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性について「ノー」を強く言えない私たちに、スウェーデンから届いた教え

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 今年に入って、海外の「セックス観」に励まされることが多いです。スペインを拠点としてフェミニスト視点でポルノムービーを発信しつづけるエリカ・ラスト然り、サンフランシスコ発の「セックスポジティブ」カルチャーを伝えてくれたMIDORIさん然り。

 雑誌のセックス特集やネットにあふれるトンデモ性知識、巷にあふれる性表現のなかでも見るだけで女性としての自分の何かが損なわれると感じるもの……そういったものにじゃんじゃんツッコんでいきたいと思ってきましたが、こういうのって見聞きするだけで、澱のようなものが自分のなかに溜まっていきますね。

 となると、良質なもの正当なものを吸収して、自分をエンパワーしたくなるんです。デビ・ブラウン著『アスピーガールの心と体を守る性のルール』(東洋館出版社)を手に取ったのは、エリカ・ラストの母国であるスウェーデン在住の女性による著書だと知ったから。エリカ・ラストは自身が出演したプレゼンテーション番組「TED」で、「私はスウェーデンから来ました。おそらく、フェミニストとしての意識が育つには最適な場所、世界で初めて性教育を学校で必須にした国」と語っていたのを思い出したのです。

 同書は、アスペルガー症候群の女性=アスピーガールに向けて書かれたもので、コミュニケーションや対人関係につまずきやすいとされる彼女らが恋愛やセックスに臨むとき、最低限知っておくべきことが解かれています。周囲と関係を築けずに孤立し、そこにつけ込む輩から性暴力を受けることも多いアスピーガール。それでも性に関する知識や、コミュニケーションのハウツーが身についていれば被害を避けることができ、二重にも三重にも生きづらさを重ねずにすむ……というわけです。

 しかしページを繰れば、これは十分な性教育が受けられないまま性の問題と対峙しなければならない、日本人女性全般にとっても非常に親切な内容だと感じました。何がすばらしいって、性に関する本なのに外性器の図解は後回し、避妊や感染症予防について出てくるのも後半になってから、まずは「自分を好きになる」というイシューからスタートする点です。

性教育は何を知ることから始まるか

 自身への理解はアスペルガー女性にとって特に重要で、それができて初めて“サポーター”と呼ぶ自分のことを理解し味方になってくれる人を見つけることができるそう。

 私、じんわりと感動しました。性教育といえばもういきなり男と女の話から入りますが(その他のセクシャリティは無視されがちだし)、基本は人と人とのあいだでおきること。そしてそれは、とりもなおさず自分自身に立ち返ってきます。ここが抜け落ちたままいきなり“性”をともなう人間関係を築けというのは、むずかしい話。逆三角形の積み木を倒立させようと思っても不可能なように、グラグラと不安定な状態はそう長くキープできません。

 そこから「彼氏とはどういうものか?」「相手に“ノー”と言う方法」と続きます。こんなこと、私たちも習ったことがないですよ。思春期前ぐらいから少女漫画や(たまにちょっとだけ盗み見る)恋愛ドラマを元に、考えることもなく「男と女は恋愛をするもの」と刷り込まれ、もう少し年齢が上がったら自然に「交際したら、セックスするもの」へと変化します。セックスに対する不安はあっても「絶対しなきゃいけないものなの?」と疑問を感じたことはありませんでした。

 同書はキスもセックスも「みんながするもの」「しなきゃいけないもの」と思わなくていい、と説きます。この思い込みがあるから「ノー」をいいにくくなっていて、ほんとうはしたくなくても男性を受け入れている……私もいままでそんなことを何度もくり返してきましたが、同じ経験を持つ人は少なくないでしょう。

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桃子

オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

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