インタビュー

「男性不信は解消したが、男社会への憎悪は強まった」増田ぴろよ、男だらけのシェアハウスでペニスを切り刻む

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増田ぴろよのアート作品/男性アイドルのCDでつくられた巨大ミラーボール「鎮魂ミラーボール」Photo by Masayo

増田ぴろよのアート作品/男性アイドルのCDでつくられた巨大ミラーボール「鎮魂ミラーボール」Photo by Masayo

 新しい暮らしの形として話題のシェアハウス。一軒家・マンションを問わず、家族ではない他人同士が同じ家に住み、キッチンやリビング、バストイレは共同で使用、個室を各人の専用スペースとして割り当てる形式が一般的だ。SEKAI NO OWARIメンバ-4人が一軒家(通称セカオワハウス)で共同生活を営んでいることでも話題になり、認知度が高まったシェアハウスという生活形態だが、セカオワのように「男だらけの家に紅一点」となると不埒な妄想を託す輩もいる。ただ、実際に男だらけのシェアハウスに紅一点で暮らし、ペニスアートを制作をしている芸術家・増田ぴろよさんによれば、「乱交めいた雰囲気にはならない」という。増田さんにシェアハウスの暮らしについて伺った。

増田ぴろよのアート作品その2/男性器テキスタイルを切り刻んだキルト作品「消滅のキルト」シリーズより

増田ぴろよのアート作品その2/男性器テキスタイルを切り刻んだキルト作品「消滅のキルト」シリーズより

 彼女が入居したシェアハウスの間取りは4LDKで渋谷まで電車で17分、駅から徒歩5分の一軒家。家賃は6万円だったという。

ーー増田さんはなぜシェアハウス生活を選んだのですか?

「アトリエ兼住居としてシェアハウスを選びました。もともと他人との共同生活には抵抗がなかったし、異性と暮らすのも気にしなかったので、共同生活をなめていたというか軽い気持ちで始めてしまいました。物件情報には男女各2名の4人暮らしのシェアハウスと記載されていたので、紅一点という意識もなく。ただ、女性と聞いていた4人目のメンバーはFTMで生活がスタートする頃には身体も戸籍も男性になっていました(※FTM… Female to Maleの略。身体的には女性であるが性自認が男性)」

ーーでは入居段階で増田さん以外は全員男性に。

「飼っている犬(舐め犬ではなく動物の方の犬)もオスなので完全に男だらけのメンズハウスです。おそろしいことに全員それなりにちゃんとイケメンでした。ホストクラブに入り浸っている友人女性が家に遊びに来た時に、『店に行くよりコスパいい』と言っていたので、それに近い環境だったと思います」

ーーホストクラブ並みに構ってもらえるんですか?

「嫌なことがあった日に、共有リビングのソファで夜な夜な話を聞いてもらえたのはちょっとホストっぽかったですね。一緒に暮らしているので、無銭で本営同棲体験といった感じです。家賃はかかりますけど」

ーーそれはいい環境ですね。シェアハウス内で恋愛はありましたか?

「すごく聞かれるのですが、無いですね。必要以上に無かったですね。引っ越した当初は同居男性とIKEAに家具を買いに行ったり、一緒に料理をしたり、テラハ的なはしゃいだ感じもあったのですが、日々の生活に追われるとそれどころじゃなくなってしまって。一緒に生活しているとうんざりするような格好悪いところを見せあわなきゃいけないので、完全同居の相手と恋愛関係まで持っていける人って体力すごいなと思います」

ーー増田さんの作品からは男性への強い憎悪を感じますが、男だらけの環境で暮らして大丈夫なのでしょうか?

