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「男らしさ」に縛られていない若手俳優が、権力闘争に奔走する高校生を演じる痛快さ『帝一の國』

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(C)2017 フジテレビジョン 集英社 東宝 (C)古屋兎丸/集英社

(C)2017 フジテレビジョン 集英社 東宝
(C)古屋兎丸/集英社

前回紹介した『モアナと伝説の海』のことを、男の子がヒーロー願望に縛られる必要はないけど、だからといって無理やり捨てることもないというメッセージが込められた作品ではないかと書きましたが、今回取り上げる『帝一の國』も、男の子にとってのヒロイズムとは何なのかが見える作品という側面がありました。

本作は、以前この連載でも紹介した『ライチ☆光クラブ』と同じく古屋兎丸の漫画を原作にしていて、やはりアクの強い作品です。全14巻と比較的長めの原作ですが、良いシーンをうまくつないだことによって主題を見えやすくすることに成功していました。

なにより菅田将暉、野村周平など今をときめくイケメン俳優たちが群像劇を演じるというところだけでも目をひくでしょう。しかしこの作品はイケメン俳優を起用することだけを目的に作ったのではないことは、見ればはっきりわかります。

「男らしさ」に縛られるキャラクターと縛られないイケメン俳優

ストーリーは、生徒会長になれば、将来、内閣に入ることが確約されるという超名門の海帝高校を舞台に繰り広げられます。幼いころから父親に生徒会長になることを期待されていた赤場帝一(菅田将暉)は、自分の国を作るという夢を抱いて海帝高校に入学します。帝一はまず一年生でクラスを代表するルーム長になり、生徒会長選挙で誰を支持するかという権力闘争の中に入り込んでいくのでした。

海帝高校の選挙制度は、直接生徒たち全員が一票を持っているのではなく、選ばれたルーム長によって生徒会長が選ばれるものです。ルーム長たちが誰につくかを見定め、そして自分がついた候補者が会長になるために暗躍する様子は、日本の総裁選を思わせます。また、重要なことが生徒会室(会議室)で決まることからして、これは『シン・ゴジラ』や『踊る大捜査線シリーズ』のように、あるコミュニティにおける‟政治”の話だとわかります。実際、作者の古屋兎丸さんもツイッターで「参考にしたのは『白い巨塔』『浅間山荘事件』『官僚たちの夏』『民主党の埋蔵金の一件』といった政治、思想絡みのものだし」と言及しています。

前回の『モアナ』について男の子(マウイ)が抑圧から解放される話だと書きましたが、こうした‟政治”に必死になること、つまり男社会のしがらみに縛られることは、現実社会では今時の気分ではないはずです。むしろ、そこから自由になるのが現在の気分なのではないでしょうか。しかし、映画の中で政治に夢中になる帝一には、ヒロイズムへの傾倒が感じられるし、帝一から逐一選挙の様子を報告される恋人の白鳥美美子(永野芽郁)の戸惑いや突っ込みに共感するところも多々ありました。

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西森路代

ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクショ ン、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、 TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

twitter:@mijiyooon

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