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沢尻エリカ演じるベタベタ清純派の良妻賢母が宿した小さなリアリティ/『母になる』第一話レビュー

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『母になる』公式サイトより

『母になる』公式サイトより

 2017年春クールの連続ドラマ、日本テレビの二桁鉄板枠といえる水曜10時(水10)枠は沢尻エリカ主演の『母になる』です。今を生きる3人の女性が『母になる』までの物語とのことで、登場するのは以下の3人。

・ドラマの主人公で、3歳の時に誘拐された息子と9年ぶりに再会した女性・結衣(母になることが自然だと思っていた)。演:沢尻エリカ
・結衣のママ友で、仕事と育児と家事とをこなしている女性・莉沙子(良い母になれないと悩む)。演:板谷由夏
・我が子ではない子を7年間育てた女性・麻子(どうしても母になりたかった)。演:小池栄子

 主人公の柏崎結衣を演じる沢尻エリカは、これまでにも単発ドラマや映画で母親役をやることはありましたが、連ドラ主演では初めて。沢尻の夫・陽一役は藤木直人(44)。この組み合わせ、どうしたって思い出してしまうのが、今から遡ること12年前の2005年の秋に放送された『1リットルの涙』(フジテレビ系、火9)。沢尻が連ドラ初主演にして難病の女子高生を熱演し、並々ならぬ演技力を世間に見せつけたアレです。藤木はそんな沢尻の主治医でした(錦戸亮や松山ケンイチや成海璃子も出演)。「別に」騒動が起こる2年前のことです。

 先日行われた『母になる』試写会&制作会見に行き、すでに第一話を視聴済みだったわけですが、4月12日に無事放送が開始したので晴れてネタバレ解禁、心おきなくレビューさせていただきます。

沢尻エリカ『母になる』試写レポート/テレビドラマにおける母親という存在の描かれ方

いかにもな清純女性を演じる沢尻エリカ

 まず冒頭。姿を消してしまった結衣と陽一の息子・広(読み方はコウ)のパーカーやスニーカーが、川から発見され、結衣、陽一、陽一の母・里恵(風吹ジュン)が警察に呼ばれます。伏し目がちな沢尻……ではなく、結衣。地味な色合いのチェックのシャツを第一ボタンまで留め、ジーパンに黒のスニーカーと控えめカジュアルな装いが“育児最優先の着飾らないお母さん”を印象付けます。里恵は「死んだみたいな言い方するんじゃないわよ!」と警官の胸倉をつかみ、床に泣き崩れたり、ひどく冷静さを失っている様子なのですが、その辺の事情も後々判明します。

 タイトルバックは、赤字明朝体でデカデカと『母になる』。背景には母子らしき人のつながれた手。からの田園にて、手招きするロングスカートの女性(母)に少年(息子)が駆け寄る、というもの……。ドラマタイトル及び題材的に致し方のないことかもしれませんが、ほんと頼むから、母性強調物語はやめてほしいなー。

 そんな悪態をつきながらも、幼き広くんの動画が映し出されると、胸が詰まりました。元気いっぱいに「柏崎広です!」と言う姿、親の手を取ってにっこり笑う顔、バスタオルを持っておどける様子、ハイハイで駆け寄る姿……。ああ、いつ何時どうなるかわかんないんだから、面倒くさがっていないで、もっと子どもの動画撮っておかなきゃっ! と(少なくともその瞬間は)決意しました。

 物語は、広の父と母、すなわち結衣と陽一の出会った頃に遡ります。

 2001年春。バスの中で結衣と陽一は出会います。いつも膝が隠れるくらいの丈のスカートかワンピース姿で、いかにも育ちのよさそうな清楚な娘さんといった佇まいの結衣と、理系男子でやや冴えない感じの陽一。北海道出身の結衣は、幼い頃に母を亡くし、男手ひとつで育ててくれた父も事故で亡くなり、肉親はいません。高校卒業後に単身上京、本屋で働いていました。古本や雑貨も扱うおしゃれな本屋です。大学の助教授で人工知能の研究をしている陽一は、客として結衣の働く本屋に通い、2人は徐々に親しくなりました。揃って奥手な性格のため交際発展には時間を要しました(話しかけるのに半年、名前を知るのにさらに半年)が、出会って2年目と思われるクリスマスには、陽一さん宅にておうちデート……陽一さんは結衣に顔面ケーキ食らわせているし、結衣が思いっきりキス待ちしているのにできないし、見ていて可笑しいやら歯がゆいやら……後に起こる悲劇を視聴者は知っているので、イチャイチャシーンがどうにもせつないわけです。

 奥手と言いつつやることやってるわけで、結衣は妊娠、すると陽ちゃんは早々とおむつやらドーナツ枕やらを買い込んで大喜び、2人は結婚します。陽一の母・里恵も大歓迎で大喜び。ちなみに陽ちゃん、バスでおばあちゃんに席を譲っている結衣に一目惚れしたそうで、何ともベタな話、ベッタベタです。心優しく美しい孤独な女性・結衣と、彼女を愛する男、そして妊娠……『おおかみこどもの雨と雪』の冒頭に近いものがあります。このドラマで姿を消すのは夫ではなく息子のほうですが。

 同じ頃、陽一の上司にあたる教授・西原太治(浅野和之)もデキ婚しました。お相手はヘアメイクの仕事をしている莉沙子(板谷由夏)。歳の差夫婦の2人はとてもラブラブなんですが、結婚式の日、莉沙子は自由な独身の仕事仲間を羨ましがって「この子ができてから、私の世界はどんどん狭くなっていく」「もう戻れないのかな」と憂鬱そうな表情で結衣にぼやきます。対する結衣は「私が莉沙子さんと同じ場所にいますよ」と前向き。両親を失いたったひとりで上京した結衣は、気丈に振る舞いながら一生懸命生きていましたが、世界にひとり取り残されたような淋しさを感じていたのも事実で、そんな結衣にとって「妊娠」「出産」は、世界が広がるような出来事だったのです。それまでの生活が充実しているほど妊娠出産という未知の世界に不安を感じ、逆にそれまで孤独や不満があったからこそ妊娠出産で挑む新たな世界に期待を持てる。その対極的な描写は納得のいくものがあります。

 それにしても、この結婚式での結衣のファッションは奇妙でした。黒のワンピースに黒のカチューシャに黒のクロスストラップパンプスと、ネックレス以外は黒づくめ。ワンピースに黒以外の刺繡や模様が入っているとか、ストールやヘアアクセが黒以外っていうのならまだしも、ちょっと黒過ぎやしないか? 喪服としてもいけそうだぞ。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

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