私が雑誌を手に取るとき、それはセックスに関する特集が組まれているときです! 今月は「with」「MORE」の2誌で同特集が組まれています。両誌の読者対象は、“最大公約数”的な女性。「an・an」のように表紙に人気タレントのセミヌードをバーン!と載せて、「愛とセックス!」「感じ合うセックス!」なんて謳われると恥ずかしくて書いにくい……という女性たちです。「with」も「MORE」も申し合わせたように表紙の右上に小さく、セックス特集が告知されています。むっちゃ控えめ。
セックスと一口にいってもどう切り取るか、どの側面に光を当てるかで様相は大きく異なります。今回の2誌は「うちの編集部は読者のことをこう見ています。だからセックスのこういう側面を伝えたい」という違いがはっきりと表れていました。順番に見ていきましょう。
結婚できるセックスを説く「with」のズレ
特集タイトルがずばり「結婚できるセックス」。はい、すでにイヤな予感がしますね~。冒頭で、色仕掛けで妻の座を得ることを勧める意図はなく、「恋愛と結婚の介在するセックスと“本気で向き合う”ことの重要性を探る」のが主旨だといいますが、1ページめくれば熊田曜子さんがさっそく「すぐに(セックスを)してしまうと、奥さん候補にはならない」とウン十年前からの手垢がつきまくったアドバイスをし、20回以上お泊りしているのにセックスしようとしなかった男を、いい香りのシャンプーとボディクリームに切り替えることで落とした逸話を披露します。ちなみに「何もしてこなかった」のはたった1カ月間の出来事。1カ月で20回お泊りってスゴイな。それとも、かなり盛ってる?
つづいては「結婚できるセックス」と「できないセックス」の二項対立を打ち出し、医学、心理学、脳科学、社会学の識者がそれぞれ解説します。でもそこには「告白するのは男性から」「褒め上手はセックス上手」といった“男を立てろ”論とか、「下着は清楚な色を」「BMIは20前後に」といった“男性に欲情される見た目になれ”論とか、あれ、いまってまだ20世紀でしたっけ? 的なアドバイスばかり。「奥の手は、できちゃった婚!」という、危険極まりない助言も出ています。“婚”になればいいけど、女性の心身だけが傷ついてオシマイという結果になったらどうすんですか。
要は「すばらしいセックスを提供すれば、男性に選んで“もらえる”」という提案がズラズラ並んでいるのです。「この人こそ!」という相手がいて、結ばれたいと思うこと自体はとても自然です。でもそこで「セックスで彼を気持ちよくすれば、選んでもらえるよ!」というのは、女性の人間性や社会性ってどこ行ったの……とむなしくなります。
こうした場合、男女を逆転して考えるとそのおかしさが際立ちます。男性が意中の女性に結婚相手として選んでほしい、というシチュエーションも世の中にはままあります。が、そこで「オナニーは婚活の一環」といって夜な夜な励んだり、「同じテレビ番組を見る」ごときで相手の心をつかめると思っていたら……そんな男性、ちょっと遠慮したいと思いませんか?