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3歳まで育てた産みの母は「何も知らないおばさん」…育ての母の強烈な手紙/『母になる』第二話レビュー

【この記事のキーワード】

本当のママと新しいお母さん

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コウへ

ママがこれから行く場所はすごく遠い所です。手紙を書くのもやっとです。だから今こうして急いでいます。どうしても伝えたいことがあるの。(中略)繰り返しよく読んで下さい。

一つ、ママはママじゃなくなる時が来ます。あなたの前にいつか新しいお母さんと名乗る人が現れます。きっとそんな日が来ると思うの。

一つ、その時はちゃんとご挨拶するのよ。「お母さん会いたかった」って。できたら涙ぐんだりするのもいいかもしれない。

一つ、相手はいきなり抱き締めてくるかもしれない。嫌がらずにじっとしてること。

一つ、一緒に暮らそうと言ってくるかもしれない。コウ、その時は逆らったりすると困ったことになると思うの。だから黙ってうなずいておけばいいと思います。

あなたの前に現れた新しいお母さんは、あなたをどう扱っていいかわからないはずです。トト坂のことも、ママと広と二人で暮らした西日の当たる傾いたアパートのことも、そんなことも何も知らない人です。コウが何が好きで、どんなことに興味があって、どんな風に大きくなったか、どんなものを食べると出されるとうれしくて、どんなものを出されると困った顔になるか、目の前に現れたその人は何も知らない。何も知らないおばさんはいきなり現れてお母さんだと言うの。怖いね。とても怖いことだと思うの。でも笑ってあげなさい。優しくしてあげなさい。「会いたかった、お母さん、お母さん」って甘えた感じで何度も言ってあげるといいと思います。何度も何度も「お母さん、お母さん」って、ニコニコ笑いながら言ってあげるといいと思います。

そして最後に一つ、何を出されてもおいしいと言って食べなさい。「こんなおいしいもの初めて食べた」と言って喜びなさい。ママの作ったカレーやコロッケや魚の煮つけが大好きだったことはママとコウだけの秘密です。コウ、ママとコウだけの秘密、いっぱいあるよね。 忘れないでね。いい子にして待っていてください。コウ、コウが会いたいと願えば、ママは会いに行きます。コウが望めばママが迎えに行きます。だからどうかどうか忘れないで。ママはいつだってコウのそばにいます。コウの心の中で生きています。コウ、大好き。コウ大切な愛しい我が子。

あなたのママ麻子より

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……結衣の前で明るく振舞う広の態度は、言ってみれば全部、麻子ママの遠隔操作だったわけです。広には自分の知らない9年間、自分以外の女性を「ママ」と呼んでいた7年間があるという事実を、結衣は突き付けられました。いやいや、麻子さん……あなた、迷子の子供を見つけたら、警察に相談するべきだったわけじゃないですか。お財布拾ったら交番に届けますよね。それをしないで、子を誘拐された実母を「新しいお母さん」扱いしてまるで“私たち共通の敵”みたいに書くって、一体どういう神経でしょう?

広は自分のことを「何も知らないおばさん」だと思っている、と突きつけられた結衣。しかし、「見つかったんだもの。生きてたんだもの。知らないおばさんでもいい。『お母さん』と嘘で言われてもいい。あの子と暮らします」と、施設から引き取り養育することを陽一に宣言します。「私、何も知らないかもしれないけど、ひとつ、たったひとつだけ、大事なこと知っている。あの子の誕生日、私は知っている。私が産んだから。あの子を産んだのは私だから」確かにそうですね。

一度は立ち去ろうとした陽一も、結衣の元へ戻り、「僕はずっと引きこもっていたから君よりツナサン(広が好きなゲーム)うまくやれるよ」と、自分も一緒に暮らしたい旨を伝えます。陽一さん引きこもっていてもスマホ所有でした。結衣に歩み寄って抱き締め「……生きてた。あいつ、あんなにでっかかった。生きてた。一緒に、一緒に暮らそう」と、涙、涙の陽一。本当の両親は自分たちだし、すぐには無理でもいつか絶対広は心を開くはず。2人はそう信じているのでしょう。でも、広の心は……? そして広にとって「本当のママ」である麻子の行方は?

いや~、9年間行方がわからなかった息子が見つかっただけでなく、再会、抱擁、電話、手紙、外泊といった「息子と接触する」ことがあっさり可能になっていて拍子抜けました。両親としては今すぐ会いたいと思っても、いくつか込み入った事情があってしばらく実現できない……といった展開にはならなかったんですね。広の心は明らかに麻子ママ寄りですが、でも結衣には無関心なのかといえばそういうわけでもないように思えます。知らないおばさんだと思っていたら、わざわざ結衣のアパートを訪ねますかね? このドラマは、血縁があるから親子だ、とは言い切れないということを鋭く突いています。麻子のあの手紙は、「私こそが広の本当のママである」と雄弁に語っていました。家族とは、親子とは何なのか? 連ドラ1クール三カ月という長丁場(海外より短いですが)でじっくり描いてくれることを期待します。次回予告では、広が陽一の実家を訪ねるシーンがありましたが、祖母の里恵が余計なこと言い出さないか心配です。

沢尻エリカ『母になる』試写レポート/テレビドラマにおける母親という存在の描かれ方
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あなたのことはそれほど

人は見た目が100パーセント

ボク、運命の人です。

 

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

児童福祉司 一貫田逸子 かくされた子ども (LGAコミックス)