確かにそうかもしれません。私自身、性自認は女性ではあるし、性的対象は男性には向いています。ただ女性特有の身体的機能である出産をしたいと思ったことはありません。そういう意味では女性という体を持っていても、必ずしも社会が考える“女性”の通りではないということは身をもって感じています。
出産でいうと、今後、避妊医療や生殖医療の進化により生殖にまつわる性の考え方が変わっていくのではないかというお話もありました。
女性主体の避妊法は、日本でも増えるか?
日本において避妊といえば選択肢はコンドームかピルのふたつが定番ですが、早乙女先生によると、アメリカや先進諸国では、避妊はすでにLARC(Long Acting Reversible Contraception)と呼ばれる、長時間作用する避妊方法の時代になっていると言います。
具体的には、子宮内に挿入する避妊システム(IUS)や、黄体ホルモンを注入する避妊注射、皮膚に貼ることで低容量ピルと同等の成分を体内に浸透させるパッチ法、皮下に黄体ホルモンのカプセルを埋め込む方法などがあるそうです。
リモコン操作が可能で、16年間機能が持続する無線の避妊インプラント(埋め込み式)の避妊具が、2018年には米国の店頭に並ぶのでは? というニュースも出ていました。
私自身もこれほど多くの避妊法があるのは知りませんでした。もちろん一概にどれがいいとは言えませんし、国内ですぐ使用できるものばかりではありません。
ただ、女性の体で生まれ、避妊の選択をしているのであれば、「彼がコンドームをつけてくれないからどうしよう」「ピルを飲み続けるのが大変」「飲み忘れた!」ではなく、もっと自分主体の方法を選べるということです。望まない妊娠や出産において、精神的にはもちろん体が傷つくのは女性自身です。であれば、男性に任せるのではなく、自分本位の避妊方法がもっとあるということは知っておくべきでしょう。
避妊治療のみならず不妊治療に関しても、医療の進化で私たちの価値観が変わるかもしれません。
早乙女先生は、今後、体外受精技術や子宮移植、人工子宮など医療が進化していくことで、いわゆるセックス(挿入行為)を伴わない生殖が可能になってくると言います。これにより、現在妊活において問題とされている“セックスレス”は、問題ではなくなるかもしれないとも。
「挿入は、妊娠以外に必要ない」という考え
私の周りでは、「子どもが欲しいからセックスをがんばっている。でも本当は旦那とセックスをしたいとは思わない」という声もちらほら聞こえます。もしセックスをしなくても妊娠ができる時代が来たら、彼女たちはセックスをするのでしょうか?
「『女性にとって挿入は妊娠以外に必要ない』と考える人がいてもいいと思います。セックスが痛いと感じるならならやめればいい。夫婦だからという縛りではなく、性に関して『私はこうしたい』ということを真面目に発言すればいい。それができない日本は、性に対して不真面目な国なんじゃないかな。
年齢、性別、思想、婚姻状態に関わらず自由であるべき。女だから、父だから、母だからで自分を縛っている社会。もう少しだけ自由になることが大事なのではないでしょうか」
テクノロジーの進化によって、セックスをするしないの判断も自分主体で改めて考えるときがくるのかもしれません。