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妻や母になった人は自己犠牲が当たり前? なぜ夫に「子供を預かってもらってる」「働かせてもらってる」と気を遣うのか

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(C)messy

天使と聖母のくそ日記(C)messy

結婚前、たとえば男女が交際や同棲をしている状態なら、「彼氏(彼女)なんだからこうあるべき」という決めつけは、社会的な規範というより、カップル間のルールとしてしか存在しない。

たとえば、夜通し飲んでいようが、同性の友人と海外旅行に行こうが、周囲から「彼氏(彼女)が居るのに何やってんの!?」なんていう批判は、「浮気」という懸念が絡まない限りほとんど出ないだろう。

それは、男も女も、それぞれが自分の世界を持って生きることを許されているからであって、「朝帰りが多すぎる」とか「金遣いが荒すぎる」などという批判は、当人同士(カップル同士)や内輪の事情を知る近しい友人などが個人的にすることが通常。「一般的な共通規範」として世間から叩かれることはあんまりない。

これが、「結婚」という節目を挟むと少しずつ事情は変わってくる。

夜な夜な飲み歩いていたり、頻繁に朝帰りするようなことは、“家庭を顧みない行動”として「結婚してるのに何やってるんだ」と、世間一般から非難の対象になる。

長年の同棲期間を経て結婚したカップルからすれば結婚した途端に変わる何かがあるわけではないのだが、一般論としては「結婚したら自分の世界より家庭を優先させる」という考えが根付いているから、当人たちからしたら余計なお世話なことを周囲に口出しされることも多いかもしれない。

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「家庭」とは何だろうか? 定義、家族観はそれぞれだし、各自違って良いと思う。私の場合は、苗字を一緒にして衣食住を共にし、金銭的な部分も含め互いの生活を担い合う。つまり「運命共同体」となる……シンプルにこんなイメージを持っている。

夫と独身時代に4年の同棲生活を送った私にとっては、結婚を機に変わったことはひとつだけ、「苗字を一緒にする」ということ以外は何もなかった。同棲段階で衣食住を共にし互いの生活を担い合っていたからだ。

 

結婚・家族に関する社会規範で代表的なもののひとつに、「夫が妻を養う」というものがある。男性自身、「一人前に稼いで妻子を養えるようになったら」を結婚の条件として自ら(とその彼女)に課している人は多い。結婚するとなった時に男性がフリーターで貯金もない状態であれば女性の両親は反対しがちだし、また、女性がずぼらで家事一切できませんとくれば、男性の両親は心配しがちだ。いやいや、同棲期間は十分それで生活してこれたハズなのに、入籍でいきなり「条件」が加わるのはなぜ……? 「夫」は家族のために稼ぐのが仕事だし、「妻」はそんな夫を献身的に支えるのが仕事……専業主婦が主流だった時代の考えが、今なおこの社会にこびりついているからだろう。

同棲と違って、「結婚」=「子をもうける」ものだと認識されているから、「夫がフリーターなんてあり得ない」「妻がごはんをつくれないなんてあり得ない」というのもある。子供が産まれれば、生活費など負担が増えるのは当たり前だし、ましてや学費など大きな出費も待っているのだから、我が子には高校~大学へ進学してほしいと考える人なら、金銭的に余裕が出来てから結婚&子作り、と思うのは普通。

古くからの考えに基づけば夫は家族全員を十分養うだけの収入がなくてはいけないし、妻はそんな夫の健康面をサポートしながら子育てを含め住み良い家を維持しなくてはならない。となれば夫に収入がなくても困るし、妻に家事スキルが全くなくても困る。

しかし何度もこの連載で繰り返してきたけれど、ダブルインカムの時代だ。夫一人だけの収入で家族全員を養い、子の学費を捻出することは容易ではない。だから妻も仕事を辞めない、あるいは出産で退職してもパート等で働き続け、夫だけの手取りなら月23万の家計を月33万、はたまた月50万といった具合に増額したりしている。

だから現実的には、「男側の収入が少ないから結婚すべきでない」の常識を当てはめてしまうと、多くの男性が「結婚すべきでない」対象になってくる。とにかく稼げ、というプレッシャーがのしかかる既婚男性は気の毒ですらある。

一方で、私は、それでも既婚男性には自由があるように見える。以前にも書いたが、深夜の居酒屋で盛り上がっている子持ちの男性はウヨウヨいるが、同じく子持ちの女性はほぼ見かけない。いたとしても女性には「今日お子さんは?」とか言う投げかけがどうしてもセットでまとわりつく。

テレビでも、深夜の飲食店などで一般人へインタビューをする企画がニュースやバラエティで数々映し出されているが、対象が男性だと決してそんなことはないのに、家庭を持った女性が集団で盛り上がっていると「今日ご主人は? お子さんは?」と、お決まりの質問。

まるで、家庭を持ち子を産んだ女性は、本来なら深夜こんなところでハメを外しちゃいけないかのようだ。「父親が家で子供と寝ていて、母親が居酒屋でくだをまく」って、そんなに風変わりなことだろうか?

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小出 愛

1981年生まれ、学生時代から10年以上スポーツ一本、卒業後はスポーツトレーナーとして第一線を志すも、いろいろあってパチ屋店員に。そこで旦那と出会い、結婚、2016年に第一子出産。プロレスは知らないけど猪木が好き。ママ友ヒエラルキーには入りません。

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