真紀だけがまだ、わからない
今生の別れというわけではないし、面会はきっと出来るけれど、一緒には暮らせない父と息子。客入り前のライブレストラン「ノクターン」で真紀、みすず、司、有朱(吉岡里帆)が見守る中、愉高と光太はふたりで『Are you sleeping?』を演奏しました。カルテットの演奏を聴き終え、軽井沢を去っていく茶馬子と光太に手を振り、愉高は泣きました。自業自得とはいえ、もう息子と暮らせる可能性は絶たれたのですから……じゃあ親権を巡り茶馬子と争って、愉高が息子を育てるという道はあったのかというと、きっと、あり得なかった。そこまでの覚悟を愉高が持てたかどうか――生活費を稼ぐため働きながら養育も怠らないひとり親に、なるという覚悟です。
こうして愉高の家庭問題がひと段落しましたが、放送時間はまだ10分以上残っています。東京のマンションでベランダにゴミを出したままにして異臭騒ぎになったというクレーム電話を受けた真紀が、司を伴って上京。別荘には風邪を引いた愉高とすずめが残り、男女2:2に分かれましたね。
チーム軽井沢では、愉高がすずめに衝撃的な告白。つい忘れそうになりますが、カルテットの4人が東京のカラオケボックスで“偶然”出会った、というのは表向きの話。三話までの放送で、すずめと司は意図的に“真紀に会いに行った”ことが明かされましたが、愉高もやはり“偶然”じゃなくて“真紀に会いに行った”のです。なぜか? それは、真紀を強請って金をせびるためでした。
過去に駅の階段から落ちて負傷、顔まで包帯ぐるぐる巻き状態となり、ひと月入院したことのある愉高(離婚決意のきっかけだったやつです)でしたが、実はその大部屋で隣のベッドに入院していたのは“真紀さんの夫さん”。ベランダから落ちて腰を痛めたというそのひとは、愉高にこう漏らしていました。
「俺、本当は植木どかそうとして落ちたんじゃなくて妻に落とされたんだよね」
その頃、チーム東京。ゴミ袋を放置して異臭騒ぎになってしまった真紀のマンションのベランダ……「夫がベランダから落っこちちゃったことがあって」と真紀はサラリと言いました。司は、リビングに脱ぎ捨てられた夫の靴下(をそのまま放置している真紀)に。耐えられなくなり、真紀を口撃します。
「僕、捨てちゃいましょうか。いつまで夫の帰りを待っているつもりなんですか。バカだなあって思いませんか? 靴下に恋しているなんて。靴下と三角関係なんて」
「今頃夫さん別の女の人といるかもしれません」
「愛しているけど好きじゃない妻じゃなくて、愛していて好きな恋人と一緒にいるかもしれませんね」
「あなたといると2つの気持ちが混ざります。楽しいは切ない、嬉しいは淋しい、優しいは冷たい、愛しいは虚しい。愛しくて愛しくて虚しくなります。語りかけても触ってもそこには何もない。じゃ、僕は一体、何からあなたを奪えばいいんですか?」
真紀の手を取り、離そうとしない司。この指先の演技!!! え、えっろ……。俄かに視聴者が興奮してしまったそのとき、誰かが玄関を開ける音が……。まさに恋はスリル・ショック・サスペンス! 次回に続きます!
第四話までで4人の過去や裏事情は一通り出揃い、ここで一幕が終章。次回からは第二幕が開きます。次回は五話、そろそろ折り返し地点に入りつつあるわけですが、どんな結末を用意しているのか想像できません。真紀の夫は? 彼らの一方通行な恋は? それに、真紀って結局どんな人間なんでしょう? 一話~三話でも、基本的には寡黙で、けれど要所要所で激しい感情を露わにして……夫の靴下を意図的に脱ぎっぱなしにしていて……なにより、ほとんど軽井沢で過ごしているにもかかわらず、冬なのに異臭を放つゴミ袋を大量にマンションベランダに放置していたことも解せません。すべては真紀を怪しい女に見せるミスリーディングでしょうか。
『カルテット』は最初に出された謎が多過ぎて、場面ごとに何かしら明かされていくせいか、ストーリー展開自体はそこまで早くないのに全く退屈しません。エンディングソングの迫力もあって、視聴後は放心状態になりますが、最終回まで目が離せません。
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