先日、messyで「性器を擦り合う激しさ…映画『お嬢さん』の凄まじい濡れ場。いまだに上映不可能な作品もある、語り継がれる“濡れ場”名作映画5選」という記事もありましたが、この春、話題になること必至の韓国映画『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)の濡れ場には、私も大いに興奮いたしました。いえ、濡れ場に限らず全篇が官能的で興奮しっぱなし、といったほうが正確でしょう。
1939年、日本の統治下にある朝鮮半島。孤児として盗賊団一味に育てられた少女・スッキは、華族のお屋敷に潜り込み、秀子お嬢さま(キム・ミニ)の身の回りを世話する係として働きはじめます。彼女の背後にいるのは、藤原伯爵と名乗る詐欺師の男(ハ・ジョンウ)。彼は、秀子の叔父である上月(=こうづき、チョ・ジヌン)に取り入り、次にスッキの手引で秀子お嬢さまに近づいて彼女を籠絡し、その財産を手に入れようとしているのです。もちろんスッキもその分前を目当てにしているわけですが、叔父との異様な関係に苦しみながらもこの屋敷以外では生きていけない秀子の孤独に惹かれていきます。
誰が誰を騙し、誰が誰に騙されているのか……信頼と裏切りがめまぐるしく入れ替わる緊張とともに、常に色濃く漂っている官能の気配。同作は第69回カンヌ国際映画祭で絶賛されたといいます。カンヌといえば、現在放映中のテレビドラマ「山田孝之のカンヌ映画祭」が思い出されます。映画をプロデュースしてその作品で同映画祭で賞を撮りたい(という設定の)山田孝之さんに対し、東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの矢田部吉彦氏が“カンヌで勝つためのポイント”のひとつとして性描写を上げ、次のように語っていました。
「(カンヌで評価される世界の映画は)セックス描写があって当然。その先まで行こうとしているのに、日本映画はセックス描写があるかないか、そのギリギリのところで迷っていますし、まぁあったとしてもセックス描写だけが話題になってしまって、それも非常に不健全なことだと思いますし、それは観る側も作る側もセックス描写に対してちゃんとクリアできていない……まだ未熟な部分っていうのがありますね」
『お嬢さん』の性描写はまさに、“その先”を感じるものでした。いえ、私も最初は「エッロ!」とただただ目を剥いていたんですよ。まさにセックス描写にだけ注目している未熟な状態。だって、そこにいたるまでの退廃的で思わせぶりなディテールの数々と、何度もくり返される“寸止め”とで、セックスシーンへの期待がマックスになっているんですもん。しかし、その興奮の余韻がまだ残っているうちに、行為を通してふたりが見つけたもの、捨てると決めたものが徐々に見えてくるのです。
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