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女子を「応援する」つもりで呪いを強化してしまう、悪気はないとしても/『人は見た目が100パーセント』第八話レビュー

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『人は見た目が100パーセント』公式サイトより

『人は見た目が100パーセント』公式サイトより

視聴率は低空飛行を続ける連続ドラマ『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)、第八話は5.8%で下降線はほぼ5%台で安定した模様です。月9『貴族探偵』もそろそろここに追いつきそうな気がしますけどね。数字がすべてじゃない。しかし面白いと評判になる番組は数字に表れている。シビアですね。

【第一話】「呪い」を強化し、女性をバカにしているようにしか見えなかった
【第二話】このクソ「セクハラ」ドラマを垂れ流していいんでしょうか?
【第三話】“女性視聴者に必要なモノ”を狙った結果、完全にスベッている
【第四話】狭すぎる女子定義、知ってる情報しか流れてこない
【第五話】女子モドキを卑屈にさせるのはキラキラ女子ではなく「正しい女の在り方」を決めてかかる社会ではないか
【第六話】「“女性として”認められるためにカネを使え」って脅しでモノ売るのやめませんか
【第七話】女磨きサボッたら女失格だけど「キラキラ主婦は家事育児放棄してそう」と蔑むダブルバインド!

応援してるんでしょうけど…

八王子の製糸研究所に勤めていた3人の研究職女性・城之内純(桐谷美玲)、前田満子(水川あさみ)、佐藤聖良(ブルゾンちえみ)は、保湿効果が高く新たなファンデーション開発の要となる貴重な繊維素材「セルロースナノファイバー」の開発が認められ、丸の内にある大手化粧品メーカー「クレエラジャパン」に研究室ごと異動しました。しかし同社は「セルロースナノファイバー」の開発成果を奪い取りたかっただけで、3人は異動してきた途端に“干され”扱い。というかオシャレや流行に無頓着で美意識の低い純たちは、社内で人間扱いされないどころかクビ寸前の窓際族に追いやられてしまいました。

ここで「ひどい!訴えてやる!」とならず、クビにされるのを恐れた純たちは(再就職できる気がしないという)、スーパーデキる女上司・松浦さん(室井滋)に認めてもらうべく女子力研究に邁進。ちょっと意味がわからないですよね、でもそういうドラマなのでもうここツッコんでも先に進めません。

そのうちに純は、会社と同じ敷地内にある人気美容室ルーチェのトップスタイリスト・榊(成田凌)に恋。聖良は同じく八王子から異動してきた研究員の丸尾(劇団EXILE町田啓太)に恋。彼女らの「可愛くなりたい」目的は、恋愛成就のためにスライドし、するといろいろな歯車がうまく回りはじめたんですねえ~。

今回は、純、満子、聖良が、“高級ファッション誌”の「DIONE」でインタビュー取材を受けることになりました。「製紙素材であるセルロースナノファイバーを化粧品に転用することに注目した雑誌サイドが、八王子製紙から移ってきた研究員から話が聞きたい、と指名してきた」ためです。ダサダサの三人娘が代表ヅラして「DIONE」誌面に登場するなんてありえな~い、と同僚たちはブーイング。純たちも激しく動揺し「そんなの無理です」と及び腰です。しかし彼女たちを叱咤激励してきた女子力に詳しい上司・國木田さん(鈴木浩介)は、「統括マネージャーの松浦さんに認めてもらうチャンスだよ!」と鼓舞。というわけで、取材に備えて<かわいく写真に撮られる>研究を始める純たちなのでした~。

写真に撮られるのが苦手、という人は世の中に多いものと思われます。一人で鏡の前に立てばキメ顔できるけど第三者のカメラレンズを向けられると恥ずかしくて無理、そもそも自分のイケてる表情がわからない、確実に目をつぶってしまう、笑顔がひきつる、などなど。純たちはみんなそういうタイプ。いや不思議なのが満子で、高校時代は黒ギャルで気が強いタイプで、友達同士で写真撮影バンバンしてそうなんですよね。彼女のキャラは一番謎です。

自撮りにチャレンジしたりアヒル口を練習したり努力する中、セルロースナノファイバーの機密データが他社に漏えいしていたことが発覚し、干され組である純たちが「腹いせにやったのでは」と社内で疑われる展開に。研究員たちから泥棒呼ばわりされ、踏んだり蹴ったりです。証拠ないし事情聴取すらされないのに。名誉毀損〜。

上司・国木田を演じる鈴木浩介さんがお上手なのでドタバタパートも何とか見られるのですが、この国木田さん、最初はすっごくヤな奴だったのにだんだんただ親切ないい人になってきました。聖良を「野生児」、満子を「問題児」と呼び、可愛がっているようにも見えます。が、国木田さん、実は今、競合他社からヘッドハンティングのオファーを受けていて、転職に心揺れているのでした。その心境を純にだけ明かし、松浦女史の情熱的でガッツ溢れる仕事のやり方に惚れてここまでついてきたけれど、今は迷っている……と苦悩を見せます。

最終的には、引き抜きの動きを嗅ぎつけていた松浦女史から「しんどいでしょ? わかるわよ。 でもみんな同じだから。ここまでやって来たんだから、もっと上を目指しましょ」と言われ、国木田さんは彼女に認められていたのだと感じて泣きながら残留を決めます。うーん、国木田さんが「しんどくて転職検討してる」んなら、待遇改善とか、負担軽減とかはしないの? 「頑張りましょ」って言うけど根性で乗り切れない局面なんてたくさんあると思うのですが。まあお仕事ドラマではないのでその辺も深く描きはしません。じゃあ何ドラマなんだよって感じですが、ズバリ広告ドラマです。

やがて情報漏洩の犯人が分かり(先月退社した社員が金に困ってデータを売った)、疑いの晴れた純たちはついに「明日からあなたたちもセルロースナノファイバーの開発に加わってちょうだい」と言われました。良かった……のか? 散々、純たちを冷遇した松浦女史も、同僚研究員たちも一言も謝罪してないんですが。それでいいの、よくないよ。あと八王子勤務からいきなり丸の内勤務になった純たち異動組は通勤大変だろうなっていつも思います。

このドラマは「女子たちー! 頑張ってれば認めてもらえるんだよ☆ 努力はきっと報われる!」って呼びかけてらっしゃるように感じるのですが、その「頑張る」ベクトルが周囲の求める女性像を体現する方向を向いてるのがしんどいです。女子を応援する、ってみんな簡単に言うけど、難しいことだと思うんですよ。だって数え切れないほどの呪いがまとわりついてるんですもん。その呪いを解く方向で「応援」できますか? 呪いを解くと社会的に不都合なこと、たくさんありますよね。テレビとかそのスポンサー企業とかにとっても不都合なこと。だからって「応援する、頑張れ」と言いながら呪いを強化するような真似、絶対にしないでいただきたいと思うんですけど、このドラマはそれになっちゃってますよ。

ラストシーン、榊さんがいきなり純にキスをして告白しました。キスしてから「好きです、付き合ってくれませんか、僕と」って。いや先にキスしちゃダメじゃん、なんて野暮ですけど。榊さんにとって数多いる中のいち顧客であり、たまたま職場が近いから顔を合わせる機会のある純。いつも一生懸命な純に惹かれたとのことですが、そうそう「頑張ってる自分を見てくれてる人」なんていないですからね、なんて夢も希望もないことを思ってしまいました。

 (ドラマ班:下戸)

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