでも良い。しかしこの記事に影響を受けて「あー、恋愛したいなー」と思う人もいるのでは、と思ったわけです。ハッピーなヴァイブスは伝染するのですね。浜崎あゆみさんの言葉を借りれば、いいケミカルが生まれちゃって、といったところでしょうか。(http://www.cyzo.com/2013/10/post_14900.html

 他人の素敵な生活や欲望がうらやましくなったりして、よーし、自分も頑張るぞ、となることは往々にしてあるでしょう。周りに結婚する人が増えたり、子供ができたりして「自分も……」となったりとか。かつてフランスの偉い精神分析家が「人の欲望は他者の欲望である」と言ったそうですが、まさにそれ。今回の『an・an』では「結婚しないとヤバいよ!」などと煽ることを辞め、他者の欲望を読者に感染させる戦略へとモード・チェンジが図られているのでは、と思いました。

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カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra

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