「幸いにも理解ある同居人に恵まれたおかげで乗り切れました。同居人たちは私がペニス=男性社会の解体をテーマに創作していることに興味を持ってくれてありがたかったです。彼らはどちらかというと、女性から選ばれモテてきた男性たちでした。そんな彼らと生活してみて、男も女から消費されていることを知りました。

女性から値踏みするような視線を感じたり、田園都市線で痴漢(痴女)被害にも遭っていたり……という話を彼らから聞いたんですね。男性は社会からの重圧や逃げ場の無さも相当きつい。そして自らの搾取や暴力にも、搾取され暴力を受けることにも、とても無自覚だなという印象を受けました。

私はこれまで抑圧されている女性に向けて作品を創っていたのですが、『男社会を解体する』というテーマを掲げています。男性である彼らにも、このテーマに共感してもらえたことがとても嬉しかったです」

ーーアトリエ兼住居ということで、ペニスアートの作品制作もその共同生活の空間で行っていたんですか。

「作家活動に理解と協力を得ることができたので、調子に乗って一人では作れない大きな作品にも挑戦することが出来ました。制作指揮を友人のユゥキユキさんにお願いして、家のリビングでみんなで制作しました。その数日間はまるで合宿状態でとても楽しく高揚しました。全員一丸となってペニスにミラー(切り刻んだアイドルのCD破片)を貼付ける日々はカルト教団のようで、端から見ればちょっと恐ろしかったと思います」

制作中の様子

制作中の様子

ーーペニスをモチーフにした作品以外にも、「私ってかわいそう」など女性の被害者意識を感じるメッセージの作品も制作されていますよね。

Photo by 内野秀之/Model 七菜乃

Photo by 内野秀之/Model 七菜乃

「共依存・イネイブラーの関係にとても興味があります。私には、男=共依存対象 というやばい刷り込みがあり、ずっと、男性とパートナーシップを築けるとは思えませんでした。支配されるか・支配する対象だと思っていて……男性を同じ人間と思わない傾向がありました。危ない人間でした。それがこのシェアハウス生活を通じて、同じ人間だということを知ることができたんですよね」

ーー男性観が変わったことで、作品に変化はありましたか?

「男の身体を直球で表現するようになりました。今まではせいぜいインターネットペニス(ネットの画像。主に包茎手術の画像)を参考にお花などのロマンチックなイメージと重ねて表現してたのですが、初めてヌードモデルを雇って制作しました」

※同居人ではない。

※同居人ではない。

「ただ、男性不信を克服したぞ、という妙な自信がついたせいでより表現が害悪になったと思います」

ーー害悪ですか?

「私は『男体好きの男嫌い』の欲望があると素直に認められるようになりました。裸の男、好きですね。この暴力性は『女体好きの女嫌い』な男性社会を内在化してしまっているのか、復讐しているのか……どちらにせよ私の中にある害悪を自覚できました」

ーー男性は同じ人間であると知ったけれども、男性社会そのものへの憎悪はむしろ強化されているんでしょうか。いずれにしろその欲望を自覚したことで、増田さんは今後はどのような展開を考えていますか?

「共同生活に耐性がついてしまったので、今後はアーティストインレジデンス(滞在制作)にも挑戦してみたいです。春からはろくでなし子さんの元アトリエでの滞在制作も予定しています」

ーーまんこアートとペニスアートが同じ空間に。楽しみですね。

男性嫌悪を自認しつつも飛び込んだ男だらけのシェアハウスで、「男」を一括りにすべきでないと気づいた増田ぴろよさん。一方で、自らの抱える「害悪」に目を向けることとなり、表現はより先鋭的なものになっていくのだろう。

◆増田ぴろよ
ペニスをモチーフに、男社会の解体をテーマに制作している芸術家。男性器テキスタイルを切り刻んだキルト作品「消滅のキルト」シリーズや、男性アイドルのCDでつくられた巨大ミラーボール「鎮魂ミラーボール」などを制作。3331アンデパンダン展/辛酸なめ子賞を受賞。

SHARE HOUSE TALK SHOW

『SHARE HOUSE TALK SHOW』

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224()に増田ぴろよさんとシェアハウスの同居男性によるイベントが開催されます。増田ぴろよさん作詞によるシェアハウスオリジナルソングや、イケメンと噂のシェアハウスメンバーと接触できるチャンスも!

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2017224()19:00
会場:shibuya LOFT9

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