なぜ井ノ原はいじめ問題に熱くなるのだろうか。それは二児の子を持つ父親だから他人事ではないというだけでなく、自身も昔いじめを受けたことが関係しているかもしれない。エッセイ『アイドル武者修行』(日経BP)で井ノ原は、小学校時代にいじめを受けていたことを明かしている。エッセイによれば井ノ原は、祖母がかけてくれた「苦しいことは、その人が耐えられるから降ってくるんだ」という言葉を、「いじめられているということは、いじめている人より優れている」と解釈することで救われたという。
また、このいじめ被害経験を通じて「人の心の動きとか痛みに敏感になりました。結果的に今の仕事にすごく役立っています」とも綴っている。
確かに『あさイチ』を見ていると、井ノ原の人の痛みや弱者とされる人々への対応には目をみはるものがある。例えば『あさイチ』でセクハラ問題が取り扱われた時に、共演者の有働由美子アナが「関係性がある人からのセクハラ発言はあまり気にしない」と言うと、井ノ原は「有働アナが“強い人”だからといって、何でも言って良いわけはない」「相手がどう思うかってことを常に考えないと、加害者になる」と自論を述べ、スタッフや共演者をけん制していた。たとえ有働アナが関係者のセクハラ発言を気にしないといって、セクハラ発言が許されるというわけではない。「関係者ならセクハラしてもいい」と勘違いする人間がでかねないし、周囲の人間がその発言で傷つくこともあるだろう。そんな井ノ原について、有働アナは自著『ウドウロク』(新潮社)で、『あさイチ』を担当することを知らされたときはアイドルとやることに不安を感じていたが、今となっては「いのっちがフォローしてくれる」と全幅の信頼を寄せていることを綴っている。
いちアイドルであったが、今ではすっかりキャスター姿が板についた井ノ原。だが、けっして堅物なイメージはついていない。後輩のジャニーズと共演した時は、おどけながらギャグを言ってみせたり声援を送ったりと、場に応じて切り替える柔軟性もある。底知れないポテンシャルを持つ井ノ原が今後どれだけの活躍を見せてくれるのだろうか注目だ。
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