もはやほとんど誰も関心を示していないような気すらするが、AKB48の選抜総選挙が今年も始まっている。開票は6月17日に沖縄でやるらしい。かつて前田敦子(25)と大島優子(28)がいたころ……2013年あたりまでだろうか、テレビもネットニュースもお祭り騒ぎのような時期は確かにあったと記憶しているが、今は下火傾向にあるといえるだろう。としつつも、AKB48名義のシングルCDは未だにバカ売れしていて、今回の選挙の投票券がついたシングル『願いごとの持ち腐れ』は初日段階で245万枚を売り上げダブルミリオン達成というから驚きなのだが。
その総選挙に立候補しているものの、速報発表の段階で100位圏外だった峯岸みなみ(24)が、6月2日に配信されたAbemaTVのバラエティ番組『必殺!バカリズム地獄』にゲスト出演し、バカリズム(41)から「今日はゲストが若いです」と紹介されて「いや、もう25歳になるので、AKB48の中では10代の子にほぼババア扱いですよ」「ちょうど16~18歳の時、AKB48もいい感じだったので、その時は本当に楽しかったなあって。今は、振り返りババア」と自虐的に話していた。40代のバカリズムが「まだ全然じゃないですか。楽しくないの?」と問うも、峯岸は「今のところ未来に光がない」と言い、「仕事的にもプライベートも20歳がピーク」で「無敵モードで『チョロいな』って思っていました」と回顧。これってギャグなのか本音なのか、タレントが表舞台で本音を口にするなんてことはあり得ないと思うけれど、冗談だとしてもこんなことを言ってしまうとは。
彼女は芸能界の中でもとりわけ「若さ、フレッシュさ」が貴重なものとして扱われるアイドルグループにずっと所属している。オーディションのたびに若く新鮮なメンバーが加わり、昔からいる峯岸のようなメンバーは当然、ジェネレーションギャップを感じるだろう。ファンたちからおばさん扱いをされることもあるのかもしれない。しかしそれを自ら内面化して、「20歳がピーク。25歳になる現時点で未来に光はない」と言い切ってしまうのは、愚かなことだ。
イケメン男性アイドルとセックスしたことがバレて、丸刈り謝罪という異常な動画を撮影し公開したこともあるが、それは2013年1月、彼女がまさに20歳と2カ月の“ピーク迎えたて”の出来事だった。丸坊主にさせられた展開を本人がどう受け止めていたかはわからないが、それによって全能感が失われることはなかったようだ。それより以前、16~18歳の頃には、高橋みなみ(26)と一緒にカラオケでAKB運営幹部や電通社員とコスプレして盛り上がっていた(後に隠し撮り動画とともに未成年飲酒疑惑・乱痴気パーティーとして週刊誌に告発された)。たくさんの音楽番組やイベントに呼ばれ、握手会に長蛇の列が出来、毎日のように何かしらの取材を受け、忙しいけれども充実した楽しい時間を過ごしていたのだろう。けれど2005年から12年もアイドル稼業を続けていながら、彼女は芸能界で息の長い活動をするための下地をつくれなかったのだろうか? この先、芸能界での展望が見えず衰えていくだけだと認識しているとしたら、あるいはたまに呼ばれるバラエティで下世話な話をするポジションで生き残れればいい程度に考えているとしたら、本当に彼女の12年間って一体何だったのか、気の毒にさえなってしまう。若さ以外に誇れるものがないというのは悲しいことだ。
峯岸は23歳の頃から「年を取るのが不安」と口にしていた。音楽トークバラエティ番組『Momm!!』(TBS系)の昨年5月に放送された回で、峯岸は「AKB48に所属して10年。現在私は23歳になり、すでに年を取ることに不安を感じています。皆さんは年齢で不安を感じますか?」という相談をしていた。同じくゲスト出演していたhitomiはこの相談を受けて、「老いることが恥ずかしい日本ってすごく恥ずかしいですよね。『あの人、おばさんじゃん』みたいに(言われても)、『おばさんで何がいけないんだ?』『おばさんになっちゃいけないの?』って言いたくなる」と熱く語った。世良公則も「20歳そこそこで『もう私もおばさんだから』と自分で言うのがわからない。30~40代で本当の女性らしさが出るのに、20代でそんなことを言っても。20代なんてまだ“女性”ですらないですよ」と諭したが、一年後もまた「ババア自虐」をしている峯岸、その心は動かされなかったようだ。
何者でもない一般の24歳女性と比べれば、芸能人であるというだけで十分「何者」かである峯岸だが、20代後半にさしかかるこれから、芸能界で自分が望むような活躍をできるとは思えずに自虐的な発言を繰り返しているようだ。しかしもし5年後、彼女の未来が本当に全く光の見えない状況だったとして、それは「若さを失ったから」だろうか。若さにしがみつき、若さ以外のとりえを持たないまま年だけ重ねたからではないだろうか。たしかにAKB周辺は若さや目新しさを重視される傾向にあるだろうが、AKBだけが芸能界ではない。芸能界という業界で評価されたいなら、彼女自身が自分の価値を高めるために行動する以外ないだろう。さもなくば寿コースからのママタレ化を狙うという手も、自尊心キープのためにはアリと言えるが。
(天秋あゆみ)