話は変わります。私はストリップファンですが、どの世界にもコミュニティというものはあるもので愛好者が集う掲示板がオンライン上にあります。そこで女性客に書いてある記述を見つけたので読んでみたところ、「自分たちが痴漢だと間違われそうだから、女性客は迷惑だ」という書き込みを見つけたのです。
なんと、その場に女性がいるというだけで相対的に自分が被害者になると感じている!? と驚いたのですが、よくよく読むと彼らは「邪魔なところに立っているから、通路を通るとき接触してしまうかもしれない」「女性がバッグから何かを通りだそうと屈んだ拍子に接触してしまうかもしれない」と恐れているのでした。
痴漢への思考停止に恐怖する
それ、女性に声をかければいいだけじゃないでしょうか。女性客は慣れていない人も多いので、立ち見のときに適切でないところに立ってしまうこともたしかにあるんです。だったらそう注意すればいいだけだし、あまりにシャイで自分でそれができないならお店のスタッフに頼むこともできます。第一、偶然の接触かそうじゃないかぐらい女性もだいたいわかりますから、それで「痴漢だ!」と騒がれることなんて、そうそうないはずです。
「俺たちが被害者になるかもしれない」ことに対して男性はこれほどまでに敏感なのですね。ここのところ「痴漢の疑いをかけられて線路に立ち入り逃走した」男性のニュースが相次いでいます。そのたびに「冤罪が! 冤罪が!」コールが特にネット上で飛び交います。その男性が痴漢行為をしたのか/してないのかは検証されないままに、条件反射的に拳を突き上げる男性のなんと多いことか。
逮捕→9割以上の確率で有罪になるというシステムについては議論と改善が必要だと考えていますが、そういう建設的な議論をしたいわけではなく、ただ「俺たちこそ被害者」ということを認めてほしいーー男性たちのシュプレヒコールを見ていると、そうした心理が見えてきます。
それは「痴漢そのもの」についての思考をまったく停止させてしまうことでもあります。当然、広く性暴力、性犯罪についても考えられるわけがありません。それが一部の男性の極端な考えではなく、もっと多くの男性が意識的、無意識的に持っているものなのかもしれない。私はそう感じて、恐怖したのです。
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