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伊野尾慧、岡田将生にも愛されまくる藤原竜也の男子力

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 八重歯が可愛いよなぁなんてワクワクしながら、まずはマネージャーさんにご挨拶。すると、女性マネージャーさんから挨拶もなしに「撮影なんですが、藤原は疲れているので歩かせないで欲しいんです」と、初対面でいきなり不思議な先制パンチを食らったのよね。当時駆け出しだったアツは、頭の中は“?”でいっぱいだったけど「芸能界ってこんな感じなのか」と納得させて、とりあえずカメラマンさんにその旨を報告したところ「オ~イ! それ、ど~ゆ~ことだよ? 十代の男子が歩けないってケガでもしてるのか?」と案の定叱られてしまい、もう一度マネージャーさんに確認してみると「ケガはしていませんが、舞台稽古とドラマの撮影で疲れ切っているので、歩かせたくないんですっ!」とにべもないお返事で、緑多い地にやってきたというのに、無機質なビルの中でのちょっと味気ないグラビア撮影になってしまったのよね。あれから20年、後にも先にも「うちの俳優を歩かせないでください」なんて言われたことはないから、よっぽどのことだったのかしらね?

 で、撮影後にインタビューをしたんだけど、その時点でアツはかなり腰が引けちゃってたのよね。なんたって撮影のために10mぐらい歩かせちゃってたし、もうビクビクしながら「お疲れのところ、すみません」って謝ったら、不思議そうな顔をして「えっ? 大丈夫ですよ」と言ってくれて。勝手に怖がってしまったけれど、本人はいたって自然体で「お疲れですか?」の問いにも「う~ん、稽古がちょっとキツくてね」と苦笑いしつつも穏やかな口調で話し始めたのよね。なぜかインタビューにはマネージャーさんは同席せず、気がつけば畳の部屋に2人っきり……。ただ足が痛そうだったのは確かで、畳の上に直に座るのはちょっと苦痛だからと、笑点のように座布団を何枚か重ねて座り、自分だけ高い位置に座るのはきまりが悪いとのことで、私にまで座布団を何枚か渡してくださって「ちっともワガママ少年じゃないのね!」と拍子抜けしちゃったのを覚えているわ。

 そのインタビューで「最近は稽古着しか着ないから、ずっとシャカパンで過ごしてる」という話になって、“シャカパン”を知らなかった私に「ナイロンとかのパンツなんだけど、動いたりするとシャカシャカ音がするから“シャカパン”って言うんだよ」と履いていたシャカパンを触らせてくれて「ホラ、シャカシャカ音がするでしょ? 洗濯しても乾くのが早いし、すごく楽なんだ」って無邪気に話していて、天才新人俳優の素顔があまりに普通だったことや、つたないインタビューにも丁寧に壁を作らずに答えくれる姿にすっかり魅了されちゃって、マネージャーさんの「歩かせたくないんです」発言にも「きっと大切に育てたいんだろうなぁ」なんて同調しちゃって。恥ずかしながら「藤原竜也は絶対来るね!」と勝手に宣言しながら、気が付けば早いものでかれこれ20年……。舞台はもちろん映画やドラマでの活躍は、今さら話すのもおこがましいほどの名俳優よね。

 この20年間、藤原さんはいつ会っても自然体で、いつも周囲には多くの人が、しかも男性がいっぱいいるの。話を1年前にリバースすると、恩師の蜷川さんが亡くなって、人目もはばからず泣き崩れていた藤原さん。慟哭の深さにこちらまで胸が詰まったわ。

 でも、蜷川さんの葬儀のすぐ後から主演ドラマ『そして、誰もいなくなった』の撮影が入っていて、翌日は取材日だったの。取材陣もどう接していいかちょっと迷っていたんだけど、現場に現れた本人はしっかり気持ちを切り替えていて「メソメソなんかしてたら蜷川さんに怒られるから。それこそ昔はよく『秩父に帰れ』って言われてたんだけど、本当に秩父に帰らなきゃいけなくなるよ。今ちゃんとやんなきゃ、後で何言われるかわからないもん」と八重歯を光らせて笑いながら話す彼の姿を目のあたりにして、人間としても役者としても「この人は一流なんだな」と改めて感じたのよね。

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秘密のアツコちゃん

約20年間、アイドル、タレント、女優、俳優、監督や脚本家など、さまざまな業界人とともに仕事をしてきた結果、気づけばとんでもなく情報通に。毎日、テレビ局や出版社、レコード会社や映画会社などに日々出没し、マスコミ界隈をふわりふわりと歩き回っている。無性にピンクの花が好き。

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