もっと素直になればよかった
その“ホスト辞める宣言”から、卒業までは数カ月の期間があったのですが、振り返れば本当にあっという間でした。一時は「寂しい」という気持ちは忘れていたのですが、卒業の日が近づくにつれて、心がざわざわしはじめて。川嶋あい、お願いだから頭の中で「旅立ちの日に…」を歌わないでくれ……!
筆者は『テニミュ』のオタクだったりするのですが、このざわざわした気持ちは、大好きな公演の大千秋楽が日に日に近づいてくる時の気持ちとなんとなく似ていて。好きだったものが“終わってしまう時”はやっぱり寂しい。しかもホストは『テニミュ』と違って、かなり密な関係であるからなおさら。
『テニミュ』の大千秋楽ではボロボロに号泣する筆者ですが、Sとの最後の日は絶対泣かないと決めていました。けど……泣いちゃったんですよね。だって、絶対泣くキャラじゃないと思っていたSが涙を流し始めたもんだから! つられ泣き! 最後の時も歌舞伎町で子どもみたいにわんわん泣いてしまって、Sに「気持ち悪い客」って思われただろうな(白目)。その日のSは、卒業を祝うシャンパンコールが続いていたせいもあってかなり酔っ払っていたので、覚えていないことを祈るしかないです。
Sがホストを上がってから数日は喪失感に襲われて、現実逃避のためにアニメやゲームに没頭していたのですが(オタクで本当によかった~!)、その中でやっと気付いた気持ちがあって。私、Sのこと結構好きだったみたいです。でもライクなのかラブなのかは、イマイチわからないですが(笑)。正直な話、「それなりに金を使ったから、好きって思ってないといけない」っていう強迫観念的なものがあるような気もしています。
それと、卒業前は「どれだけ仲を深めても、“ホストと客”であることには変わりない」って自分の中で決めつけていたから、「絶対好きって思いたくないし、本人にも言わない」って意地を張っていましたね。あと好きって自覚したらお金使っちゃいそうですし。
ここまでまどろっこしいことを言ってきましたが、ホスト通いを卒業できたきっかけをくれたのは紛れもなくSのおかげだと思っているので(ちょうど良いタイミングで辞めたってだけかもしれないですが)、それに関しては本当に感謝しています。
でも、前からもっと素直に自分の気持ちを伝えていればよかったと、ホスト通いを卒業してから感じています。ただのわがままだと“痛客”になってしまいますが、もうちょっと可愛げのある姫でもよかったんじゃないかなって。なにホストごときに意地を張っていたんだと。金を払って擬似恋愛的なものを楽しむ場でもあるんだから、それをしとけと。それだけがひとつ心残りです。
ちなみに、冒頭にて「業界から足を洗う担当ホストと共に、私もホスト通いを辞めることができそう」と書いたので、「こいつ上がった担当と結婚でもすんのか」と思ったホス狂いの方がいるかもしれませんが、決してそんなことはありません(笑)! 最後まで完全友営でしたよー! わーい! たーのしー!
最後に、この原稿を執筆している最中、どうしてか祖母のとある言葉が何度も頭に浮かんでいました。その祖母は大の犬好きで犬を数匹飼っていたのですが、最後の犬が死んでしまって以降は、「また寂しい想いをしたくないから」と言って、周りがどう勧めても決して犬を飼おうとしません。
楽しい時間を過ごせると分かってはいるけど、いつか来てしまう別れに寂しい想いをしたくないからでしょうか。私もホスト通いを辞めてから、またあのきらびやかな世界に行きたいと思うことはありますが、今は頭の中に「また寂しい想いをしたくない」という言葉が浮かんでいて。
まあ、Sが「もーホストクラブに行くのはやめなさい」って言うから、もうホストには行きませんけど♡ フラグじゃないですよ!?
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