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何かというと「愛情不足では?」真面目な親ほど追い詰められる

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(C)messy

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望ましい子供らしさとは

通常、大人の行動には無意識にしろ思考の結果にしろ、いろんな要因、目的がある。だから、たとえば会社で連絡なく出社時間を過ぎてもやって来ない社員がいるとき、同僚は「具合が悪いのか?/電車が遅延したのか?/寝坊してるのか?/はたまた休みだと勘違いしてるのか?」などなど、推測をめぐらす。様子がいつもと違う……果たしてその理由は!? と、理由を求めるのだ。

表情ひとつとってもそうで、上司の態度がいつもと違って妙に悪かったら、「具合が悪いのか?/不機嫌なのか?/自分が何か失礼なことをしたのか?」等と理由を探って可能性を検討するだろう。「気にかけない」という選択肢もあるが。

「こうだからこう!」と断定できるほど人間はパターン化されていないので、もちろん上にあげた事項とは全然別の理由で上司の態度に変化がもたらされたのかもしれないし、あるいは何も変化はないのに受け取る側(すなわち自分)の深読みしすぎ、誤解だったという可能性もある。

こんな風に、自分から見える一つの光景は、複数の要素が複雑に絡み合って出来ているので、「あの上司の表情、あれは嫁と昨日喧嘩した顔だね」なんて言い切るのは何だかカルトな臭いがする。

しかし、対象が乳幼児となるとどうだろうか。乳幼児を対象とした育児文化では、こんな気味の悪い決めつけ行為が日常的に行われていないだろうか? どうも健康な発達とは別に<健全な子供らしさ>というものがあり、そこから外れると、矯正すべき対象になってしまうようなのだ。

子供はたくさんの愛情を受けて、たくさんご飯を食べて遊び、豊かで純粋な感受性を持つのがスタンダード。本来の心身ともに健康な子供の姿はこうだ! という一つのイメージ図に、私たち社会は振り回されすぎではないだろうか。その“子供らしさ”にあらゆる子供を押し込めることは、人間の扱い方としてあまりにも雑であり、イメージとしても漠然としすぎている。

人間の性格は色々だ。おしゃべり好き、寡黙、屋外で過ごすことを好む、屋内を好む、群れたがる、少人数を好む、細かいことを気にする・しない、騒がしい場所が好き・嫌い、活字が好き・嫌い、器用・不器用、大胆・慎重、本当に様々な人がいる。ということは、子供の性格もまた、大人と同じくらい色々だ。生まれつきの性質や体質は当然異なるし、成長の過程も人それぞれ違うし、嗜好だって十人十色。だから社会から求められる理想的な“子供らしさ”は、各子供にとっては意味をなさないものではないだろうか。

もちろん、発達心理学的に「このような発達を辿ることが望ましい」とされる基準はあるのだろう。けれども、親たちはそれを乳幼児の「傾向」として知識に入れておく程度では良いのではないか。むしろ、「子供だからこうあるのが望ましい」とか、「子供らしくないのは親が××なせいだ」と素人が判別してしまうことのほうが、親の心理状態にとって危険だと思う。

いわゆる専門家の書いた育児本や、育児中の保護者を対象とした雑誌は、さすがに迂闊な決めつけはそうそうしていないだろうと思いたい(「男の子育児」「女の子育児」と、子供の性別によって内容を変える傾向は明らかにあって、それにはどうしたって閉口するが)。しかし、子供らしさのイメージを固定させて根拠なしに「お子さんが△△なのは、親御さんが××だからでは?」と投げかける「いかがでしたでしょうか?」系記事が、ネット上には大量にあるから始末が悪い。

先日、『マーミー』という“~ステキなママになるための子育てメソッド~”を提供する、というサイトの記事を読んだ。「子供の愛情不足7つのサイン&子供を救う大人の接し方」という記事によれば、子供が以下の<サイン>を出していたら<愛情不足>かもしれない、とのことだ。

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愛情不足のサイン7つ

(1)指しゃぶりや爪噛みなど→ストレスや不安の表れ。

(2)人の物を隠す→「構ってほしい」という気持ちの表現。

(3)何でも自分でしようとする→親に甘えられないから。

(4)パパやママ以外の大人に甘える→「子供はいくつになっても甘えたいもの」。親に甘えられない子は他の大人に甘えることで愛情不足を補う。

(5)無表情になる→親が一緒に笑うなど反応をしてくれないと、次第に表情が乏しくなる。

(6)嘘をつく→「構ってほしい」という気持ちの表現。

(7)色のない黒い絵を描く→「子供は本来ならそこにあるたくさんの色を使って人物や物、景色を描こうとする」が、色のあるものでも黒色で塗りつぶすようなことがあれば、愛情不足による不安やストレスを抱えている可能性がある。

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ほとんどの項目で、「子供とは本来〇〇なものです」と決めつけられていることに、私は驚いた。その“本来の行動”と異なった行動=異常がある状態、とみなすのだろう。しかし「こうきたら愛情不足」と半ば決めつけているようなものなのだから、7つの項目はもっと根が深いようなものを思い浮かべただけにビックリだ。ちなみに私の息子はこの項目ほぼすべてに当てはまっている(6と7はまだ1歳未満なので判断不可能)が、同サイトのカテゴリ分けから見て、おそらくこの記事のさす「子供」は0~1歳児のことではなく、2歳以上をさしているのだろう。

それにしたって、こうした情報の量産および拡散と浸透が、いたずらに親、特に真面目な母親たちの不安を煽り、追い詰めているということが、どうしてわからないのだろうか。

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小出 愛

1981年生まれ、学生時代から10年以上スポーツ一本、卒業後はスポーツトレーナーとして第一線を志すも、いろいろあってパチ屋店員に。そこで旦那と出会い、結婚、2016年に第一子出産。プロレスは知らないけど猪木が好き。ママ友ヒエラルキーには入りません。

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