実際やってみて痛感したことだけど、当時勤めていた会社では、たとえ半休でも年に4回以上取るのはほぼ不可能だったわ。いつお休みもらおうかな?と考えるだけでも心理的に負担だったし、実際に半休をビクビクしながらお願いするのもストレスだったわ。それに数カ月に一度って、あっという間にめぐってくるのよね。
アメリカの病院ではさくっと処方されそうだったピルだけど、ほんの10年前の日本では、処方されるまでにこんなに長い道のりがあったのよね。
ピルにまつわる都市伝説
ピルは長年、日本では解禁すらされていなかったから、「自分が子宮内膜症の治療を受けることになったいま、ピルが解禁されていてほんとうにラッキー!」と夢子は感謝の念でいっぱいだったけどね(※日本で低用量ピルが避妊薬として承認されたのは1999年。世界に30年遅れて、ようやくの認可だった)。
つまり日本にはわりと最近まで副作用の多い、古いタイプの高・中容量ピルしかなかったわけ。そのせいで「ピルは太る」「ピルは吐き気がする」「時間厳守で飲まなきゃいけないから面倒」などの都市伝説が、いまでも根強いんでしょうね。
これを読んでる姉妹にいいたいんだけど、お母さん世代の人に「ピルは副作用が強くて怖いからやめなさい」なんていわれても、真に受けちゃダメ! 上の世代はいま主流の低用量ピルや、さらに副作用の少ない超低用量ピルのことなんて知らない人が多いんだから。
怖いだなんてとんでもない、低用量・超低用量ピルは女性の健康によい効果をもたらすのよ。卵巣がんと子宮体がんの発生率が減り、良性卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞含む)も減り、貧血や月経困難症が改善されるんだから。
現に夢子はピルを服用し始めても、頭痛も吐き気もなかったし太ることもなかったわ。飲んだ直後に口のなかに後味が残ることもないし、使用感は「軽い」というのがいちばんぴったりくる言葉だったの。それまで生理前後にできがちだったニキビも出なくなったわ。薬がどんな反応を起こすかは個人差があるから一概にはいえないから、これはあくまでも夢子の個人的感想よ。
ピルは時間厳守で服用しないとダメというのも嘘だしね。一日一回、だいたい同じ時間帯に飲めばいいだけよ。飲み忘れたら次の日の朝飲めばいいし、ほかのお薬と特に変わりないわ。
夢子は飲み忘れることはほとんどなかったけどね。毎日痛みがある状態だったから、子宮内膜症やピルのことが頭から離れることはなかったからよ。
副作用の可能性は少ないほうがいい
子宮内膜症は、本来は子宮にできるべき内膜が子宮じゃない場所に根を下ろしてどんどん増えちゃう病気よ。そいつらのせいで人によっては腹腔内に炎症や癒着が起きて、生活に支障が出るほどの痛みなど不具合に悩まされるの。まさに夢子がそうよ。子宮の外に広がった細胞はホルモンの変動があるたび、増えたり活動するわ。つまり子宮内膜症って、女性ホルモンの変動があるたびに悪化する病気なの。
月経血も子宮内膜に悪く作用するそうよ。だからいまの子宮内膜症の治療は、ホルモンの変動と月経をなくして、病気が進行するスピードを遅くしよう、という考え方なの。残念ながら子宮内膜症そのものを治す治療法は、現在の医療には存在しないわ。
リュープリンなどは体を閉経と同じ状態にして女性ホルモンの変動と月経を止めるのね。対してピルは、逆に女性ホルモンを補充することでホルモン変動と月経をお休みさせるの。どちらの薬を使っていても子宮内膜症はじわじわと悪化するけどね。
夢子が偽閉経療法をあんなに嫌がったのは、「ピルだろうと偽閉経薬だろうと子宮内膜症は閉経まで治らない。しかも、薬を使っていても病気はゆっくり進行する。だったら副作用が少ないほうを長く使ったほうがいいに決まってんじゃん!」と考えたからよ。